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戒厳信仰

そろそろ最も忌むべき季節が来る。というのも、ここ数日雨音と共に確実に夏の匂いを感じられる様になったからだ。
噴き出る汗、さんざめく蝉、排ガスと雨の匂い、クールビズに勤しむサラリーマン。およそ好感を持てる要素が無かった。強いてあげるならば彩りは豊かだと思う。写真を撮る人間にとって(個人の好みはあるものの)彩度が高いというのは嫌われる原因にはならないだろう。
ただ、夏にはそれを補って余りある不快感が纏わりついていた。丁度喪服に染み付いた白檀の匂いがそれに近い。

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夏に半袖を着なくなって早数年。
なんとなく半袖は防御力が低そうだという無茶苦茶な理由で今では袖を通すのも憚られる。かつてのモダンガールは現代で言う所のロングスカートを纏い、それでも女性にはあるまじき軽装として年長者に眉を顰められたらしいが、その感覚だろうか。一般的にノースリーブと呼ばれる形状も好きではない。
半袖、ノースリーブと退路を塞がれたら、残るはリネンの白シャツしか残っていない。実際自分の箪笥には似た様なデザインの白シャツが肥やしになっていた。見る人が見ないと分からないから、今日も言われる「この前も同じ服着てた?」

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勝手にしておいてくれよと思わんでもないが、別に彼ら彼女らに悪気はないので口には出さない。かと言ってキチンと精査して購入したシャツコレクションを「同じ服」で括られるには嫌なので申し訳程度に訂正をする。正直、彼ら彼女らにとって自分のシャツはそこまでの価値がないので返答する必要はないのだろう。面倒な奴、という焼き印を額に押し付けられて数十回。
そんな自分に転機が訪れそうな今年の夏。帽子との出会い。
正直言うと帽子とかハットをお洒落な奴の自己主張の道具だと思ってきた。
春先に被るハットに意味はあるのか。耳当てよりも帽子を優先するその尺度はなんだ。これらの価値観は未だに理解し難いが、夏に帽子を被る理由はちょっと分かった。つまり、直火からの戦略的退避だ。

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いくら半袖を着ないと言っても、数枚は所持している。ではこれらをどうやって着用するのかと言うと、答えは簡単。上に一枚長袖を羽織れば良いのである。
有識者諸君には大変不評だったこの作戦だが、自分なりにそれなりの功績を感じる。前述の通り、直射日光から肌を避難させることができる訳だ。よく婦女子が日焼け防止にアームカバーや日傘と言ったものを使用しているのを見かけるが、理論としてはそれと全く同じである。
ジリジリと我が身を焦がす宇宙規模のエネルギーから身を守る絶対の方法。正直、半袖で闊歩するよりも長袖に身を包んだ方が涼しい。涼しいと言うか、痛くない。

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帽子も全く同じ事を、今度は熱を吸収しやすい頭皮を守る役目として請け負ってくれる。今回入隊してきたのは黒いフェルト地の中折れハットだが、これがキチンと夏に特化した機能的な帽子であるならどれだけ快適か……!
風で飛ばされたり、カメラを構えた時に鍔が射線を阻む以外は完璧だった。カーブミラーに反射する熱線も、人の視線もカットしてくれてお得だ。

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今年に夏は帽子長袖長ズボンが必須になりそうである。その為には素材や色にも拘らなければなるまい。
白シャツを何十とコレクションし続けた収集家の、腕が鳴る所である。
レッツ、「その帽子、この前も被ってた?」

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