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8/24 禍話・豊島離島怪談会編 参加レポ


1.はじめに


 この記事を読んでいる人の殆どは「禍話」を知っているでしょうから説明は簡潔にしますけど、禍話(まがばなし)というのは、怪奇ユニット「FEAR飯」のかぁなっきさん・加藤よしきさんによるネットラジオです。毎週土曜の夜にツイキャスで実話怪談を配信していまして、毎週やるもんですから、おっそろしい怪談がおっそろしい分量で蓄積されています。私はその禍話のファン、いわゆる「分母」の1人です。今回、その禍話が「豊島離島怪談会」としてライブを行い、運良くそれに参加できました。本記事は、その参加レポートです。

 「豊島離島怪談会」というのは、香川県の離島・豊島(てしま)にて、民宿カラフルさんが主催されている怪談会です。離島、という閉鎖空間でブチ怖い怪談を聴くという趣向は、分母たちの胸を高ならせました。
 怪談会はお寺で開かれ、キャパシティの都合上、昼の部(以下「1部」)・夜の部(以下「2部」)ともに抽選制となりました。主催者さんによるとこれまでこんなに参加者が集まったのは初めて、とのこと。そんな中、私・酢豆腐は2部参加の僥倖に預かり、瀬戸内海を渡ることとあいなりました。

島の風景

2.豊島の旅


 暑いんですよ!!!
 雨の予報があったので天気を心配していたのですが、晴天も晴天、マガッ晴れでした。ありがたいことですが、その代償として猛烈な暑さが我々を襲いました。

 まずは高松からフェリーで30分。この時点で殺人的な日差しだったので、朝食はかき氷になりました。

 さて乗船、同じ便に明らかに分母が乗っており、なんならすぐ後ろの席の方々が「1部が、2部が〜」と話されていたので参加者なのですが、全然シャイなので話しかけるとかもなく、持ち込んだ『獄門島』を読み返しておりました。

 上陸後、回りたい場所は色々あったんですが、死を予感する暑さだったのでレンタサイクルは断念。

 バスのダイヤも限られているため、豊島美術館と横尾館だけ。
 豊島美術館は一般的な美術館ではなく、それ自体が一個のアートです。床から滲み出る水滴、そのあるものは留まり、あるものは走り、再び沁み入る、もしくは集まり泉を成す。天井の穴から吹き入る風が糸を揺らす。そういう空間にボーッと浸るわけですね。そこは整序された異界のようであり、生死のエアポケットのようでもあります。

 豊島横尾館は古民家を改装し、芸術家・横尾忠則の作品を展示しています。赤いガラスと巨大な塔がトレードマーク。死後の世界を暗示しつつ、しかし陰惨ではない「祝祭としての死」が表現されています。

(追記)
行きたかったけど暑さから断念したのは「心臓音のアーカイブ」。収集された世界中の人々の心臓音を聴けるそうです。

豊島は、生や死の根源的な部分を体感し、捉えなおさせてくれる場所と言えるかも知れませんね。
(追記終わり)

3.現着

 バスのダイヤ上、かなり早く集合場所に到着。ありがたいことにスタッフさんが早めに宿泊所を開放してくださり、一息つくことができました。宿泊施設はこちら、

てしま自然の家

元々は保育園だったのを改装したもので、今でも裏には遊具の「太鼓はしご」があります。

少し不思議

 既に1部から引き続きの参加者をはじめ、数人の分母たちが到着済み。私もひとまず男性部屋……広い畳敷に案内していただきました。
 おずおずとお土産の交換や自己紹介が始まった頃、メンバーも揃って会場へ移動することになりました。

4.怪談会

 宿から坂道を登り、十輪寺へ。

お寺に詰め込まれる分母たち

 事前にかぁなっきさんから、会場はエアコンがないから暑いかも知れない、と伺っていたんですが、扇風機がしっかり並び、スポーツドリンクまで配られるお心尽くしのおかげでその点は問題ありませんでした!
 お堂の中には緋毛氈が敷かれ、大壇を背に、かぁなっきさん、加藤さんが座ります。
 で、まぁ、ここからは撮影・口外厳禁です。会場の様子は民宿カラフルさんのツイートをご参照ください。

 話の内容は……無論怖くないわけないですよね凹。ぼかしたものならOKとのことなのでその範囲で紹介すると……
 普段通り雑談を交えつつ、かぁなっきさんご自身の体験、加藤さんの体験、さらに今回泊まる宿で起こった怪現象までが報告されます。なんでそんな話するんですか……
 コッ…の話、宿や自宅に帰りたくなくなるようなお話までバラエティー豊かな前半部に続き、センシティブな出来事が掘り下げられる後半部。このへんは怪談話者であると同時に“怪談鑑識官”でもあるかぁなっきさんの手腕が発揮されていましたね。

 わずかずつ、しかし確実に暗くなる空、妙にタイミングよく聞こえ始める蝉の声。離島、山の中、お寺。すべてのシチュエーションが怪談会を盛り上げます。この趣向は大成功だと思いますね。離島という環境だからこそ実現できる怪談ライブだと言えるでしょう。
 あとね、昼間の暑さが祟ったのかも知れませんが、ずっと頭が重くてですね、特に後半は話の重さも相まって息苦しいくらいでした。

 大ネタは忌まわしく、胸も締め付けられるお話。まぁ、首吊りが関わる話なので、喉も締めつけられる感。会場もひえっひえです。息が詰まる音が聞こえるような沈みっぷり。

か「こんなテンションでBBQできるか! 加藤くん何か言ってやってよ」
加「1kgの牛タンが出ますから!」

 首吊りの後にタンの話は……その後、配信では出来ない「動作」を伴うお話も賜り、さらに引いてる空気を和ませるべく、加藤さんネタが投下されます。時間をオーバーし、主催者からお叱りを受けて一旦閉会。

(追記)
 話の大枠だけ触れておくと、「子供」「窓」「首(手首)」「人体の切断」あたりの共通の要素を、どのお話も1〜2つずつほど持っていました。
冒頭の、ご自身の体験談からして「子供」「切断」は入ってましたね。書籍・事件からの引用、加藤さんの体験談にも上記の要素が見られます。「なんでこの話をここで?」というものについても、そう考えると実は統一感があります。これは参加者にしか伝わりませんが、コッ…の話に出てくる夫婦の服装も、つまり「子供」に扮してるわけです……よね?

 いやテマティズム的な考察をしたいわけじゃなく、こうした緩い結び目がそれぞれの話に連続性を与えて、個々の話を引き立て合うのです。加えて、同じ要素が繰り返されること自体がフックとして機能し、我々の意識に何かがこびりつくわけですね。おかげさまで帰宅後、ある要素に関わる悪夢を見まくっています。

 禍話の傑作や大ネタ枠にしばしばありますが、幽霊譚とヒトコワ両方の性質を持つ♣︎ と同時にどちらとも言えない幽霊と人の共同作業みたいな話があり、今回の大ネタもそうでした。ヒトコワ的な部分でズーンと凹まされるんですけど、しかしどうもそこが核心というわけでもない。すべての断片が禍々しい調和を起こし、得体の知れない「怪異」へと止揚される。
 死霊かな? 人の業かな? 土地の障りかな? 妖怪かな? ……もうそんなことはどうでもよくなってるんですよ!
 と、こういう「物語の意味はわからんがとにかくすごい恐怖だ!」というお話に出会えるのが禍話ですね。今回も耳福ならぬ耳禍、堪能させていただきました。
(追記終わり)

 さて、次のプログラムのためにお寺を出て、坂をくだることになるのですが……

あ、暗い!
暗いよ!

 懐中電灯が配られ、暗い山道をぞろぞろり。怖いよ!

5.バーベキュー


 今回は2部のあと「かぁなっきさんのたっての希望で」バーベキューが執り行われました。
 ディナーショーという感じではなく、しっかり肉を焼き、思い思いに酒を飲む、マジのBBQでした。
 お肉も野菜もドリンクもたくさん用意していただきまして、わいわいと喰らいました。

 かぁなっきさんが目の前で酩酊し……加藤さんがシイタケに狂い……分母が網を持ち上げて火を起こしている……? なんだこの光景は……?
 変だぞ……俺の知ってる禍話は……人の背中で肉を焼いたり……「しょうがないですよねぇ!自分で焼いた肉なんでぇ!」と言われながら得体の知れないものを食べさせられるような……そんなコンテンツ……

 いや、非常に楽しかったです。私は時々かぁなっきさんと一緒にキャスをやらせていただいておりますが、直接お話したことは数えるほどしかなかったわけでして。
 それに初対面の分母の方々と「どの話が好きか」という話題で盛り上がるのも楽しゅうしてね。
 灰かぶり汗みどろになりましたが、こんな貴重な経験をさせていただき、ありがたい限りです。

 あと、スタッフさんによるとトイレに入った人が消える怪奇現象が起こったらしいですね。

6.分母怪談会


 盛会のままに解散し、おふたりはカラフルさんに、我々は自然の家に戻ります。まぁ怪談会の中で「自然の家」というワードを何回か出されて凹んでたんですけどね……

 自分たちで布団を敷いて、交代でシャワールームを使って……小学生の林間学校や部活の合宿を思い出すような、ちょっぴり懐かしい宿泊体験でした。

(追記)
 ここでも嬉しいのは好きな禍話や怪談手帖の話題で盛り上がったことですね。いつから聴き始めたか、どの話が刺さってリスナーになったのか、聴き返す怪談手帳は何か……オタトークをしっかりできたのがありがたかったですねぇ。
 アーカイブをイチから聴いている人や、怪談手帳を聴いた後に悪夢を見た人も結構いるようです。
(追記終わり)

 さて、スタッフさんから「この後は皆さんで怪談会でもしてもらって!」と勧められたんですが、男性陣は「あー、どうします?」と曖昧な反応。
 で、どうする?寝る?みたいな雰囲気になったところ、いいさんや八重垣さんが「怖い話を!しろ!」と押しかけてくれて、怪談会が勃発しました。
 そうするとみんな普通に怖い話をする!っていうかどんどん出てくる!やっぱり話せる雰囲気づくりって大事ですね。

 はい、そんなわけで、いいさんが作成してくださったリストがこちらです。

分母怪談会おしながき

 ラウさんは学生時代に訪れた各所にまつわる不穏な話を、Hayatoさんは地元でのタクシー怪談を、MSKさんは電話にまつわる2題(大丈夫ですか!?)。ドス恋!ケツ毛大明神さんはある種のヒトコワを(リストでは「ケツ穴」とありますが「ケツ毛」が正しいお名前です)。
 友達の付き添いで来られたぷるぷる新生児さんは、視覚と幽霊に関する興味深いケースをお教えくださいました。八重垣さんのは偽リライト本の準備中に起こったこと、いいさんは「それもう禍話第n回では……」というお話。フロントさんは自分が住んでる事故物件の話、さらにスタッフのタンクさんも物件探しの最中に出会った明らかによろしくない家のお話をしてくださいました(感謝!)。

 最近はもっぱらネット上のプロフェッショナルの怪談を楽しんでばかりですが、たまには良いものですね。もちろん、こういった極めてクローズドな場が怪談の元々で、そこでしか出せない話というのもあるものです。
 それから、皆さん禍話が頭にあるもんだから、「そういえば禍話でこういう話が〜」と、話の余白にパチパチと禍話がピースとしてはまっていくわけですね。これは、怪談好きの集まりであると同時に禍話のファンイベントでもあるという形にしっかりなっていて、正直めっちゃ楽しかったですね。

 解散後、「2時になると宿の前のバス停に女性の霊が出る」と教えていただいたのですが、2時を待たずに轟沈。ただ、暗闇の中でまだひそひそと怖い話が語られており、ああ、思う存分怖い話に浸れる良い日だったなぁと幸せな気持ちで眠りに落ちました。

 分母怪談会の最中にノックの音がした(聞いた人と聞こえなかった人がいた)とか、女性部屋のメンバーが就寝後にスリッパの音がした?とか、幾つか不思議なことはありつつ、終了!おやすみなさい!

7.解散!


 とりあえず人数が減ったり増えたりすることなく(たぶん)無事に翌朝を迎えました。おはようございます!
 島の野菜を使った美味しい朝食をいただき、バスに乗るために急いで準備。
 ある分母の方が、向かいの建物の窓が開いていることを気にしておられ(「昨日は閉まっていたはず」)、これはまぁ、かぁなっきさんの話のせいなんですよね。そういう話があったんです。いや〜、これですよねぇ。怖い話ってのはこうやって日常を異化してくれるわけです。ありがたいなぁ。(別の方によると「窓は昨日から開いていた」とのこと。謎。)

 あるいは引き続き観光に、あるいは帰路につき、それぞれのバス、それぞれの船に乗って、みなみな散っていきます。

 船が島を離れた途端に雨がポツポツと。けぶる島影も美しく、なんとも夢のような時間をいただけたこと、FEAR飯のおふたりに、スタッフの方々に、そして分母の皆様にあらためて感謝いたします。

 雨の雫が這う新幹線の窓を見ながらこれを書きましたが、まずは美術館の水滴を思い出し、しかしその後に怪談の中の子供の足音を、宿で聞こえたというスリッパの音を思い起こし……いやぁ、怖い話って本当にいいもんですね!

 ひとまず取り急ぎレポはこれにて!
 豊島離島怪談会、素敵なイベントでした。今後も開催予定とのこと。さらに来年は瀬戸内国際芸術祭が催されます。これからも豊島を要チェック!

(追記)
 上述しましたが、帰ってから悪夢ばっかり見ます! ざっくり言うとどれも「窓の向こうから呼ばれている」たぐいの夢です。ちょっとお土産もらっちゃった気分。
 それから、かぁなっきさんのお話に出てきたある事件について検索した時も、ちょっと変なことがありました!
 いやー、本当に良い思い出になりましたね!

 それから、島のお土産屋さんで買った「豊島のレモンクッキー」、かなり美味しかったです! おすすめ!
(追記終わり)

いただいたもの、ありがとうございます!!

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