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責任感に対するボーダーは高い

就活生の多くが「責任感」を自己PRで強みとして伝えています。

「責任感」は社会で必ず求められる資質であることから、責任感をうまくアピールできれば面接を突破できる可能性は高まります。実際、社会人にとって「責任感」は

持っていて当然であり
持っていなければ社会不適合者と言われても仕方がない

くらい重要な要素の1つです。
そうでなくては重要な仕事を任せることは一生できません。

一方で、社会人の多くは昇進・昇格し、役割が大きくなるごとにその行使のための「裁量(権限)」も大きくなっていき、だからこそその裁量を適切に運用し、多くの結果を残すために相当量の「責任」も大きくなっていくものなのですが、実は昇進・昇格すればするほど「責任感」が希薄になっていく人が多い、と言うデータがあります。

おそらくは「権限」や「裁量」を与えられたことで目が曇ってしまい、自分だけは(他の人であればやってはいけないことでも)許されると勘違いしてしまうのでしょう。

 ・遅刻しても許される
 ・経費を無駄遣いしても許される
 ・仕事をしなくても許される

結果、敬意の払われない上司ができていくのかもしれません。


話は戻って。

学生の多くが責任感をアピールしようとするため、「ただ責任感があります」と訴えるだけでは面接でインパクトを与えることはできませんし、同様に責任感をアピール材料として選んだ他の就活生に差を付けることもできません。

就活で面接を担当する方々は、会社の顔として活躍しているベテラン社員の方ばかり。まともな社員であれば、『責任を果たす』ために様々な苦労をしてきた人が大半です(逆に、問題ばかり起こして『(結果)責任を取る』ばかりの人は、おそらく面談には出てこないでしょう)。

社会の中で「社会人として求められる責任」を全うしてきた方々に対して、責任感をアピールしようとしている前提を理解しておく必要があります。

これは学生のみならず、若手の社会人にも言えることです。

多くの若手層が伝えようとしている「責任感」は、ベテランの社会人に対してアピールするには非常にハードルが高いのです。

 就活生や若手社員が「責任感がある」と感じるレベルと
 社会経験豊富な面接官が評価するレベルにギャップがある

ことから、自信をもって責任感のあるアピールをしたつもりでも、評価する側からすれば「その程度のことはやって当たり前」あるいは「NG」と評される場合がしばしばあります。

「責任感=頑張りました」はNG

ではどんなケースが「できて当たり前」あるいは「NG」と評価されるのか。

①(学生の場合)
 「私は部活動でマネージャーとして責任を果たすべく、
  毎日休まずマネージャーの業務に取り組んできました」

②(社会人の場合)
 「私は任された仕事が定時になっても終わらなかった場合には、
  自ら進んで残業し、必ずその日中に終わらせるようにしてきました」

①は「毎日休まず」ということを責任感の根拠としていますが、社会人にとって営業日は毎日休まず会社へ出社して仕事を行うことは基本的義務であり、「当然」のことです。

また与えられた役割が「マネージャー」であればマネジメント業務を取り組むのは当たり前のことであり、責任感がアピールできる材料にはなり得ません。

②は一見すると仕事熱心な人に見えますが、その日にやり遂げなければならない仕事が完了していない場合、時間内に終われていない時点で実力不足を感じますし、その問題を解決する取り組みがアピールされていません。

しかも、その日に終わるべき適切量の仕事であれば、時間外になってもやり終えることは社会人にとっては当前のことです。このケースだと責任感をアピールするどころか、仕事が遅い印象や時間配分ができないイメージを与えてしまうので要注意です。

残念ながら就活生や学生気分の抜けていない若手社員の多くは、これらNG例文と同じ論法で「責任感がある」と伝えてしまう方が多いのです。

経営の視点がなく、感情論で評価する上司の中には、ひょっとすると、いまだに昔ながらの年功序列的な考え方をしてしまって、ただただ「頑張ってる人」の評価をあげてしまう人もいるかもしれません。

しかし、実際に実力がついてきていない以上、そう言う人が今後上司になっていけば、確実に組織は衰えていくことになります。

組織の中核を担う管理職は、いわば会社の骨格です。

特に部長クラスともなれば、体幹を支える『背骨』の役割を担うことになります。この背骨がグラつくようだと、身体はまっすぐ前に前進することもままなりません。支える実力もない背骨では、崩れ落ちるしか道が無いのです。


アピールできる責任感とは「結果責任」

さきほどのダメな例文では「毎日頑張った」「帰らずに取り組んだ」といったことが責任感の主な根拠になっています。そのアピールでは評価されない理由が、頑張って果たした責任が「遂行責任」に過ぎないからです。

遂行責任とは、「結果に関係なく、遂行することによって責任を果たす」ことです。これは誰に褒められるでもなく、『役割』を与えられそれを受けた以上、当たり前にすべきことです。

ビジネスの99%は、遂行責任を果たしても対価は支払ってくれません。
遂行責任を果たすのは当然の義務だからです。

たとえば、あるパート従業員が午後5時まで働く契約になっていた場合、午後5時まで働けば「遂行責任」を果たしたことになります。

たとえば、課長が課長の役割定義に従って、部下の育成や指導を行うことになっている場合、課長が部下に対して、時間を割き、育成や指導を行うのは「遂行責任」を果たしたことになります。

たとえば、マネージャーと任命され、トラブルを起こさないように指示された場合、マネージャーがトラブルを起こさないようにマネジメントすることは「遂行責任」を果たしたことになります。

企業にとって「遂行責任」を果たすことは当たり前の義務なのです。だからこそ「遂行責任」を果たさなかった人、すなわち"無責任"に対しては厳しくなければならないのです。

これに対して、企業がさらに社員に求めているもの、評価することができる責任は「結果責任」です。結果責任とは文字通り、結果に対して責任を持つことです。

ただし、誰もが言われたとおりにやれば必ず出せるような結果であれば、「遂行責任」と大差がなくなります。ここで言う「結果」とは容易ではない、達成が難しいことです。

大学の成績を例にとるなら

 ・大学の講義に全て休まず出席する・・・遂行責任
 ・親に全単位「優」の取得を約束し、有言実行した・・・結果責任

遂行責任と結果責任はこのような違いがあります。つまり「遂行責任」を果たしただけでは「責任感があるエピソード」として評価して貰えないということです。

責任感のある人物として評価されたければ、

 「結果責任」を満たしたエピソードを訴求する必要がある

ということです。

ちなみに、一般的に「プロフェッショナル」と呼ばれる人たちは、「遂行責任」「結果責任」の両方に対して、成果を残せる者、残そうと動ける者のことを言います。

また、遂行責任を果たさず、(失敗の)結果責任を取る人、取らされる人のこともまた、

 "無責任"

と言います。きちんと、「やって当たり前」の遂行責任さえ果たしていれば問題にもならなかったものを、遂行責任を果たさなかったために結果が伴わず、責任を取ればいいと思っている人に、本当の意味での責任感はありません。プロとして失格です。

責任感とは、社会人ならば等しく持っていて当然のものですが、

 「遂行責任」
 「結果責任」

と分別すると、その両方を兼ね備えている人材の割合は高くありません。決して、「責任意識が低い」と言うだけが理由と言うわけではありませんが、責任意識よりも他のことに重きを置いてしまい、時として優先度を下げすぎたがために、全うできていないのでしょう。

 ・遂行責任があれば、自らの役割に手を抜きはしない。
 ・遂行責任があれば、求められた業務をしっかりとコントロールする。
 ・結果責任があれば、大きな失敗は決して起こさない。
 ・責任意識があれば、「責任を取る」事態になるまで問題を放置しない。

これらをしっかりと行える人材と言うのは少ないのです。

真面目な人は多いと思います。
目の前の仕事に真剣に取り組んでいる人も多いでしょう。
日々頑張っている人ばかりだと思います。

しかし、それらは自らに課された役割に対して「責任を果たす」ための仕事、あるいは取組みとなっているでしょうか。

たとえば、ある役割に、"A"と"B"2つの仕事が割り当てられているとします。"B"が大事だからと、"A"を疎かにした挙句、"A"で大きな問題が発生した…と言うのであれば、それは役割を十全に果たしているとは言いません。

"B"のために大いに頑張ったかもしれませんが、"A"に対する「遂行責任」「結果責任」が希薄だったと言うことなのです。

だからこそ、最初にも言ったように「責任感=頑張りました」とはならないわけです。できないのなら、始めから「できない」と言えばいいでしょうし、途中でできなさそうとわかれば、その時点で「困難である」と伝えれば調整もできたでしょうが、それすら行わないで責任を果たさないのであれば、それはただの"無責任"でしかありません。

冒頭にもあるように、責任感は持って当然、持たないものは社会不適合となり得るものです。

みなさんも、自らの役割にどのような「責任」が課せられているのかを正しく理解し、請けた以上は漏れなく遂行し、結果を残せるようにしましょう。

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