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きっとたくさんの人の、「呪い」が解かれた日。

 ラジオの収録日を間違えた日曜の午後。休日ということでスタジオの準備にはいつもより手間がかかったし、目の前には3本のホットコーヒーとあたたかいお茶が肩身が狭そうに並んでいる。落ちこんだ。でも、推定1分で気分は切り替わった。ぽっかりと時間が空いてラッキーじゃん。さて、何をしよ。だんだん得した気分にさえなってきた。

 で、これから書くことに強引さを感じる人もいるかもしれませんが、ご容赦ください。この note は感じたことや考えたことをそのまま書くという方針で運営されておりますゆえ……などと無駄な前置きをはさみまして、ちらりと覗いたツイッターにこんな記事が流れてきました。

小説家の川上未映子さんが「ご自身の母から言ってもらって、忘れられない一言」を教えて欲しいと番組への投稿を呼びかけた際、「『あんたは幸せになれない』。いまだに呪いの言葉として残ってます」という投稿を読み上げられたそうです。

この投稿に、川上さんは苦しそうな表情をし、華丸さんは「言い合いになって、ぽろっと言ったとか…」と応じ、大吉さんも「現場を見てないから…」などと言って一度はその投稿を流した。そして、再び川上さんのトークに戻った。

しかし約30分後、川上さんのトークコーナーが終わる間際、大吉さんが突然「一個ずっと気になってるの、いい?」と切り出し、話を続けた。

「『幸せになれないよ』みたいな呪いがかかっている方…改めて言いますけど、FAXを紹介したということで、これをもって呪いが解けたということで、よろしくお願い致します。お幸せに」(HUFFPOSTより引用)

 じつはこのお話、他の方の note で知っていました。しかし、大吉さんがかけた言葉の詳細や、それを切り出したタイミングまでは読み逃していたようで。この記事を読んであらためて、投稿者の方がテレビの向こうでこの言葉を聞いていたとしたら、ほんとうに呪いが解けたに違いないと思えたのです。そうして、ぼくには、こうも思えました。

大吉さんの言葉はきっと、
日本中たくさんの人の「呪い」を解いた。

 ぼくのなかにだって「呪い」はあります。なんなら無数にあります。気が遠くなるくらい根の深いものもあります。その大部分は両親からかけられたものです。とはいえ、きっちり明記しておきます。両親だって別に、好きで、かけたくて、呪いをかけたわけじゃない。事情や理由はそれぞれだろうけど、止むを得ずだったり、知らぬ間にだったり、もしかすると、歪んでいたかもしれないけれど愛情ゆえだったり、します。

 しかし、これもきっちり言っておきます。だからといって、許されることではないし、全部を受け入れて許すべきでもありません。一人のひとの人生を丸ごとダメにしてしまう恐ろしさが「呪い」にはあるからです。

 だからこそ非常に厄介で、「呪い」を解くのは並大抵なことでありません。そんななかにあっての、大吉さんの押し付けがましくなく控えめで、それでいて毅然とした言葉は、静かにでも確かに、たくさんの人の心に波紋を広げた気がしてならないのです。

 最後に、ビルとビルの隙間に沈んでいく夕日を眺めながら、ふと思いました。この事実があった世界とそうでない世界とでは、「呪い」の総量は確実に違っていて、ぼくは(読んでくれたあなたも)やさしい世界のほうに立っているのだ、と。この大吉さんの言葉はバズっているようで、感想のコメントもいくつも読んでいて、その思いをつよくしています。

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 きょうも読みにきてくださって、ありがとうございます。じつは狙って書いたわけではないのですが、この同人誌のなかに掲載されている『横断歩道の呪い』という掌編小説は、「解呪」がテーマになっています。

 今回の大吉さんの発言をお聞きし、この作品が必要としている人のもとに届いてほしいと、つよく思いました。

 『横断歩道の呪い』という作品について書いてくださった感想をまとめたページを作成しています。完成したらぜひ目を通してもらえるとうれしいです✨

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