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自己肯定感を育む仕組み

世の中には年明けに「ドーンと落ち込んで、やる気を失って失速する人」と、「1年の区切りを活用して、心機一転気分よく行動できる人」が存在します。

私が所属するIT系…特にB2BのSIerで働く人の中には前者のようにやる気が出てこない人も多いかもしれません。3月末にリリースするような開発プロジェクトは逆算すると年末年始ごとが一番のピークでヘトヘトになってしまっているケースも多いからです。

もちろん優秀なプロジェクトマネージャーの下で従事していると何も問題はないんでしょうけど、プロジェクトマネジメント専門の会社ができて、しかも右肩上がりの急成長!みたいな企業が案外多いほどに、一般企業におけるプロジェクトマネージャーというのは肩書だけ…ということも珍しくありません。

特にIT企業では

1~2年:プログラマー、テスター
2~5年:エンジニア
3~10年:リーダー
5~10年:プロジェクトマネージャー

という叩き上げで出世魚のように徐々に任される領域が変わっていくキャリアパスが一般的に多く、しかもその間、適切な教育・指導を受けることはほとんどありません。

ちょっとしたスポット教育はあるかもしれませんが、その後のOJTでしっかりとプロジェクトマネージャーとしての専門的な育成をしてもらうことはほぼないと言っていいでしょう。私の知る限り、大手~中堅のSIerで実施しているという話はほぼ聞いたことがありません(一部のよほど優れた上司のもとでは行っているかもしれませんが…企業として取り組んでいるという話はまずありません)。

結果、11月~年末年始あたりというとプチ炎上~炎上するプロジェクトも多く、疲弊しきってるエンジニアももはや恒例と言わざるを得ないくらい毎年眺めてきました。


さて。

最初からちょっと脱線気味で始まってしまいましたが、これをプロジェクトではなく個人レベルで見てみましょう。

年明けに限った話ではありませんが、なにかしらの契機に一念発起しようとしてうまくいかない原因の1つに、自己肯定感が低い(高くならない)ことがあります。

自己肯定感とは「自分はダメだ、自分にはできない」と自分を否定している状態…の反対です。自分に自分でOKを出せている状態ともいえます。

自己肯定感が下がっていると自分に自信が持てず、必要以上に人と比較し、人からの評価が気になってしまいます。結果的に相手の意見や言動に振り回されることが多くなります。そうやって人からの反応に振り回されているうちにさらに気持ちが萎えていく悪循環に陥ります。

自己肯定感の有無に関わらず、相対比較を主としている人は一般的に"心が貧しい"と言われています。

 「隣の芝生は青い」

という言葉があるように、絶対的に見れば自分もそれほど悪い状況でなかったとしても、他と見比べた時にほんの少しでも自分より良い部分があるとすべてが羨ましくなってしまうものです。

ある意味でキリがない貪欲さが旺盛ということなのでしょうが、そういう人に限って自己肯定するために常に自分より下の人を見て満足する傾向もあったりします。

結果、自分磨きが疎かになり、成長が滞りはじめ、結果や実績にもそれが見えてくるようになります。そうなると、評価や待遇も自分より下と思っている人に抜かされ、また相対比較をはじめ隣の芝生が青く見える…という負のスパイラルに陥るわけです。

さらに自己肯定感が下がった状態で、何か新しいことをはじめて思うように結果が出ないと「やっぱり自分にはできない」「自分には無理」と自分を否定する気持ちが強くなります。

結果的に、ますます自己肯定感が下がってしまいます。そうなると新しいことに挑戦しようとしても、ネガティブな気持ちばかりが出てきて何もしたくなくなります。

やらなければいけないこともそのまま先延ばししたり、たとえ取りかかっても及び腰になってしまうのでミスが起こる…こうして何もかもうまくいかない負のスパイラルに陥っていくのです。

一度、負のスパイラルに陥ると、さらに自己肯定感も下がり、気持ちもなえます。

そうしてますますネガティブになっていきます。

何もやりたくない、何をやってもどうせ失敗すると考えるようになるのです。

そして、行動が止まります。

すると本当にやりたかったことや自分の好きなことすらできなくなり、ますます気持ちは落ち込み、さらに自己肯定感が低くなってしまいです。

「自己肯定感が低いままの人」には残念な共通点があります。
それは、なんとなく陥っている思考パターンです。

気合い系

「年明けだから頑張らなければ」

と、体調不良や睡眠不足、過労などを無視してとにかく「気合い」で頑張ります。
自分の頭や心を納得させることなく空元気で進めるので、無計画となりがちで疲労感もひとしおです。

年明け3日間くらいはロケットスタートしたおかげで思った通りに過ごせるかもしれません。そのため「今年はいけるのでは」「今年は過去最高の1年になりそう」という期待が高まります。

ですが、仕事始めを過ぎたあたりから、疲労感・疲弊感から

 「何もしたくない」
 「集中できない」
 「誰にも会いたくない」
 「どこにも行きたくない」

というネガティブな状態になり、結果的に自己肯定感を下げてしまいます。
そうならないための余力が残っていないのです。無計画ゆえに。

論理的ではなく、1年と言う長距離マラソンにも似たレースのそのスタートから気合だけで乗り切ろうというペース配分も何も無い無計画なダッシュをしたせいでこうなります。


あれもこれも系

新しい年を迎えて「あれも、これもやりたい」と考える人は、「さあ、心機一転、最高の年にするぞ!」と、夢も希望もいっぱいで1年をスタートすることができます。

しかし、実現性を考えずに「あれもこれも」すべてをしようとするため時間に追われ、一向に減らないTo Doリストを見てやる気を失っていきます。言語化/図表化すると急に現実が見えてきて萎えてしまうのです。

頑張っているはずなのに、本当にやりたいことに取りかかる時間がないまま疲労感、焦燥感、虚しさとともに1日を終えることが多くなり、気が付いたら自己肯定感を下げてしまっていることも多いのではないでしょうか。

目標を立てるのはいいことですが、目標を目標のままにするのでは「絵に描いた餅」でしかありません。

プロジェクトマネジメントの説明でも幾度となく話している通り、目標を現実のものとするには緻密な計画が必要です。現実的な計画と計画通りに進める努力とがあって、初めて目標は達成できるのです。

無計画で、無謀な目標が達成できると思い込んでいる方がおかしいのです。


あきらめちゃう系

新しい年を迎えたものの、体調不良や正月ボケなどでスタートダッシュができなかった人に多いパターンです。

年始に無理にスタートダッシュしなかったおかげで、余力はあります。
今からマイぺースで行動し始めれば、成果を出すのに十分な時間はあります。

ですが、年明けから順調に活動している人を見て焦ってしまいます。
そして気持ちに負けて、諦めてしまうのです。

「もうダメだ。今年はもう終わった」

と、年明け早々に諦めてしまい、夢や目標実現するために必要な努力から逃げてしまいます。年始に出遅れたことをきっかけに、自己肯定感を下げてしまうのです。

そもそも『目標の実現』『他人との比較』はセットにする必要がありません。

「アイツより高い評価を受ける!」と言った目標であれば諦めるのもわかりますが、本当に相対的な比較評価を受けたいのであれば新年早々だらけている時点で本気さが感じられません。『目標の実現』は常に自分の中で持っておくと良いでしょう。


先延ばし系

正月休みを満喫された方に多いかもしれません。

年末年始はマイペースで過ごしたので、スタートダッシュに出遅れます。そこで自己嫌悪に陥ったり、焦らないのはすばらしいと思います。

ですが、

 「まあいいか、今年は始まったばかりだし4月から頑張ればいいや」
 「成人の日までは…」
 「梅雨明けから頑張ろう」

などと、行動を先延ばししているうちにあっという間に1年が過ぎてしまいます。

結果、大事なことを先延ばしにし、年を重ねても何の代わり映えしない自分にうんざりして自己肯定感を下げてしまいます。「やるべきこと」よりも「やりたいこと」、「正しいこと」より「楽しいこと」を優先して後で後悔する人によく見受けられる傾向です。


自己満足系

「1年の計は元旦にあり」ということで仕事もプライベートも、とにかくいっぱい目標を立てます。目標を考えているときは「今年こそ!」と、イキイキとしているのです。

何よりも、年明けにちゃんと目標設定できた自分はすばらしいと思えてきます。

ですが、「夢や目標を立てただけ」で満足してしまいます。

正月休みが終わる頃には、あれだけ夢中になって立てたはずの目標をあっさり忘れてしまう人もいます。目標を立てっぱなしにして、目標を実現するための行動をとらないまま1年が過ぎていきます。結果的には1年のピークが正月休みだったということになり、自己肯定感を下げてしまいます。


解決法

こうした思考の癖は、誰もが持っているものです。

とりわけ、「あの人だから」とか「一部の人にしか」と言うわけではありません。人間社会と言う環境が育むものですので、一律みなさんの中にも同じような思考はあるでしょう。

では、こうした思考の癖を修正し、充実した1年を過ごすためには、今からどうすればいいのでしょうか。

実は、これらのすべてに共通しているのが「無理をしている」ということです。今の自分の状況や現実を無視して「新年だから」「年明けだから」「平成最後だから」と言い聞かせて、無理やり現実を変えようとしているのです。

登山にたとえると、

まだ登りきっていないのに「新年だから」という理由で一気に頂上に行こうとしたり、装備が整っていないのに「正月だから」という理由でいきなり富士山に登ろうとしたりしている

のと同じです。イベントの勢いにまかせるだけで準備も計画もなく、現実が見えていないまま無策で猪突猛進をしているようにしか見えません。

新しい年を迎えるこのタイミングでまず必要なのは、無理に自己肯定感を上げることではありません。自己肯定感は、無理をしなくても自然と上げることができます。

方法はいろいろありますが大別すれば2つだけ。
もちろん正月という勢いに任せるのではなく

  • 過去の自分を振り返る

  • 客観的に成功する道筋を立てる

たったそれだけです。

みなさんの中にも思い当たることはないでしょうか。

たとえば、多くの人は過去に"自然と"なんとなくやる気に満ちあふれ、思わず行動していたときがあったことすら忘れてしまいがちですが、意識して努力したことや無理にでも頑張ったことなどは鮮明に覚えていたりします。

誰でも「自分がうまくいっていたとき」「困難な状況にもめげずに克服できたとき」「達成できたとき」などを思い出すことはできるでしょう。

その時を改めて振返ってみて、"自然と"やる気に満ち溢れ、無理なく行動できていたことは一度もなかったでしょうか。

それらを思い出して再体験すると、

 「こんな自分でも、できていたときがあったんだ」
 「自分にもいいときがあったんだ」
 「そういえば、あのときの自分はよく頑張ったな」

などと自己肯定感が自然と上がっていきます。過去の自分を振り返り、追体験させることで気持ち的な自己肯定感を向上させることが可能になります。

一方で、過去の自分に頼らない方法もあります。

世の中にはAさんでも、Bさんでも、Cさんでも、誰がやっても同じことをすれば同じ結果に至る…と言うものはいくらでもあります。

たとえば、電子レンジを使って調理する際にまったく同じ操作をするとして

 Aさんがボタンを押せば爆発し
 Bさんがボタンを押せば付近一帯が停電し
 Cさんがボタンを押せば蒸発する

なんて動作が変わることはあるでしょうか。
ありませんよね。同じことをするのであれば、同じ結果になるだけです。

同じように、仕事の中でもまったく同じことをすれば全く同じ結果が得られるものは少なくありません。特にプログラムは作成する人がだれであれ、書かれたとおりにしか動きませんから、書かれた内容が同じであれば書いた人によって動作が異なるということが決してありません。

客観的に見て『成功するための道筋』通りに進めさえすれば、努力ややる気に依存することなく確実に成功することが保障されるわけです。

まずは『成功するためにはどのような道を進めばいいのか』を確認し、その通りに進め定期的にその通りに進んでいるかをチェックしてみましょう。それだけで「道を間違えずに進んでいる」という肯定感が得られ、安心することができます。

定期的なチェックの中で「成功するための道と異なる道を進み始めた」と気付ければ、すぐに方向転換して過ちを正せばいいわけです。

この『成功するための道筋』こそ、

 計画

と呼ばれているものです。

計画は原則として目標を設定してから、その目標に合わせて立案するものです。そして目標とは"ゴール"のことを指しますが、に最初から失敗するゴールを設定する人はいないでしょう。必ず成功するゴールを思い描いているはずです。だからこそ計画は目標であるゴールから逆算的に設定していくことが求められているのです。

計画を立てる際にいきなり要件定義工程や設計工程から計画を立てる人もいますが、そう言ったやり方ではまず間違いなく"机上の空論"で終わります。

 「やりたいことをやる」
 「やるべきと思ったことをやる」

のではなく

 「目標に到達するために必要十分で、且つ最低限のことをやる」

のが計画です。

"deliverable"という言葉や、"要素成果物"という言葉の真の意味が理解できていれば、あるいは「WBS:作業分解構成図」という言葉の真の意味が理解できていれば、自ずとこの意味が解ってくることでしょう。

一昔前までは

 「WBSって何?」
 「野球のこと?」

なんてことを真顔で聞いてくる人がいる…なんて話も冗談抜きに存在していましたが、現在では比較的認知されるようになってきたと思います。

しかし、WBSを本当の意味で理解している人も、使いこなせている人も、現時点でまだ決して多くはありません。その証拠に、分解されたはずの要素プロセスや成果をすべて組み合わせてもゴールになっていないことが多いはずです。

ゴールから考えていないせいで、後々になってから「アレが足りない」「コレが足りない」なんてことになっていたりしないでしょうか。

WBSは、Work Breakdown Structure:作業分解構成図という名の示す通り、目標(ゴール)に対して分解したものです。裏を返せば、

 分解されたパーツを組み合わせれば、必ず目標(ゴール)になる

ものでなければなりません。

ですから、人の力量に関係なくWBSに求められている通りの要素成果物を作成していけば、最後に組み合わせると必ず目標(ゴール)に辿り着くようになっているはずです。

「努力」や「ヤル気」、「気分」と言った不確定要素満載のメンタル的な作用ではなく、こうした機械的な手順に従って進めても必ず成功する(させてくれる)仕組みを利用することで、

 「自分でもできる」

と言う自己肯定感を得ることが可能になります。

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