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要点のみを説明してわかるレベルの人には要約を、わからないレベルの人には詳細を
何を言いたいのかわからない文章
トイレで、こんな貼り紙を見かけたことがありませんか?
「ペーパーハンドタオルが床に置かれたままですと、
誤ってほかの人がトイレに流してしまう詰まりにより
使用ができなくなります。
次の方のためにも、皆様、ご協力をお願いします。」
わかりにくい文章ですね。
何を「ご協力」すればいいのでしょう。
なぜ、こういう表現になってしまうのでしょう。
この貼り紙は、もっと簡潔にまとめることができるはずです。
「使用済みのペーパーハンドタオルは、
所定のごみ箱に捨ててください。」
このほうがずっとわかりやすいでしょう。
これを書いた人も、はじめはそのつもりだったのかもしれません。
しかし、書き進むうちに「強い書き方をしてクレームがくると嫌だな」とか、「命令口調って苦手なんだよなぁ」という感情が湧いてきたのだと思います。
このように、いきなり書きはじめると気分や感情に支配され、文章にエクスキューズ(言い訳)が増えていきます。さらに「もっと詳しく説明したほうがいいのではないか」という迷いが生まれ、文章がどんどん長くなります。
まずは、「トイレにこの貼り紙を掲示する目的」を書きましょう。
「使用済みペーパーハンドタオルを、ゴミ箱に捨てさせる」という要約文を書くことができれば、あとは文章を多少やわらかくしたり状況を説明したりすればいいのです。言いたいことから逃げ、要点をぼかすと文章は長くなります。
そもそも、
S + V + O とか
S + V + C とか
学生時代に学びませんでした?
そう、英語の5文型ってやつですね。
S:Subject(主語)
V:Verb(動詞)
O:Object(目的語)
C:Complement(補語)
M:Modifier(修飾語)
の組み合わせによって基本的な文法を学びましょうってアレです。第1文型<S + V>、第2文型<S + V + C>、第3文型<S + V + O>、第4文型<S + V + O + O>、第5文型<S + V + O + C>の5種類の文型です。
羅列の順序に違いはあっても、日本語でもまったく同じことが求められます。たとえば先ほどの例なら
「次の方のためにも、皆様、ご協力をお願いします。」
というのは「何を」「どう」ご協力すればいいのかわかりません。「協力する」は確かに動詞(V)ではあるのですが、目的語(O)がありません。主語である「皆様(は)」と動詞の「協力お願いします」しかないんですよ。
「私は、食べる」
と言っているのと変わりません。もしそう聞いたら「え、何を?」って聞き返したくありませんか?
ですが日本人って、すぐに手を抜いて「主語」や「目的語」を省く癖があるんですよね。だからコミュニケーション不良を起こすとわかっていても、一向に改善されません。まぁ自業自得で当人が後悔する分には別に構わないのですが、それで周囲まで迷惑を被るのは捨て置けませんね。
仕事でも同じことが言えます。
報告書やメール、企画書などを書いたとき、みなさんの中でも心当たりのある方はいらっしゃいませんか?
「君の文章、長いうえに、よくわからないなぁ」
私もよく言われます。
しかし、残念ながら長い文を書いているときは、対象者の誰かが「要点だけ掻い摘んで話しても理解できない力量」であるから…ということも少なくありません。
そのため、わかっている人と、わかっていない人、レベルの異なる複数の人にメールを送る際にはどうしても最も理解の劣っている人を前提にして文章を構築する必要があり、面倒ですが長文と化してしまうことも珍しくありません。
こうした時、わかっている人、優秀な人から見ると
「長いうえに分かりづらいなぁ」
となるのでしょう。
特に、私の場合はわかっていない人を対象にする際、必ず教育も兼ねて「例え話(具体的事例)」を挟みます。それがさらに長文化するとわかっていても、相手の成長につながるのであればと敢えて差し込みます。
短文は確かに読みやすいかも知れませんが、コミュニケーションにおいて互いの力量が近しい場合にのみ言葉を省略することが有効であることも、同時に知っておきましょう。
さて、若干脱線しましたが、さきほどのトイレの貼り紙の例は一応「伝えたい要点」が明確でした。
しかし、レポートや企画書、提案書を書く際には文章を書く対象となる本や資料から、まずは要点をつかみとる作業をしなければならないことも。
これが苦手だという人は少なくないでしょう。
膨大な情報の中から要点を絞るために、行われる方法のひとつが
「1ページ・1ライン法」
です。大切な部分にアンダーラインを引く、それはきっと誰でも行っている方法だと思いますが、この方法では“1ページに1カ所だけ”しか引けないという縛りを設けます。
この原則を頭に置いて、必要のない部分をバンバン捨てながら読んでいきましょう。
1回目の粗読みではラインは入れません。パラパラと全体を読み通したうえで、もう一度はじめから読んでいきます。そのときに、1ページに1ヶ所を目安に大切なセンテンス、単語を探す。「ここだ!」と思った単語または文章に短くラインを入れます。
そのページに核心がないと判断した場合は、ラインを引かなくてもかまいません。逆に「いくつもあるな」と思った場合でも、それらを比較し最も重要そうな言葉をひとつに絞ります。
大人たちの大好きな
「選択と集中」
を行うわけです。本や資料にもよりますが、仕事に有益な箇所はせいぜい文章全体の10%前後と言われています。ポイントをつかみ読みするクセをつけ、捨てる覚悟を持って読み進みましょう。
納得したしないに関わらず、要約のコツはとりあえず掴めたと思います。
いよいよ報告書やレポートの文書に落とし込んでいこう……というところで、いきなりつまずきがちなのが「文章の書き出し」です。
よく言われるのが、「5W1Hでまとめる」こと。
いつ(When)
どこで(Where)
誰が(Who)
何を(What)
なぜ(Why)
どのように(How)
の6つの要素に加え、さらにビジネスの場では
どのくらい(Howmuch/Howmany)
を加えて「5W2H」にするとより明確になるとされています。
しかし、文章の冒頭にこれらの要素を全部入れようとすると、詰め込みすぎてぎゅうぎゅうになり読みにくくなりかねません。
そこで参考にしたいのが『桃太郎』のあの有名な書き出しです。
「むかしむかし(When)、あるところに(Where)、
おじいさんとおばあさんが(Who)、住んでいました(What)」
どうでしょう。
この一文だけで4つのWを使っています。
この順番で冒頭の文章を書いてみると、端的に状況を説明することができます。時間(When)と場所(Where)はどちらが先でもいいように思いますが、人間の心理は「どこで起きたのか」よりも「いつ起きたのか」を先に知りたいものなので、この順がベストといえます。
ニュースや報道などでも冒頭は
「本日未明、〇〇県〇〇町で…」
みたいに時間(When)を先に持ってきて、次に場所(Where)を説明していますよね。あの定型文は、こうした背景を知ったうえでのことなのかもしれません。
この方法は、報告書やレポートなどを書くときはもちろん、口頭で報告するときにも有効です。シャープな印象を人に与えることができるでしょう。
「先日、〇〇さんとの会食で…」
「4月〇日の打ち合わせで、〇〇さんが…」
だいたいスマートな表現は時間(When)から始まります。
こうして、文書を書き出したら、次に続くのは「結論」です。
「結論を先に述べよ」とはよく聞く言葉ですが、とくにビジネスでは大切なことです。非常に参考になるのが、
「『早い話が』『要するに』と言ってから書け」
です。私はこれも1つの「翻訳」と解釈していますが、
具体化(抽象→具体):たとえ話
抽象化(具体→抽象):要約
のスキルを両方とも使いこなさないと、相手のレベルに応じたコミュニケーションは基本的に困難です。
自分の都合と自分の言葉だけで、相手を置き去りにするような話し方ではダメです。そんな時に活用するのが、この「具体化」と「抽象化」です。
要点だけではついてこれない人には、具体的事例を以ってイメージしやすく解説する。具体的すぎて頭の中で整理できない人には、要点だけまとめて結論を導きやすくしてあげる。どっちも大切なことです。
「結論から先に述べよ」
というのは、抽象化のスキルと考えてみればいいでしょう。結論から先に述べる、具体的にどういうことかというと
「要するに」
「端的に言えば」
「早い話が」
「結論から申し上げますと」
を(声に出さなくてもいいので)接頭句に置いてたうえで文章を組み上げてください。結論を示す際、前置きは一切不要です。「要するに」「端的に言えば」「早い話が」に続く文章を考えるのです。
「(早い話が)エンジニアには一定の読解力が必要です」
「(早い話が)テストの品質には、設計の品質が対になります」
じつに気持ちよく結論がわかります。
この結論の前に、先ほどの『桃太郎』の冒頭4Wを足してみましょう。
「昨日、開発現場でエンジニア達に多発する問題の確認をしました。
(早い話が)エンジニアには一定の読解力が必要です」
これだけで、報告を受けた相手は同じ認識の土俵で報告書やレポートを読むことができます。偉い人だったら
「ほほぅ、それはなぜかね?」(マンガ風)
といって聞いてきそうですね。
この順番で書き出しをはじめ、その後に、
目的や利用を表す「なぜ(Why)」
手段や方法を示す「どのように(How)」
といった、文章の主目的になる部分を話していく。こうすればあなたの文書は格段に聞き取りやすく、興味をそそるものになるはずです。
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