マガジンのカバー画像

★【作者と読者のお気に入り】★

28
◉たくさんのビューとスキを頂いた作品と、個人的に好きなモノだけをギュッとまとめてお届け!30作品程度で入れ替えしながらご紹介。皆様のスキが集まりますように(笑)お気に入りの玉手箱!
運営しているクリエイター

#元気をもらったあの食事

短編:【花の教え】

「最近の桜って花びら白いよね…」 彼女はそういう敏感な感性を持っていた。 「白い?」 僕には、桜の花びらがピンクに見えていた。いや、そう思い込んでいたのかも知れない。周りを見渡すと、至るところで花吹雪が舞っている。 僕には20年間、彼女がいない。奥手というか、人付き合いが苦手というか。大学に進み、同じゼミを専攻した彼女と出会った。 「もちろん品種によっても違うだろうけど…昔の花吹雪ってもっとピンク色だったと思わない?」 「ああ、そう…かもね…」 話を合わせてみる。 「自

【カレーの日】

街角で思いっきり殴られた夜、無性にカレーの気分になっていた。23時を少し回っていたが、24時間営業のチェーン店ならやっているだろう。 とはいえ、思いっきり殴られたせいで、右目の上は大きく腫れていて、左頬には紫のアザがくっきり出ている。見た目ではわからないが、口の中も切れているようで、微かに鉄分の味がする。 「こんな姿で、また街を歩くのは…」 …流石に気が引けた。一旦、シャワーを浴びて、血の飛び散った洋服を着替えてから考えることにしよう。 なぜ殴られたのか。 …ただ歩いていた

【カフェにて】

通り横にあるそのカフェの、道に面したカウンター席には電源があり、おかげで出先での仕事もはかどっていた。いつでもPCリュックを背負い移動オフィス状態の僕にとって、WiFiやコンセントの使える場所は非常にありがたく重宝している。 ふと窓の外を見たら、大きなメニュー看板を真剣に、ケンカを売るような目つきで、対峙している女性が立っていた。お昼時にはまだ早く、大きめな帽子をかぶったその女性は、何を食べるかで悩んでいるように見えた。 パソコンに目を戻し、2〜3行文字を打ち、再び窓の外