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まるで日本アニメ! 次々と生まれる海外産「ANIME」の注目作!

■2Dアニメでも話題作が次々現れる中国映画

2020年11月7日に全国公開となった中国産の劇場アニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』が、映画ファン、アニメファン、アニメ関係者で話題を呼んでいます。もともと昨年秋に中国語音声・日本語字幕が小規模公開しており、作品の完成度がアニメ関係者やファンの間で高く評価されました。
これを受けて人気の声優を起用、日本アーティストの主題歌をつけて、より親しみやすいかたちで今回の本格公開となりました。作品の評判は上々です。

中国ではこれまでも『ナタ 魔童降臨』、『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』といった大ヒットアニメーション映画があります。日本でも公開されました。しかし本国の興行成績では遥かに小さい『羅小黒戦記』ほど話題になりませんでした。
『羅小黒戦記』が関心を呼ぶのは、先の2作品がハリウッドスタイルのフル3DCGだったのに対して手描きの2Dアニメだからです。さらにキャラクター造形や動きに日本アニメの影響が濃厚に見て取れます。

これまで日本アニメはCGでは予算でも映像づくりでも世界市場では厳しい戦いを強いられています。しかし2D手描きアニメでは世界から一歩抜き出ていると思われてきました。
しかし『羅小黒戦記』は、すでに海外の一部でそれが急激に追い上げる2Dアニメが生まれていることを見せたのです。

『AKIRA』や『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』などで活躍する日本を代表するアニメーターの井上俊之氏は、『羅小黒戦記』を見て、次のように発言しているほどです。

もちろん中国2Dアニメの全てが、すでに日本アニメのレベルに達しているわけではありません。むしろ優れたスタッフが継続して仕事をし、技術を次世代に共有システムが欠けるなどの問題点も多く指摘されています。
それでも「日本アニメスタイル」は、急速に中国のポップカルチャー文化に吸収されています。中国で人気を集め、10月に米国で本格的に配信が始まった『天官赐福』もそのひとつです。中国の人気BL(ボーイズラブ)小説をアニメ化したシリーズです。BL自体が日本カルチャーの影響の強い文化ですから、「日本アニメスタイル」は、相性がよいのでしょう。

Webアニメの『シザー・セブン』もそのひとつかもしれません。映像は日本アニメスタイル、米国のカートゥーンスタイル、そこに中国の独自性がいい具合にブレンドされています。
こちらはヤングアダルト向けでギャグテーストにキャラクターの暗い過去を織り込んだシリアスな展開、むしろストーリーに日本の影響を感じさせます。一方でシーズンが進み人気がでるに連れて映像のクオリティが上り、話のスケールが巨大化していくのは中国ならかもしれません。

■日本アニメスタイル in USA

ここまでは中国の話でしたが、日本アニメの影響を受けた作品は、むしろこれまでは米国が先行していました。2000年代中頃のニコロデオンアニメーションスタジオのヒット作『アバター 伝説の少年アン』は、日本アニメから大きな影響を受けたとされています。シンプルなキャラクターの小気味よい動きは確かに日本アニメぽいです。カートゥーン ネットワークの代表作『パワーパフガールズ』も、日本アニメの影響があったとされます。

しかしより本格的だったのは、2013年にウェブアニメでスタートした『RWBY』です。米国のルースター・ティース・プロダクションが制作した『RWBY』はCGアニメではありましたが、日本アニメが大好きなスタッフが、目が大きく、等身を落とした美少女、戦闘ギミックといった日本アニメらしさを全面に打ち出し、大きな人気を得ました。
イベントでも日本アニメを示す「ANIME」にカテゴリーされたうえ、日本アニメファンにも大きな人気を博しました。海外で生まれた日本アニメスタイルを代表する作品です。

■Netflixで加速する海外産日本アニメスタイル

さらに海外における日本アニメスタイルを加速しているのが、Netflixです。海外における「ANIME」は、本来は日本アニメのみを指す言葉でした。しかし日本にアニメーション部門「ANIME」の拠点を持つNetflixにとっては必ずしもそうでないようです。
日本ゲーム原作の『悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-』は第3期まで配信、第4期も決定するほどの人気ですが、アニメーション制作は米国のスタジオです。しかしその映像からは『獣兵衛忍風帖』、『バンパイアハンターD』の川尻善昭の雰囲気が濃厚に感じられます。

『キャッスルヴァニア』の成功もあり、Netflixには「ANIME」を掲げた非日本産の作品が次々に登場しています。『ゼウスの血』は、先日、CEOのリード・ヘイスティングス氏が日本向けの講演にて世界で非常によく見られていると言及した作品です。ギリシア神話をモチーフに、2Dで描かれました。
『セイス・マノス』も米国のプロダクションによるものですが、1970年代のメキシコを舞台にした冒険アクションもの。「ANIME」が様々な国境を越えていることが分かります。
SFファンタジーの『イドゥン・クロニクルズ』もキャラクターだけみると、最初は日本作品と思ってしまいます。しかし制作はスペインのスタジオです。
現在制作中の『異界探偵トレセ』も、「ANIME」に分類され日本アニメを思わせます。しかし制作は全編フィリピン、クリエイターは大の日本カルチャー好きとのことです。

Netflixにとっての「ANIME」は日本アニメに限定しません。日本にオリジナルのある世界文化で、それは世界のあらゆる国で創作、到達可能なのです。
Netflixは日本アニメの世界普及に大きな役割を果たしたとよく言われます。しかし海外で日本アニメスタジオのライバルを増やしているのもまたNetflixです。

■日本アニメスタイルは、さらに海外のプラットフォームへ

日本国外向けに、海外産の日本アニメスタイルのオリジナル作品を製作するのは、Netflixだけではありません。日本アニメの海外向け配信の最大手クランチロールは、近年日本アニメで製作出資を強めています。製作の主体となることも増えています。
しかしさらにスタジオを作って、クランチロールオリジナルアニメに注力していることはあまり知られていないかもしれません。スタジオは日本の東京、さらにカリフォルニアのバーバンクにも設けています。

バーバンクのスタジオで制作した『Onyx Equinox』は、先頃北米などで配信をスタートしました。こちらの絵柄は実は日本アニメスタイルとはだいぶ異なります。日本向けの展開も現状はないようです。
それでも日本アニメファンの多いクランチロールが製作するので、アニメファンに向けた作品であることは間違いないでしょう。バーバンクのスタジオでは今後も複数の作品が予定されています。

いずれにしても確かなのは、米国、中国、ヨーロッパ、東南アジア、ラテンアメリカと、いまや同時発生的に日本アニメを吸収し、自らの文化に取り込んだ独自の「ANIME」が次々に生まれていることです。
いまはまだ数は少なく、技術的に至らない作品も少なくありません。しかし、5年、10年、20年先には間違いなく日本アニメの強力なライバルが世界各地で創られているでしょう。



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