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★【作者と読者のお気に入り】★

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◉たくさんのビューとスキを頂いた作品と、個人的に好きなモノだけをギュッとまとめてお届け!30作品程度で入れ替えしながらご紹介。皆様のスキが集まりますように(笑)お気に入りの玉手箱!
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2024年5月の記事一覧

短編:【仲睦まじく】

「ちょっと惜しかったね」 リビングで妻と息子が本日のミニテスト結果を見ている。 「どうしたの?」 帰宅した夫も会話に参加。 「これね、“なかむつまじい”を漢字に…って」 「ああ、結婚式のスピーチでも使うよね、“末永く仲睦まじくお過ごしください”って」 「僕、陸上クラブだから…」 「仲“陸”まじい。って睦を陸って書いちゃって…」 「クラブのみんなと仲良く、陸みたいな字って覚えたからさ…」 息子は少し悔しそうだ。 「睦まじいってさ、“親しい”より深い関係なんだってよ、意味的には

短編:【隣】

「ママ、見て!落とし物!」 「落とし物?…じゃないわね」 「ケーサツにとどけないと!」 「なんだろうね…あ!触っちゃダメよ!」 最近、公園や街の中で、こうしたバッグを見かけることがある。 「ちょっとパパに…」 写真を撮って、ショートメールで送る。 「あ、パパから…」 会社のパソコンで検索してくれたようだ。 『格安ポスティング業者』 これはどうやら、家やマンション・集合住宅などのポストに入っている、ビラやチラシ広告を投函する業者が置いていることがわかった。 「え、これ…ここ

短編:【不甲斐ない】

市長が辞職した。 彼の口癖は『不甲斐ない』だった。 『いや〜ホント、不甲斐ない!私が不甲斐ないばっかりにこんな事態に…』 「ねぇこの市長さ、ずっと謝ってないよね…」 姉ちゃんがリビングでポテチを食べながらテレビにボヤいている。 「“不甲斐ない”って言ってるよ?」 僕は冷蔵庫の牛乳をコップに注ぎながら応える。 「違うんだよ、不甲斐ないって、情けないとか、意気地ないって意味なんだよ」 「あ〜、そうなんだ」 「“不甲斐なくて申し訳ない”、だったら謝罪になるんだけど、“私が情けな

短編:【何か問題でも?】

「なんか『2025年の壁問題』ってのが大変みたいだね」 「なに、朝、テレビでやってたの?」 「そう。なんかね、2025年に世の中DX化が激化してプログラマーが不足して様々なシステムが麻痺するとか何とか…」 プッチンプリンが店頭から消えて、情報番組がこぞって伝えていた。 ファミレス。4人がけの席に向い合せの女性ふたり。 「なになに?なんの話?」 3人目の女性がドリンクバーのグラスを持って席に着く。グラスの中身は、この世のモノとは思えないような色をしている。 「2025年の壁