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ようこそ、奇跡の世界へ。

 冒険物語でもここからはじまりそうな、細い階段をぼくらはのぼっていく。通路は外にくらべて幾分暗く湿っていた。コンコンコンコン、くぐもった足音がよく響いて。ここから何かがはじまそうな、そんな予感が胸の真ん中でちょっとずつ膨らんで。冷たいドアノブに手をかけゆっくりと扉をひいた。

さぁ、いざ。

ヴェヴァラサナ王国へ。

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 こんな風に書きだすと、このままずっと、ファンタジー物語を書きたい気持ちが芽生えてきますね。ということで、扉の向こうは代官山の隠れ家風レストランである。上品なお皿にちょこんと盛りつけられたご飯とチーズがとろ〜りかかった丸いハンバーグが運ばれてきた。ゆらゆらと湯気が立ちのぼり鼻に届くと、お腹のあたりがきゅうっと声をあげた。

 ちなみにこの、ゆらゆらと立ちのぼる湯気は、この少し前に まえだたかしさん のもとへ、ぼくの note を本にする企画のご相談しに行った際。編集を担当してくれている まよっこさん が打ち合わせ中にいったひと言がきっかけでくっきりと見えたのだ。

 とってもいい、ミーティングだった。書き手として、じつにしあわせな光景に立ちあうことができて。まよっこさんは60万文字近いボリュームになった、ぼくがまいにち書いてきた文章を読みこみ、削り、抜粋し、一冊ぶんの原稿にまとめあげてくれた。

 そのうえで彼女が、まえだたかしさんに向かってこの本に対する想いを語り、お洒落な黒縁メガネを時折りずらしながら原稿と彼女の顔を覗くまえださんを交互に眺める。まえださんからは、デザイナーとしてこれほどうれしい仕事はない、的なニュアンスの言葉がこぼれて、こっそりと目頭を熱くしていた。聞いているこっちが恐縮してしまうほどの、打ち合わせ中に彼女が言った言葉の一部をココに残しておこう。

大切にされる本にしたい。

現実を歩いているんだけど、
どこかしからファンタジックさがあって。

ビジネスマンの聖書。

読んでるあいだにも価値がある本。
体感できる本。

デザイナーさんに、
思う存分あそんでもらいたい。

 さて、ヴェヴァラサナ王国に、、間違えた、代官山のレストランに話を戻そう。目の前でカレーを上品に口に運ぶまよっこさんに向かってこう言った。「こんな時間を過ごしていると、ぼくは奇跡のなかを生きている気分になるんです」大げさな言葉になっちゃうけれど、心からそう思うのですよね。でもこれって、ぼくの人生だからというわけではなく、奇跡のメガネを掛けて世界を見れば、そんな風に見えてくるものなんですよね、きっと。

 この本がどんな風にして誕生し、読んでくださるみなさんのもとへ届いていくのか、そのプロセスの一つひとつを大切に味わっていこうと思います。

 みなさんも、目の前のすべては奇跡、という前提で世界を見つめてみませんか? いまはそんなこと思えるわけないよ、ということも含めて、じつはじつはじつは、そうなのかもしれません。奇跡前提に立てば、奇跡の世界が展開するもので。

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 きょうも読みにきてくださって、ありがとうございます。ご飯から立ちのぼる湯気さえも愛おしく感じてくるような、そんな何かが、末吉さんの文章にはあるんです。まよっこさんの言葉に、ぼく自身がハッとさせられっ放しです。

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前田デザイン室の
NASUギルド東京にて
みんなでパシャリ。

白くまのハクマイの
表情がなんとも言えずいい。

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