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インターネットの後に

押入れの中から古いONKYOのスピーカーと古いSONYのプリアンプを引っ張り出してきた。プチプチの梱包に包まれて、今日という日をずっと待っていたのだ。10年も。

特別いい機材でもなんでもなく、その時の部屋のインテリアにあうように選んだ白いONKYOのスピーカー。ピアノフィニッシュというテカテカの艶のある仕上げ。これはキャビネットの仕上げに合わせて選んだもの。
スピーカーだから木製なんだけど、この仕上げはなかなか手が込んでるように思えた。

今よりもモノづくりに余裕があった時代なのかもしれない。
そのキャビネットはわりあい奮発して買ったもので、今なら絶対に選ばないようなもの。当時は震災前だし、まだみんなシェアとかいう概念もなかった。高級とか贅沢とかいうものとは少し違うが、やはりそういう時代に選んだものは今とは明らかに視点の違うモノが多かった。

結局、今もまだ愛用しているのでいいものは長く使えるということになるのかもしれない。そんな家具に合わせて買ったスピーカーだから、メーカーも音質も何もこだわりもなかった。

SONYのプリアンプは小型の段ボール箱ほどありそうな大きなサイズ。存在感は抜群。そのアンプを買った理由はターンテーブルにつなぎたかったから。当時はDJやクラブ全盛期でアナログの輸入盤がすさまじく売れていた時代。渋谷にはいくつものアナログディスクのお店が乱立していた。DJプレイをしていたわけではないが、アナログ盤を聴きたくてTECHNICSのターンテーブルを入手して、それをつなぐために買ったアンプだ。
そもそもオーディオに興味ないし知識もない。なぜSONYのものを買ったのか、当時の記憶は曖昧だが単純に適当に安いものを買ったんだろうと思う。

ターンテーブルは針を買わなければいけばいので、復活させるのは少し先になるだろう。まずCDから。といっても肝心のCDプレーヤーはもう僕の手元にはない。アマゾンで安いものとりあえず買うかと思ったら、ほとんど売っていないことに愕然とする。たしかにCDの時代は終わったとはいえ、まともなプレーヤーがほとんど売っていないのにはかなり驚いた。

しかもSONYやPANASONICのものだと4万円以上するのだ。0がひと桁多いんじゃないのかな。。。

そこまで買う気もないのでヤフオクで探してみた。
SONYはやはりブランド力があるのか他よりもかなり高めになっている。結局忘れられていたようにひっそりと出品されていたKENWOODのものを手に入れた。

そうやって10年ぶりに復活させた懐かしいチグハグなオーディシステム。関係ないけど今年はいよいよトレインスポッティング2がオリジナルキャストで公開されるらしくてワクワクしている。そう一番音楽を聴きまくっていたのはその当時なのである。なんだかシンクロ感がって少し嬉しい。

さて、10年ぶりのiTunesもGoogle Play MusicもSpotifyとも違う音楽の聴き直しは何からはじめるべきか。迷わずにSILENT POETSにした。オーディオシステムと同じく押入れの奥の宇宙にしまいこまれていた無数のCDからなんとかそれを見つけ出し、つないだオーディオから音を出してみる。

音楽を耳で聞いているというフィジカルなものを感じる。CDという記録媒体でしかないものも、アーティストがパッケージしたまさに物理的な作品と感じることができる。そしてジャケットをみて、ライナーノーツを読んで、こういう当たり前のことをしていたよなぁ。

そう、音楽を聴くという時間が流れている。ああ、豊かだ。豊かな音。パソコンの液晶と無縁の音楽を聴くこの感覚を思い出す。いや思い出したのではない、新体験しているのだ。再発見ではない、これはafter internetの感覚なのではないか。CDで聞く音楽は昔からずっとあった。でもなんというかこの至福感はまさにafter internetの感覚なんだと思う。

(Feb 12, 2017  自分のMideumからの再掲)

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