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-水の中の哲学者たち-

 哲学研究者である永井玲衣さんが書かれた「水中の哲学者たち」という本を読んだ。前からずっと読みたいと思っていて、久しぶりに入った本屋さんで見つけることができた。ページを開いた瞬間から目に入ってくる文字ひとつひとつが自分の体内に前から沈んでいた言葉を見つけたようで、ぶく、ぶくと水中に潜りこむ様に座り込んで本に読みいってしまった。  なんで木は茶色いんだろう、人は二本足で歩くんだろう、おやつを食べるんだろう、人と関わりたいのにすぐその近さがウザくなってしまうんだろう、なんで他の

    • '自分だけ'の鮮やかさ-October Passed Me By-

       肌寒くなってきたら毎年聴きたくなる曲がある。私の場合、それはクリスマスとか雪とかそういう季語が入った曲ではなくて、夜にしんしんと静かに雪が降る外をぬくぬくした部屋から一人でしずかに楽しんでいるような、そんなあたたかい曲だ。    最近そんな曲にまた出会った。Girl In Redというバンドの「October Passed Me By」という曲だ。わたしは何もかもはっきりと抑揚をつけて口に出して説明しなければいけない場所が苦手だ。表に出して表現しないと、感情の起伏がないとネ

      • 史上最強ドーナツ

         普段は甘いものがあまり得意ではない私だが、唯一チョコもケーキもアイスも何もかも砂糖が入っているものがキラキラし、美味しく見える期間がある。それが生理である。PMSを抜け、身体のコンディションは最悪だが精神状態は回復していくこの時期に行くオーストラリアのスーパーはこの上なく楽しく、味の想像がつかないチョコのバリエーションを見ているだけでリッチな気持ちになる。私がオーストラリア滞在中食べることのできた体に悪そうなお菓子(褒めてる)は残念なことに数えるほどだが、その中でも特にメル

        • まじで仲がいい友達-LOVE, Simon-

          「LOVE, サイモン17歳の告白」を観た。この映画は幼い頃からゲイであることを隠して生きてきた高校生のサイモンが恋に落ち、恋愛至上主義の雰囲気の中で身近に存在する異性愛規範に悩みながらも自分のアイデンティティを見つけていく話である。私はディズニー+で視聴したが、ディズニー+で視聴可能なことがよくわかる位物語が良い意味で軽くテンポよく進んでいき、主人公の感情の変化がストレートに表現されていた。サイモンが長年クローズ(自分のセクシュアリティを公にしていない状態)でありながらも、

        -水の中の哲学者たち-

          お正月という地獄 -This Hell-

          Qお正月の親戚の集いって誰得なんでしょうか?  私による推測アンサー:その人の属性が多数派に属すれば属するほど、年末のイベントは楽しくなくとも、まぁまぁなこととして乗り越えることが出来るんじゃないでしょうか!?(疑問形)  なぜ私がこう思うかというと、私が親戚の家で思考停止する瞬間は必ず自分がその場でマイノリティであるからだ。異性愛規範・恋愛至上主義・学歴主義・血縁主義・エイジズム・ルッキズム・男女二元論・能力主義。自分の本音を話すと、この人は何を言っているのか、何故そう

          お正月という地獄 -This Hell-