結婚写真はファッションスナップ”じゃない”と思う
SNSを開けるとたくさん見られるオシャレな『結婚写真』。
結婚式場やカメラマンさん、ヘアメイクさん、新郎新婦さん、さまざまな角度から撮影された『結婚写真』が毎日のように投稿され、オシャレな写真に憧れたり、「私もこんなふうに撮ってみたい!」とSNSからイメージをひろわれる新郎新婦さまも多いのではないでしょうか。
でも、ちょっと待って。
その『結婚写真』、数年後に見返しても
「撮影して良かった」と思えるものになっているでしょうか。
誰に見られても恥ずかしくない写真になっているでしょうか。
(※ここでいう『結婚写真』は結婚式当日のスナップ写真ではなく、前撮り撮影などいわゆる『記念写真』を指します)
結婚写真をオシャレに撮るもの?
例えば、白無垢や色打掛など、花嫁和装を着ている場合、毛氈を下に敷き、打掛を皺なく丁寧に整えピシッと立って撮影する『型物撮影』は
和装の『結婚写真』の定番の撮影方法ですね。
そして、型物撮影はその名の通り、撮影の"型"が決まっており、足元の掛下は何センチ打掛から幅出しする、など和装を"綺麗に"写すための基本的なルールが決まっています。
この型物撮影に、"オシャレ"という要素は存在しません。
それよりも、「正しく綺麗に」撮影することに重きを置かれているからです。
それでは、結婚写真をオシャレに撮るということはどういうことなのでしょうか。
Instagramなど、SNSに映えるような写真撮影のことでしょうか。
それとも、流行りのドレスやヘアスタイルでかわいく、かっこよく
撮影することでしょうか。
このように考えていくと、そもそも『オシャレな結婚写真って?』という疑問が浮かんできました。
わたしたちが考える結婚式の"映え"への疑問
weblio辞書で「インスタ映え」の意味を調べてみました。
上記のとおり、インスタ映えという用語を調べてみると、写真を"のこす"という意味が薄いと感じ、SNSに写真を"投稿する"ことに重きが置かれているように感じました。
例えば、美味しいごはんを食べに行って、とっても盛付けが綺麗なお料理が出てきたらすかさず写真に収める方も多いと思います。
そして、そんな綺麗で美味しそうな料理写真をSNSに載せたことは、みなさんも経験があるのではないでしょうか。
このように、お料理を食べに行って、見た目が綺麗なお料理を写真に収めることに対し、"映える"という意味合いが乗っかっていても良いと考えています。
なぜなら、そのときの体験を友人やフォロワーに共有することが目的だからです。
一方、結婚写真の場合、そのときの体験を共有することが第一の目的でしょうか?
例えば、結婚式当日のスナップ写真の場合はそのときの体験をのこすものですが、結婚式の前撮り写真のように、『記念写真』としてのこす場合には、少し違う意味合いがあると思いませんか?
私は、『結婚写真』はそのときの体験を共有することが目的ではなく、
「結婚をした証」を"のこす"ことが目的だと思うのです。
結婚写真は一瞬ではなく、歴史的価値を持つことも
ところで、あなたはご両親の結婚写真を見られたことがありますか?
私は両親の和装の型物写真を見たことがあります。
先ほどお伝えした型物撮影のルールと同じ姿で収められていました。
写真の母は、今の流行りよりも少し細い眉だなと感じましたが、型物写真は時代が変わっても全く同じ姿でした。
そこにはやっぱりオシャレという要素は皆無でした。
だからこそ、「これぞ結婚写真」という写真の意味を感じましたし、結婚するってこういうことだなと、時代を越えて感じ取れるものがありました。
そう考えると、私自身の結婚写真も、いつか娘が結婚をする頃、そして孫にも同じように見られるのかもしれません。
結婚写真は自分たちが見返すためのものだけではなく、遠い未来に受け継がれていく「結婚をした証」。
だからこそ、そのときの流行りだけではない、写真をのこす意味も考えながら撮影をする必要があると思うのです。
なぜなら、私たちが今ここにいるのは代々受け継がれてきた家族の存在があってこそ。
その存在がどう続いてきたかを表す証明になると思うからです。
だから、『結婚写真』は「結婚をした証」を"のこす"ものだと思うのです。
特に結婚写真はオシャレな撮影を優先するとトラブルも
先日、お世話になっているカメラマンさんが和装撮影の際に新郎新婦さんの末広(扇)を広げて口元を隠している写真を撮ってくれていました。
きっと、お衣裳の色味と末広の金色が綺麗だからそのような写真を撮ってくれていたのだとおもいます。
それを見た私はすかさず「末広の扱いとしては良くないのです」とお伝えしました。実は、末広を広げるのはマナー違反なのです。
末広は形が扇子そのものなので、扇子と同様の扱いをしがちなのですが、和装小物の末広は仰ぐためのものではないのです。もともと、刀の代用として帯に忍ばせていたものだからです。
刀を持ち歩くことが常だったあの時代に、末広を広げて振り回していたとしたら‥
また、末広は「相手と自分の間に距離をつくる結界」として使用することがあります。
茶道で挨拶の際に膝の少し前に末広を置き、膝と末広の間に手をついてお辞儀する動作があります。そのときの末広はまさに結界を意味します。
そこには『相手を敬う気持ち』が表されているのです。
時代は変わったのだから、固いことは言わず、由来なんて別に無視でも良いのでは?
そんなふうにお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
末広の由来を知らない方の間だけであれば、それでもいいのかもしれません。(いや、私はよくないと思いますが)
でも、末広の由来を知っている方が見たら、どんな気持ちになるでしょうか。それが、あなたのおばあさまやお母さまだったら‥
そして代々受け継がれてきた家族の存在が、どう続いてきたかを表す『結婚写真』に、マナー違反の記録が一生残るとしたら、悲しくないでしょうか。
結婚写真は誰に見せても恥ずかしくない写真を撮りましょう
ちなみに、"着物警察"という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
着物の着こなしやマナーがとても大切だと思うがゆえに、着物を着ているひとを見かけると注意をしてしまう方のことを指すネットスラングです。
注意された側もありがたいと思いつつも、知らない方からいきなり注意を受けることに困惑するため、その行為を揶揄して生まれた言葉です。
注意された側からすると、着物を着たくて着ているのは私だから、好きに着させてよ、反発したくなる気持ちも分かります。
一方で、着物警察は『あなたに恥をかかせたくない、これから1人前の夫婦になっていくふたりが知ってた方がいいことだから』という親切心からの行為であるともいえます。
さいごに
私が伝えたいのは「結婚写真に正解がある」ということではありません。
『結婚写真』は「結婚をした証」を"のこす"ものだと考えている私にとって、「ただオシャレに撮れたらいい」というのは何か違うのではないかと感じたことがきっかけでこの記事を書きました。
先ほど例に挙げた末広のお話は、"マナー"の話であって、個人の自由で捉え方を変えられるものではありません。
綺麗だから、面白いから、楽しいから、という感情だけで写真撮影をしてしまうと、知らないうちにマナー違反をしていた、なんてことがあり得ます。
だからこそ、着付け師の先生や、カメラマンさん、プランナーさんたちと相談しながら撮影を進めていくことが大切です。
とくに和装の場合は奥深く、私たちプランナー自身もまだまだ勉強していかねばと思うことばかりです。
『結婚写真』が未来にのこるものだからこそ、
「どうして写真をのこすのか、誰に見てもらいたいのか」をしっかり考えてみませんか?
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