報連相の「相(質)」の仕方で仕事の効果が大きく変わる
「質問」と「相談」は厳密には目的に差がありますが、技術的な要素としては全く同じ土俵の上に立っていると私は考えています。
ですので、ここではまったく同じものだとイメージして話をしたいと思います。
みなさんは「質問」というものに対して、どんなイメージをお持ちでしょうか。
多くの人は、単に「何かの答えを聞き出すだけのもの」「知らないことを教えてもらうだけのもの」だと考えています。だから、何の工夫もしないまま「雑な質問」をする人が少なくありません。
質問に「テクニック」が一切存在しないのです。
しかし、いい質問の仕方をいいタイミングで投げかけることのできる人は、相手(回答してくれる人)から高い評価を受けることができます。質問がうまいだけで「この人は頭がいい」「話をする(答えを教えてあげる)のに値する人だ」と思ってもらえるのです。
そして、"質問のうまさ"は「テクニック」に依拠します。テクニックというからには、後天的に身につけられるものであると言うことであり、誰もが、訓練次第で『質問の達人』になれるということでもあります。
①オープン/クローズドクエスチョンが使えていない
以前も少し触れましたが、
にもあるように、質問の仕方には大別して5W3Hを駆使して目的別に必要なことを聞き出すオープンクエスチョンと、「Yes/No」の回答を得るためのクローズドクエスチョンの2種類があります。
社内で、部下が上司や先輩に聞く場合は、回答する側の負担を意識したり、自分の思考力向上や自己確認のためにクローズドクエスチョンを使うことが推奨されています。逆に、お客さまなどから具体的な要求を聞き出したい場合は、「なぜ(Why)」「いつまでに(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「何を(What)」「どのように(How)」「いくらで(How much)」「どのくらい(How many)」と言った目的別のオープンクエスチョンを使うことが多いのではないかと思います。
まずは、「相談」「質問」の下地として、TPOにあわせて使い分けができるようになっていなければ、先に進むことは難しいでしょう。
②ひとつの質問の中に複数の質問を混ぜない
報告でも、連絡でも同じことが言えますが、世の中には「何を聞きたい(言いたい)のかよくわからない」人がいます。
質問がわかりにくいだけで、どうにも頼りなく、信用するに値しない相手に思えてしまう…というのは、多くの人が口には出さずとも、ぼんやり感じていることではないでしょうか。
"わかりにくい質問"で典型的なのは、
ひとつの質問の中に、たくさんの細かい質問が混じっている
パターンです。これは部下が上司にするものもあれば、上司が部下に対してするものもあります。たとえば、なかなか成果が出ない部下に対して、
「なあ。おまえ、どうして怒られてるんだと思う?」
などと質問する上司がいます。こう聞かれた部下は、たいてい黙りこくって下を向いてしまいますが、別に不貞腐れているわけではありません。論点がいろいろありすぎて、何を聞かれているのか、どう答えるのが正解なのかよくわからないのです。
この手の質問をされると、相手は答えるのが面倒くさくなって(というより答えようがないので)黙ってしまいます。同時に、質問をした相手への信頼度も急降下していきます。
ですが、こうした「ごちゃ混ぜ型」の質問…を、私たちはつい日常の中で使ってしまいがちです。なぜなら、そちらのほうがラクだからです。「ごちゃ混ぜ型」と言うのは、言い換えれば抽象的で、なんとなく色々具体的に言いたいことを1つにまとめてしまっていると言うことです。それでは、回答する側も何を1つ答えればいいのかわからなくなるのは当然です。
一方、質問のうまい人は、こうした雑な聞き方をせず、質問を細かく分割します。たとえば、次のような感じです。
「なあ。おまえ、どうして怒られてるんだと思う?」
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「失敗した原因は、自分なりに理解できている?」
「原因に対する、対策は答えが出ている?」
「対策するにあたって、どうすればいいか結論は出ている?」
このように、質問を小分けにしてスッキリと、論理的(筋道を立てて1つずつ)にわかりやすくすることで、相手も具体的な答えが言えるようになります。さらに、問題点もぐっと見えやすくなってきます。
こういう質問ができる人を、相手は「頭がいい」と感じるのです。
①にあった、クローズドクエスチョンを使いこなせるかどうか?と言うことでもあります。質問する側の人間が楽をして聞き出そうとオープンクエスチョン…なかでも「How」を濫用した時点で、コミュニケーションの質は圧倒的に低下し、相手からの信頼や評価を得られなくなるのです。
③相手が使ったキーワードを、自分の質問に取り込む
世の中には、ネットで調べれば簡単にわかるようなことを平気で質問してくる人がいます。
「自分で調べるより、知ってる人に聞いた方が楽ちん」
と言うことなのでしょうが、有識者であればあるほど、優れていればいるほど、組織の中では「重要」で、「責任」が重く、かつ「たくさん」の仕事を抱えていたりするものです。そう言う人の負担をこれから増やそうと言うのに、自分が楽か楽でないかを基準にして、質問しに行こうと言うのですから、迷惑をかけているかも知れないことまで配慮した方がいいでしょう。
こうした「リサーチ不足」な質問は、相手にとって失礼なばかりでなく、質問者の価値を下げてしまいます。要は「答える価値のない相手だ」と思われてしまうわけです。
こうなると次に何を聞いても答えてもらえなくなるかもしれません。つまり、リサーチ不足な質問は、本当に大切なことが聞けなくなる危険をはらんでいるのです。
ですから、質問をする前に十分なリサーチをしておくのは大前提。そのうえで、あなたが「答える価値のある人間である」ことを相手にアピールするための、ちょっとしたテクニック「キーワード活用」を駆使します。
相手との会話の中に出てきた「キーワード」を、質問の中に自然に取り入れることで、「自分なりに、あなたの話をかみ砕いて理解していますよ」とアピールすることができます。
たとえば、一時の小池百合子都知事のように、なにかと「カタカナ英語」を多用する人がいますよね。
ちょっと面倒ですけど、このように独特の語彙を持っている人は、会話の中にわかりやすくポイントとしやすい「キーワード」がたくさん出てくるので、質問しやすい相手でもあります。「日本語で言えばいいのに…」と文句を言うのではなく、質問の中にそのキーワードを取り入れることで、より、親密なコミュニケーションをとることができるのです。
けれども、相手を見定めないと、この手段はうまく機能しません。
ビジネスの世界でも、いわゆる"意識高い系"と呼ばれる人たちは、やたらと専門用語、カタカナ用語を濫用したがります。
こういう人たちを相手にする場合は、「キーワード活用」を駆使しても上手くいかないことがあります。たとえば
「シナジーが生まれるとは、具体的にはどのような効果が?」
▼
「んー…お互い得しちゃう的な?」
「互いのエクスペリエンスを最大限活かして…」
と言ったように、より混乱の渦に巻き込まれていく可能性もあるわけです。相手の懐に飛び込んで活路を見出す「キーワード活用」戦略は、相手の知的レベルの高さが、質問するに値するレベルまで高い場合にのみ有効と言うわけです。本当に意識が高いわけではなく、意識が高いフリをしているだけの人には通用しません。
なお、キーワードを活用する場合は、相手の言葉を言い換えずにそのまま反復するようにしましょう。
言葉の意味を正しく理解していたとしても、相手が「ワイズスペンディング」という言葉を使っているのに、「先ほどの、"税金の有効活用"の件ですが……」などとわざわざ言い換えて質問してしまうと、相手の懐に入り込む効果が半減してしまいます。
みなさんも、カフェで「カフェオレ」を注文したときに、店員さんに「カフェラテですね」と言い換えられたら、なんとなく恥ずかしくなったり、ムッとしたりしますよね。それと同じことです。
④記録を有効活用する
本当の意味で有益となる質問⇔回答というものは、あらかじめ計画された一問一答のなかでは生まれません。相手によっては、答えが予想外の方向に広がっていくこともしばしばですし、相手の答えによって質問する内容が変化していくのは当然のことです。
このことを前提にしておかないと、途中で「あれ、もともと何を聞こうとしていたんだっけ?」と、会話の本流を見失ってしまうことがままあります。
そうなると、せっかくの質問が流されるままに、たいした実りもない雑談で終わってしまいます。
こうした失敗を防ぐ、つまり会話の本流を見失わず、仮に途中で支流に逸れてしまってもうまく本流に戻るためには、「メモを活用」しながら質問をするのがベストです。
そしてそのメモを、相手と自分の間に置いて会話を進めます。そうすることで、「話の流れ」を相手と容易に共有することができるからです。
さらにスムーズに互いの理解を共有するには、テキストではなく図解でメモをするのがポイントです。テキストだと、自分の頭の中でどのように会話が整理されているのか、相手にはなかなか伝わりづらいものです。
フローチャートやマトリックスなどの形式でメモをとっていれば、論点を整理しながらお互いが同じ理解に立って話を進めることができますし、話が本流から逸れたときも、すぐに元に戻ることできます。
たとえば「(商品搬入の流れ)①A社倉庫→②当社倉庫→③イベント会場」と、①②③それぞれを丸で囲んで矢印でつなぐといった具合です。
私自身は、会議室であればホワイトボードにメモをしながら打合せや質問をすることを習慣にしています。ホワイドボードを活用しないケースと言うのは殆どありません。逆にホワイドボードが身近にないとそわそわします。
そのため、私の座席の後ろには、私のためだけにホワイトボードを置かせてもらっています(誰も使わず、捨て置かれていたものをもらってきました。汚くてスイマセン。そのままjpg化してくれたり、印刷してくれるモノなら、より良かったのですが…まぁ、私は無駄遣いが嫌いなので、あるものでなんとかします)。
質問をされて答える時も、私が質問をする時も、常に相手と自分のコミュニケーションインターフェースとして必ず利用しています。
まとめ
質問の目的とは、
相手から新しい情報や考え方を吸収して、
自分の情報や考え方をレベルアップさせる
ことです(相談はちょっと違いますけどね)。
そのためには、相手が「どんどん答えたい」と思うような質問者になる努力を最大限行わなくては、期待する効果を得ることはできないのです。
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