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失敗を恐れてはなにも始まらない

高い山に登ったとき、霧のなかで自分の背中から太陽の光を受けると、前方の空間に大きなモンスターが見えることがあります。

これは「ブロッケン現象」と呼ばれるものです。

この現象にはじめて遭遇したとき、たいていの人は不気味だと感じるでしょう。しかしその原理は、後方から太陽の光が当てられることで、前方の霧のなかに自分の影が映し出されているだけのものでしかありません。

つまりその人が恐怖しているのは、単に

 その人自身がつくり出している自分の影に過ぎない

のです。
実はこれ、未来予測の苦手な人が、なんとなくこの先起こすであろう失敗に怯える様と似ていると思いませんか?そういう人は、だいたい「過去の成功」にしがみつきます。

失敗を恐れるがあまりに、過去の成功ばかり見て、未来を見ようとしないのです。今の日本(の保守的な人)はそういう傾向がすごく増えているような気がします。

失敗を恐れすぎるからこそ、失敗を招く

先行きが不透明なこの時代。

将来を案じて怯えている人の心理は、このブロッケン現象に似ています。
中国とアメリカの貿易摩擦、韓国や北朝鮮の動向、あるいはAIなどによる労働競争の影におびえて、リストラや先行きの生活に不安を感じている人たちの悩みの原因をたどっていくと、じつは自分を取り巻く環境(すなわち生きていくうえでの前提条件、制約条件)が変わっているのに、それに応じて変わることができない

 「自分自身がもたらしているもの」

だという結論に至ってしまうことが多々あります。

いまの時代、制約条件や前提条件が刻一刻と変化するのは当たり前です。
その影響を激しく受ける立場にいる人にとっては、自分自身が変わらないと生き残りがむずかしくなるのは必然ではないでしょうか。

私自身も、1年1年、自分の置かれる状況が徐々に変化しているのを実感します。役職とか、所属とかそういう話ではなく、仕事の内容1つとっても、2つとして同じ(ような)ことをしていません。ですから、ここ数年で積み上げたスキルや知識も多々あります。

もし、変化を嫌う、あるいは失敗を恐れるあまり、制約条件や前提条件が変わったことを恨むとすれば、それは筋違いというものです。


過去の成功も1つのベストプラクティス

しかし、"変われないこと"を悪いことだともいえません。
中には、変わりたくても変われない人もいるでしょう。

それに、なにも過去の成功が悪いと言っているわけでもありません。多くの選択肢の中から、"アタリ"を引き当てたのですから、条件が整えば同じ選択をするのは問題ないはずです。こうしたベストプラクティスは多ければ多いほど、成功確率を引き上げてくれます。

いままでの常識(定式)が通じるうちは、それを利用するのも人の知恵です。当然、有効活用すべきだと思います。

けれども、周囲の条件・状況が変わっているにもかかわらず、過去の選択肢、古くなった常識にしがみつき続けるということは、

 一見安全そうに見えるが、じつは自分の立場を
 一層危うくするだけの無謀な選択である

ということを、きちんと認識しておきましょう。
近々の例であげるなら、超大型台風が来てるのに、避難警報が発令されているのに、「前は大丈夫だった。今回も大丈夫なはず」と言って非難せず、最終的に濁流にのみこまれてしまうのと同じです。

あるいは、パーキンソン症候群と似た症状もあり、医師は「運転は許可できない」と伝えられていたにもかかわらず、「自分は大丈夫」と運転したせいで、池袋にて母子2人を轢き殺した飯塚氏と同じです。


IT業界でも同じ過ちが繰り返される

ソフトウェア開発などにおいても同じことが言えます。

過去の成功体験にしがみついて、次の開発でも前提条件や制約条件を見ようともせず、無条件なまま同じ方法で進めようとすることが多々あります。しかし、量産開発でもない限り、1つとして同じ制約条件で開発することはありません。

それがBtoB(Business to Business)と言うものです。BtoB開発は、言い換えれば「オーダーメイド」です。ユーザーごとに特製の異なるニーズがあり、オーダーごとにプロジェクトチームを作るため、2つとして

 まったく同じユーザー(顧客)
 まったく同じニーズ
 まったく同じチームメンバー
 まったく同じ条件
 まったく同じ時間軸

等、すべてが同一のプロジェクトになると言うことは決してありません。にもかかわらず、ちょっと似てるというだけで、過去の成功体験とまったく同じプロジェクト運営をしても、必ず同じ結果になる保障はどこにもありません。

参考にするのはかまいませんが、常に様々な状況を加味して、「新規」プロジェクトに挑む慎重さがないまま、過去の成功や安定にしがみつくということは、むしろプロジェクトとして失敗する確率が跳ね上がるということを知っておかなくてはなりません。

せめて、

 「前回と同じ方法で進めても、本当に問題がないか?」

と言う問いに対して、様々な角度から検証し、顧客に合意をいただき、さらには進めながらも計画と実績の乖離がないかをつぶさに観察しながら、慎重に進める気概が無くては、成功できるものでも成功することが困難になることでしょう。

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