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★【作者と読者のお気に入り】★

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◉たくさんのビューとスキを頂いた作品と、個人的に好きなモノだけをギュッとまとめてお届け!30作品程度で入れ替えしながらご紹介。皆様のスキが集まりますように(笑)お気に入りの玉手箱!
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#カフェ

短編:【夏は鰻と、】

金がない。まったくない。いやウソだ。ポケットには374円ある。 「あちぃ〜」 なんて猛暑。いや酷暑。真夏日。記録的暑さ。殺人的な夏の日差し。どんな言葉に変換しても同じだ。 「あちぃ〜ょ〜」 暑いだけで涙が出る夏は、人生で始めてだ。いやウソだ。去年も、その前の夏も、たぶん10年に一度の異常な暑さだった。 公園の水飲み場で蛇口をひねる。チョロチョロと申し訳程度に水が出る。 「…節水制限」 脳裏に現れる四文字。そうですか。そうですよね。税金もまともに払っていない人間には、こういう

短編:【カフェにて(恋のリベンジ篇)】

通り横にあるそのカフェは、電源やWiFiが自由に使えることもあり、保険の勧誘、金品の営業販売、中には芸能事務所の面談や、ノマドワーカーなど、ちょっとクセの強い客が多く訪れ、なにより長居をしていてもあまり迷惑そうな顔をされないことが魅力の店だった。 私は、そのカフェまで徒歩3分の激チカ物件に住んでいた。あの日以来、…正確には数週間前、長く付き合っていた人と別れてから、暴飲暴食をしてはトイレで吐く、過食症にも似た行為を繰り返してしまう日々を過ごしていた。部屋にいると気が滅入って

【カフェにて】

通り横にあるそのカフェの、道に面したカウンター席には電源があり、おかげで出先での仕事もはかどっていた。いつでもPCリュックを背負い移動オフィス状態の僕にとって、WiFiやコンセントの使える場所は非常にありがたく重宝している。 ふと窓の外を見たら、大きなメニュー看板を真剣に、ケンカを売るような目つきで、対峙している女性が立っていた。お昼時にはまだ早く、大きめな帽子をかぶったその女性は、何を食べるかで悩んでいるように見えた。 パソコンに目を戻し、2〜3行文字を打ち、再び窓の外