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失敗を恐れてはなにも始まらない

高い山に登ったとき、霧のなかで自分の背中から太陽の光を受けると、前方の空間に大きなモンスターが見えることがあります。

これは「ブロッケン現象」と呼ばれるものです。

ブロッケン現象

この現象にはじめて遭遇したとき、たいていの人は不気味だと感じるかもしれません。しかしその原理は、後方から太陽の光が当てられることで、前方の霧のなかに自分の影が映し出されているだけのものでしかありません。

つまりその人が恐怖しているのは、単に

 その人自身がつくり出している自分の影に過ぎない

のです。

先行きが不透明なこの時代。
将来を案じて怯えている人の心理はこのブロッケン現象に似ています。

中国や北朝鮮、韓国といった諸外国、あるいはコロナ、あるいはAIなどによる労働競争の影におびえて、失業や先行きの生活に不安を感じている人たちの悩みの原因をたどっていくと、じつは自分を取り巻く環境、すなわち制約条件が変わっているのに、それに応じて変わることができない

「自分自身がもたらしているもの」

だという結論に至ります。

いまの時代、制約条件や前提条件が刻一刻と変化するのは当たり前です。その影響を激しく受ける立場や環境にいる人にとっては、自分自身が変わらないと生き残りがむずかしくなるのは必然なのです。

もし制約条件が変わったことを恨むとすればそれは筋違いというものです。

しかし、"変われないこと"を悪いことだともいえません。
中には、変わりたくても変われない人もいるでしょう。
いままでの常識(定式)が通じるうちはそれを利用するのも人の知恵です。

けれども、周囲の制約条件が変わっても、古くなった常識にしがみつき続けるということは、

 一見安全そうですが、じつは自分の立場を
 いっそう危うくするだけの危険な行き方である

ということを、きちんと認識しておきましょう。


ソフトウェア開発においても、過去の成功体験にしがみついて、次の開発でも制約条件を見ようともせず無条件に同じ方法で進めようと人や組織というものを多々見かけます。

しかし、量産開発でもない限り1つとして同じ制約条件で開発することはありません。それがB2Bと言うものです。それがプロジェクトというものです。

そもそもプロジェクトには独自性が常に存在し、何一つまったく同じモノは存在しません。なかでも、不確実性についてはこれまでにさんざん言われてきたことです。

このように、プロジェクトについては「これまでやってきたから、今後も同じで大丈夫」なんて根拠のない判断や自信は命取りでしかありません。

その前提を無視して、過去の成功や安定にしがみつくということは、むしろプロジェクトとして失敗させることを確信犯的に行っているようなものです。その確率が間違いなく跳ね上がってしまうことを知っておかなくてはなりません。

せめて、

 「本当に前回と同じ方法で進めても問題がないか?」

という自問に対して、様々な角度から検証し、顧客に合意をいただき、さらには進めながらも計画と実績の乖離がないかをつぶさに観察しながら、慎重に進める気概が無くては成功できるものでも成功することが困難になることでしょう。

盲目的に成功を信じるのも愚。
しかし、失敗ばかりを恐れて何もしようとしないのも愚。

大事なのは、あらかじめ

失敗する可能性を検討し
失敗する要因を特定し
失敗しないようにあらかじめ

 「準備する」
 「対策する」
 「対策できる環境を整える」

ことです。

今のご時世、9分9厘は既知の失敗です。未知の失敗なんてまず滅多にありません。特にソフトウェア開発におけるプロジェクト活動では、もう世の中で失敗らしい失敗はすべて出し尽くしたのではないかというくらい様々な失敗がわかっています。これらのなかから自らの携わるプロジェクトと酷似した環境上で起こりうる失敗を知り、理解し、対策を講じておけば、失敗を恐れる必要はなにもありません。そうした取り組みができない理由のほとんどはその失敗情報を蓄積し、共有する仕組みや習慣が無いことにあります。

未知は未知ゆえに考えてもわからないものです。考えるだけ無駄です。

だからこそまずは既知の問題に対して、そのなかでも条件が類似するものがないか情報を収集し、しっかりと検討しましょう。スタートラインはそこからです。原因や対策があらかじめわかっていて、しかもしっかりイメージできる失敗なんて怖がる必要もないのですから。

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