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形骸化は自然と「なる」ものではなく、人の手によって「する」もの

と言うのが私の考えです。

ですから「形骸化」された仕組みを発見した時、まず真っ先にそう「した」人を特定します。そしてなぜ形骸化「させた」のか理由を問います。

私は、基本的に「誰か」に問題の焦点をあてません。その先にある「何か」までノンストップで駆け抜けます。

誰でも問題は起こしますし、ミスや失敗をゼロにすることは不可能だと思っているからです。ですが、その人の「何に」問題があるのかは特定しなければなりません。問題は言ってみれば腐敗と同じです。そのまま放置しておけばどんどんその被害は拡散・拡大し、周囲にも同じ被害が出てきます。

「人」に責任を問いはしませんが、その人の「何か」は確実に改善してもらうようにしています。


少し脱線しましたが、「形骸化」もそうした精神や思考あるいは心理の腐敗が原因で起きるものです。もちろん無知によって起きる場合もありますが、その場合は知る機会を与えることでスマートに改善されることも多いので、あまり問題視していません。

問題は、知りながら害をなす場合です。

つまり、適切に言葉を用いるならば

設立当時の意義や内容そのものに問題があるのではなく、
運用や利用を経て、使っている者たちが、意義や内容に重きを置かず、
その目的や価値を喪失させてしまっている状態

『形骸化する』と言うのだと思っています。形骸化させてしまうのは常に運用者や利用者など「人」の意識や責任感、不理解によって起こされているのです。

もちろん仕組みやルールなどを誕生させた後、ブラッシュアップもせずに時代や市場、状況などと折り合いがつかないまま放置しておいても、形骸化することには変わりありません。

しかし、そうなるまでには少なくとも形骸化しなかった時期や時代があって、その後形骸化するきっかけができて初めて誕生/設立当時の意義が形骸化したと言えるのでしょう。

通常、誕生/設立させたにも拘らず正しく運用された時期/時代もないまま形骸化するのは、いつの時代も常に運用者、利用者の意識の低さや姿勢の悪さによって、正しく運用及び利用しようとする姿勢がないことが起因しています。もちろんそれによって問題が再発すれば、自業自得と言うことになるでしょう。

そもそも仕組みにせよ、ルールにせよ、それが誕生/設立したと言う事象が発生した時点で、

 現状に何かしら問題や課題、あるいは必要性があり、
 状況をより良い方向に改めるために
 発生させなければならない背景があったから

だと容易に想像がつきます。その解決のために誕生/設立したのだとすれば、その社会、組織、チームの中に属する人は誕生/設立されたものに則して運用、あるいは利用しなければ元の木阿弥となってしまい、いつまで経っても問題/課題が解決しないままとなってしまうということです。

それでも形骸化させて、当初の問題や課題を解決しようとしないのは、すなわち確信犯と言っても過言ではありません。

当然、誕生/設立当時のルールや仕組みはまだまだ改善の余地があり、使い勝手が悪いものであるかもしれません。しかし、その改善に寄与するでもなく、ただただ形骸化への道を進ませようとする働きは、社会、組織あるいはチームを停滞、退化させるだけでなく、巻き込んだ者たちまでも同罪に貶める行為になることを自覚しましょう。

一つひとつの仕組みやルールの誕生や設立には、必ず「何か」をより良くするための意味や目的があります。

それらの意味や目的を見失わない範囲で改善していけば、さらにより良い環境が待っているはずです。少なくとも、組織の中で知識や認識、意識の「共有」がしやすくなりますし、これから続々と入社してくる新人や中途採用者などとも、連携が取りやすくなるのは言うまでもありません。

しかし、意味や目的から目を逸らし、社会や組織、チームの中で問題を起こし、挙句、他人の人生にまで迷惑をかけるようなことがあれば、それは

 「形骸化させる」と言う社会悪

の片棒を担ぐことにもなりかねないことを、私たちは肝に銘じておかなくてはなりません。


ちなみに「知りながら害をなすな」とは、ヒポクラテスの有名な言葉で、近代経営学の父、P.F.ドラッカーも引用していることで有名ですよね。

マネジメントたるものはすべて、リーダー的地位にあるものの一員として、プロフェッショナルの倫理を要求される。 それはすでに、2500年前のギリシャの名医ヒポクラテスの誓いのなかにはっきり表現されている。知りながら害をなすな、である
(『エッセンシャル版マネジメント』)

見て見ぬ振りをすることも同じです。「問題だ」「悪いことだ」と判っていながら、そのまま放置するのはプロフェッショナルとは言いません。そしてそうした状況であることに甘えるようになると、組織は加速度的に形骸化していくのです。

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