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2021年私的アニメベスト5 「シン・エヴァ」から「テニプリ」まで

世の中は依然、落ち着きませんが、2021年のアニメシーンは例年にも増して豊作だった気がします。特に劇場映画は2020年予定で先送りされていたタイトルが次々に公開されたこともあり、ハイレベルな作品が続出しました。
いっぽうでシリーズアニメでも配信主導のタイトルの増加から作品のバリエーションが広がっています。一部では製作費の高予算化もあり、『鬼滅の刃 遊郭編』のような超絶な作品も登場しています。

 そんななかで、僕が個人的に「これはやられた!」「何かすごいことが起こっている!」を基準に2021年のベスト5のアニメ作品を選んでみました。
共通項は“サプライズ”です。

■ 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
■ 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
■ 『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』
■ 『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』
■ 『アーケイン』

2021年アニメベスト5

 「アニメってすごい」。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観た後の一言です。どの場面、どのカットを切り取っても隙がないというか、他に考えられないという完成度です。
昨今は制作スタッフの就業環境やビジネスモデルの激変などで、アニメづくりには何かとネガティブな情報が溢れています。ところが『シン・エヴァ』は、「たっぷりな制作時間」「充分な予算」、そして「溢れるような情熱」が注ぎ込まれるとこんなにも素晴らしいアニメが出来上がる、その事実に驚かされます。
もちろんそれが叶い難い現状は理解しています。が、アニメはここまで行けるとの事実に勇気づけられます。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、現代日本アニメの高みなのです。

 劇場アニメの高みは、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』にも共通します。『シン・エヴァ』では映像に目を見張ることが多かったのですが、『閃光のハサウェイ』はドラマの緻密さに引き込まれました。
とりわけキャラクターの描き方です。ギギには魅力的なところと嫌なところが同時に存在し、その仕草や言葉ひとつひとつが、見る人次第でヒロインにも悪女にもなります。その微妙なラインをうまく保っているのです。主人公のハサウェイも同様で、魅力的であると同時に嫌いにもなれます。人間ってそもそもそうしたもののはずです。
個人的に「∀ガンダム」以来のガンダムシリーズの傑作なのですが、『閃光のハサウェイ』はむしろガンダムであることがマイナスな気がします。前提知識がないと理解しにくいことがある。それが本作の数少ない欠点です。

 『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の驚きは、発信する情報量。その多さに圧倒される作品です。目で見たもの、耳で聞いたものを咀嚼しようとした瞬間、物語はすでに次のステージに移っています。であれば本作の楽しみかたは何度も見て情報分析する、もしくはあえて解読せずに情報をそのまま感じることでしょう。
いまは映像作品には全てが説明され分かりやすいいことが求められがちです。大量の情報を浴びせ倒す『ゴジラ S.P』も「全然分からない」と拒否されるかもしれません。作る側もそんなことは分かっていそうですが、敢えてこのスタイルを貫いた潔さもサプライズです。
一部の熱狂がある一方で『ゴジラ S.P』の話題は必ずしも多くありませんでした。それでも10年先、20年先に残り続ける傑作になるのは間違いないでしょう。

 『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』は快作です。そして問題作でもあるかもしれません。
「テニプリって “スポーツマンガ”でなかったけ?」とか、「劇場映画の終わり方ってこれでOKなの?」とか、いろいろ前提が吹き飛んでいます。これまで手描き2Dだったキャラクターが3DCGに変ったことなど全体からみたら小さなことです。

お約束事よりも、映画を観たファンがいかに楽しめるかにフォーカスしています。ファンの満足度を最大限に高めるためには、映画としてのフォーマットはどうあるべきかはここでは重要ではありません。
アニメの映像をライブエンタテイメントと見立てた取り組みには、これまでにも『KING OF PRISM』や『少年ハリウッド』でもありましたが、『新生劇場版テニスの王子様』はその最新進化系なのです。

 2021年の流行のトピックに「日本アニメが中国に抜かれる」というのがありました。しかしこの年、もっとも注目すべきアダルトアニメーションは米国で生まれました。『アーケイン』です。
人気PCゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』から飛び出したこのオリジナルシリーズは、フルCGでも日本アニメスタイルでもない、PCゲームらしいアクションをイラストレーションが動き出したかのような映像で実現しました。
ひとつひとつのビジュアルや技術はいろんなところから影響を受けてはいます。ただ重要なのは新しい何かを生み出すという野心に満ちており、それを実現していることです。フォトリアルにしろ、アニメスタイルにしろ同じ土俵であれば、先行者は常に有利です。しかし全く異なる表現であれば、どうでしょうか?  『アーケイン』は2020年代の新たな覇者になるのかもしれません。

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