プロジェクトにおける「品質」とは
この"品質"という言葉は、実は人によって解釈が大きく異なります。
たとえば皆さんは、「高品質の自動車」と聞いて、どのような自動車を想像しますか。
燃費が良い自動車
排気ガスが少ない自動車
人身事故が起きにくい自動車
10年間走行しても壊れない自動車
最新鋭のカーナビや自動運転機能が付いた自動車
等、人によって答えが異なることでしょう。これはそもそも『自動車に何を期待するか』が異なるためです。自動車を移動するための道具としてとらえる人、ステータスシンボルとしてとらえる人、趣味の1つととらえる人など、さまざまな人が多様な期待をした結果、異なる品質が定義されることになります。
PMBOKでも、"品質"とはアメリカ品質協会の定義を引用し、
「本来備わっている特性がまとまって、要求事項を満たす度合い」
と定義されています。この中の「要求事項」が先ほどの「自動車に何を求めるか?」に相当します。
ということは、プロジェクトの品質とは、
「ステークホルダー(主にお客さま)が、
プロジェクトに何を期待するか?」
に依存するため、プロジェクトスコープにも密接にかかわりを持っていることが容易に想像できます。
また、この要求事項には潜在的なものも含まれるので注意が必要なのですが、「お客さまがそういったから」と、明示的に謳われた仕様さえ満たせばいいと思っている受動的なエンジニアのせいで、日本ではプロジェクトマネジメントがなかなか浸透しません。
品質を管理するとは?
品質の管理を意味する英語には2通りの表現があります。
1つは、Quality Management(以下、QM)。
もう1つが、Quality Control(以下、QC)です。
これまで一般に日本製の製品は品質が高いといわれてきましたが、これは"不良品が少ない・壊れにくい"ことを指していました。不良品を出さないようにするために、テストを厳しく行ったり、製造の手順を変えたりするような活動をQC(日本的品質管理)といいます。
一方、成果物を生成するプロセスが適切に運用されているかを管理の対象とした品質向上のためのさまざまなプロセス、取り組みをQM(品質マネジメント)といいます。QMは、QCを含んだ品質管理の取り組み全体を指します。PMBOKでの品質管理の考え方は、ISO9000と同じく、品質を維持するためのプロセス全体を含みます。
プロジェクト品質マネジメントの知識エリアのプロセスは下記の通りです。
品質マネジメント方針の策定から
プロジェクト品質マネジメント知識エリアのプロセスは「品質計画」です。
これは、どのように品質マネジメントを進めていくかの方針を策定し、計画書にまとめていくプロセスです。まとめられた計画書は「プロジェクト品質マネジメント計画書」と呼ばれ、適用する品質規格や、それを実現するための方策などが記述されます。
また、このプロセスのもう1つ主要なアウトプットして「品質尺度」が挙げられます。
品質尺度とは、品質管理をすべき対象がどのようなものであり、どのように品質を測定するのかといった運用基準を定義したものです。たとえばITプロジェクトの場合、バグの発生率などが挙げられます。
ただまぁ…品質の尺度は1次元的に見ていると必ず失敗します。
確かにバグ…不具合の発生率は分類分けして傾向分析する1次情報にはなります。ですが、それだけでは「で?」と言われるだけです。私なら
①不具合の分類別発生数
②作りこまれた工程ごとの分布
③原因別の統計
あたりを絡めて分析します。
成果物の品質を確認する
次に、「品質管理」プロセスを説明します。品質管理プロセスの役割を単純にいうと、“成果物の品質を確認すること”です。従って、主要なアウトプットとして「確認済み要素成果物」が含まれます。
プロジェクト・チームはこの品質管理のプロセスで、一般的なツールを使用します。
たとえば、管理図、特性要因図(フィッシュボーンダイアグラム)、パレート図などのQC7つ道具をはじめ、検査やレビューなどのツール、技法を使用します。
品質マネジメント活動全体を監視する
「品質保証」プロセスは品質マネジメント活動全般を監視し、無駄をなくしていくための活動です。
トヨタ自動車の「カイゼン」活動に代表されるように、プロジェクトの活動が適切なプロセスを踏んで行われているかを監視し、継続的に無駄を排除するためにプロセスの見直しを行います。その代表的な技法が「品質監査」です。
品質監査は品質マネジメントの活動が、プロジェクトの方針や手順などに従って行われているかを第三者がレビューし、プロセスを改善するための提案を行います(アウトプットに提案済み是正処置が含まれます)。
また、ツールと技法に、「品質計画のツールと技法」「品質管理のツールと技法」と定義されているように、このプロセスは品質マネジメント全般にわたる活動であることが分かります。
いただいたサポートは、全額本noteへの執筆…記載活動、およびそのための情報収集活動に使わせていただきます。