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短編:【スエトモの物語】

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短編小説の物語はこちらです。 ◉毎週1本以上、継続はチカラなりを実践中!短い物語のなかに、きっと共感できる主人公がいるはず…誰かひとりに届くお話。自分と同じ主人公を見つけて頂け…
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2024年8月の記事一覧

短編:【カギのある公園】

入口に湧き水が溢れ出る、ちょっと変わった、憩いの公園だった。 たぶん、これはレンタル部屋のカギ。何故ならしっかりとした、ディンプルシリンダーのカギである。ちゃんとしたマンションの部屋などで使われるタイプ。 私の推測はこうだ。外国人向けのレンタル民泊。公園のわかりやすいところにカギを常設。アクセスして来たところで宿泊希望の方に、この場所の地図を送り、自身でカギをピックアップ。宿泊後は、再びこの場所に同じように戻してもらう。ピンシリンダー錠のような安価なものではなく、街場のカ

短編:【テレビ、救ってみない?】

「そもそもテレビってどう思う?」 会議室にいる8人の面々。 「たくさんの人が観てますよね…」 「良くも悪くも視聴者が多い印象です」 「マス・メディアだからね。他には?」 テレビ局、来期の番組編成会議。 「パソコンなどが使えなくても、スイッチひとつ、誰でもすぐ観られる」 「そう、その番組テーマに興味関心あるなし関係なく、ただ点けてボーッと眺めている人も結構いますよね…」 「いつも点けているから、曜日を知らせるカレンダーや、時間を教える時計程度に考えている人もいるでしょうね…」

短編:【スナイパーがいる】

今朝気がついた。私、スナイパーに狙われている。ひとりならまだしも、家から駅まで、たかだか直線で150m程度、一回曲がるだけの駅チカ物件の間に、ザッと3人。いや、私が見つけられなかっただけで、それ以上いたのかも知れない。 間違いない。高いマンションの上、非常階段。道の隙間。 スナイパーの目的は…私の殺害? …狙われる覚えは …強いて言うなら… 合同コンパがあった。もとい。異業種交流会が行われた。二週間前の週末。二年ぶり四回目の出場。先方は証券会社で営業職の方を中心に、その

短編:【異空間からエール】

「あれ?いま花火の音聞こえた?」 放課後、教室の掃除をしていたマコトが、モップを握って言う。 「打ち上げ花火?」 「雷なんじゃない?ヤダ〜傘持って来てない〜」 女子高生仲良し三人組の、カオルとユミが話に加わる。 「でもさ、打ち上げ花火が禁止になって、どんな音だったか忘れた…」 ゴミ箱を持ったカオリが窓の外を見て言う。 いまこの国では、打ち上げ花火が上がらない。 「たぶん幼稚園入る前だわ、最後に本物見たの…」 15年前。とある地方都市で開催された最大級の花火大会。 「あの日、

短編:【この印籠が?】

「じーちゃん!じーちゃん!」 メガネを鼻にかけ、新聞を読んでいたじいちゃんは、玄関先から聞こえる孫の声に微笑む。 「おう、ケイちゃん!よく来た!ひとりで来たんかぁ?」 祖父の声がする居間に、孫息子のケイちゃんが飛び込んで来る。 「学校終わってすぐ来た!そこだし!」 この春、入学した孫は、小学校と娘夫婦が暮らすマンションを結んだ通学路のちょうど中間を、少し逸れたこの祖父の家に寄り道しながら帰宅している。 「ママにじいちゃんの家に寄って帰るとメールしたか?」 急いでお菓子とジ