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思考整理に頭の良し悪しは関係ない

考える力は、基本的に継続することでパフォーマンスが向上します。
言ってみれば、筋トレやダイエットと同じなわけです。

そのため、「天才かどうか」「才能があるかどうか」は関係ありません。


もし、これが先天的なセンスや頭の良さだけで成立するとしたら、たとえばコンサルティング企業などは経営層から担当、はたまた新人まですべてがエリートでなければ成立しません。しかし、実際にはそんなことはありえませんよね。

仕事がデキる人とそうでない人との差、その1つは、

 「思考整理ができているかどうか」

です。

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以前こんな図を描きましたが、人が何か行動を起こそうとしたとき、その多くは必ずこの図のような流れに沿っているはずです。

たとえば、「今日の晩御飯はカレーにしようかな」なんて行動も、

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とまぁ、こんな感じになります。「思考整理」とはこのプロセスにおいて、とても重要な起点となる作業になります。行動を起こす前準備…とでも言いましょうか。

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仕事がデキる人は、不用意に行動を起こすのではなく、必要なことと不要なことをきちんと区別し、何からどう手をつけるべきか、イメージを鮮明にしています。

これは言い換えれば「計画」です。

多くの人は計画を立てても「計画通りに行くわけがない」と言ってすぐに軽視してしまいますが、仕事がデキる人もそんなことはわかっています。ですが、しっかりと頭の中にスマートに進行するイメージを持っておくと、現実の中でイメージ通りになっていない瞬間

 「あれ、なんかマズいぞ?」
 「イメージとズレてるぞ?」

というのが即座にわかります。だから、早々に解決できることになりますし、早期発見、早期解決ができるから、傷口が広がらないうちにイメージ通りの線に戻すことができるわけです。

これがあるとないとでは、仕事のパフォーマンスは劇的に違ってきます。

日頃から思考整理された状態…つまり、現状を正しく把握し、未来のイメージを鮮明に描くことができれば、それだけで常に頭がスッキリと整理され、仕事にムダがほとんどなく、ミスや見落としも殆どなく短時間で仕上げることができるようになります。だからそれができる人は、焦りや不安がなく、精神的に余裕があるのです。


そのような状態に少しでも近づくためには、どうしたら良いのでしょうか。

彼ら彼女ら「デキる人」を観察していて気づいたのは、特別な才能やセンスではなく、そのためのテクニック…いわばテンプレートがあるということです。

思考整理というと「難しそうだな」という印象を持つかもしれませんが、実は高度な技術が必要だったり、特殊なことをするというわけでは決してありません。『思考』という言葉がついているので、なんとなく

 「頭が良い人でないとできないのでは」
 「センスがないと、ダメな思考になるのでは」

などと心配されるかもしれませんが、そんなことはありません。ポイントは『思考力』そのものではなく、『思考の方法』にあるからです。だから、その方法に従って思考さえできれば、誰にでも十分に身につけることができます。


昔、こんなことがありました。

 「3ヵ月間決められなかったことが、
  みなさんが来たら1週間で決まった!」

これは、私がある会社のトラブルプロジェクトの改善に関わったときのことです。先方のSIerから、このように感謝していただけたことがありました。

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実際の問題は、『排他』と呼ばれる仕組みがないために、データの上書きやコミット前のデータ取得などが発生して、誤ったデータで運用していたことでした。

しかし、現場のSIerではその問題に対してどうすればいいか、皆目見当もつかずに困っていたのです。
 
そこで解決支援にあたった私たちがまず最初におこなったことは、単なる「整理」です。

 ・起きた問題とその原因の「整理」
 ・データの流れとその利用用途の「整理」
 ・今まで行ってきた対策の「整理」
 ・お客さまの感情の変化と現在の感情の「整理」
 ・これから期待されている結果の「整理」

こうした情報を一つひとつ整理し、優先度を決め、対応していったのです。

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結果、どの処理とどの処理が排他上の問題を起こすか特定し、限られた時間内で最小限の対策を講じることができました。

成果物に対してやったことと言えば、膨大な量のソースコードを確認し、データベースへのアクセス内容を表で整理し、CRUDと呼ばれる図表をカラム単位で表現しただけです。

お客さまの工場のラインが止まっている(厳密には手作業で何とかしていたそうですが)ということもあって、急いで対策する必要があったので、2日くらい徹夜したと思いますが、3ヶ月経っても解決できなかったことをたった2日で解決できたのですから、思考整理の威力がどの程度かはなんとなくわかるかと思います。

すくなくとも、この時の問題に対しては、「思考整理」ができているかどうかが明暗を分けたのは確かです。私を含め、問題解決に参加したメンバーはプロジェクトの内容もシステムの仕様も、プログラムそのものもまったく知らない中で参加したわけですから、それだけのハンデがあってもここまでパフォーマンスに違いが出るのは、もうテクニックに差があるからだとしか言いようがありません。

テクニック…と言っても何も難しいことをしたわけではありません。

多くの関係者の意見や、あちこちに散らばっている情報・データを集め、整理し、現在置かれている状況や改善のための論点をわかりやすくまとめただけです。それによって、議論もまとまりやすくなり、短時間で解決の方向性が決まったのです。

たったこれだけです。

たったこれだけのことを、日頃から徹底して行い、誰よりも慣れ親しみ、いざという時に誰よりもスムーズに作業できるよう、鍛えていただけです。才能もセンスも必要ありません。ただ、日頃から継続していただけなのです。


ここから言えることは、単なる「整理」にも大きな価値がある、ということですね。地味ですが、情報の「思考整理」能力は費用対効果も非常に高く、効果抜群です。

私たちはIT業界、すなわち

 情報を取り扱う技術

に携わる業界に属しています。また、IT業界でなくても、「情報」を大量に取り扱うことを仕事にしている業種はどんどん増えていると思います。決して、プログラミング中心のソフトウェアを開発する業界だけに限った話と言うわけではありません。情報を取り扱うのであれば、ありとあらゆることがテリトリーとなっているかと思います。

思考整理するスキルは、そういった業種群の中でも非常に容易に修得できる部類のスキルの一種です。もちろん一朝一夕でできることではないのですが、だからと言ってこれを修得しない理由はありません。

創造力や発想力がなくても、才能やセンスがなくても、まず情報を整理して示せるだけでも、会社に貢献できる「デキる人」と評価される可能性があるので、できるだけたくさんの人が身に着けておくといいと思います。

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