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誤りを誠実に謝罪する

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仕事をしていると、失敗してしまうこともあります。

そうしたときの対応の仕方が悪いと、相手を怒らせてしまったりする場合もあります。そのため、ITエンジニアにとってきちんと謝罪ができることはとても重要です。

何か失敗してしまったときに、表面的に謝るだけだとほとんどの場合には怒りの火に油を注ぐ結果になります。建設的に問題を解決できるよう、正しい謝罪の方法を身につけましょう。


ITエンジニアの仕事には、トラブルは付きものです。

どんなに一生懸命に仕事をしていたとしても、どんなに細心の注意を払っていたとしても、トラブルが起きてしまうことがあリます。

 「バグのないプログラムはない」

とも言われていますが、人が作ったものに完壁などということはありません。計画的に進めることや、細かい単位で確認を取って信頼できる部品を積み上げていくことは重要ですが、しかしそれでも起きる問題はあるものです。

そうした問題が起きると、顧客や上司から報告書や始末書を求められたり、ときには直接謝罪をしなければいけない場合があります。こうしたときに対処を誤ると自分や会社の信頼が大きく崩れてしまいます。

一方で、冷静に誠実な対処ができると周囲の信頼は逆にアップするかもしれません。謝罪は、自身の誠実さを示すバロメーターでもあるのです。

何のために謝るのか?

あなたは謝ることは好きでしょうか?
私は謝罪をすることも、させられることも、そして相手に求めることも大嫌いです。まず滅多にすることはありませんし、しなければならないケースに陥ることすらほぼありませんが、しかしそれでも必要であれば謝罪をします。

謝罪は、決して相手に許してもらうためにするものではないからです。

では、何のために謝罪をするのか?

それは、自分が「こうありたい」と思っていることと異なる状態になってしまったからです。自分の行為や判断によって相手が不利益を被ったり、相手を傷つけてしまったことについて謝意を形にするのです。許してもらいたいからするのではなく、謝意を形にしたいからするのです。

「相手に許してもらう」ことを目的とした謝罪は、簡単に見透かされてしまいます。許してもらえるまで続けようとするでしょうし、許してもらえなかったら不満を口にするでしょうから。

両親など、自分に無私の愛を注ぎ込んでくれるような相手なら別かもしれませんが、それ以外の相手には表面上の謝罪が受け入れてもらえることなど、滅多にありません。

「ごめんなさい」とただ唱えても、相手の怒りの火に油を注ぎ込むようなものです。

私が客側の立場であれば、

 「で、それで数百万、数千万の損失が帰ってくるわけ?」

と問い詰めたくなるんじゃないかと思います。「謝りたい」ではなく「許してほしい」と思う謝罪に込められた想いはその程度でしかない、ただの油です。

しかし、自分が「こうありたい」と思っていることと異なる状態になってしまったことを正しく認識し、相手が被った不利益を認め、相手を傷つけたことを理解している、ということを伝えることができれば相手は少なくとも話を聞いてくれるでしょう。


できるだけ早く決断する

人は「自分は正しい」と思いたいものです。

理屈ではわかっていても、「でも、私だけが悪いわけじゃない」と自分を正当化すれば、その一瞬の気持ちは楽です。周囲の誰かが「そうだよね。君だけが悪いんじゃないよね」と同調してくれれば、なお気持ちは楽になるかもしれません。

しかし、もしあなたが「こうありたい」と思っていた状態が実現できていないのであれば、自分を正当化して逃げ回っても問題は付いて回ります。

相手に被害を与えたり、傷つけたということについて見て見ないふりをしていても、その相手を見る毎に思い出すでしょう。自分を正当化してみても解決にはならず、喉元に骨がつっかえたような状態でずっと心の重しになってしまいます。

きちんと謝罪ができれば、そうした重しから解放され、自由になります。
すっきりした気持ちになることができるでしょう。

ですから、勇気を持って、謝罪をすることを決断しましょう。

謝罪をすると決断したら、そのときから自分が「降伏」状態になったことに気づくでしょう。謝罪をするときには全面降伏するくらいの決断が必要なのです。

この決断には勇気が必要です。

そして、少しでも早くする必要があります。先延ばしすれば、忘れられるのではないかという期待は、あなたの心の弱さであり、まったくの幻想です。

時間が経つほど、事態は必ず悪化します。あなたの心の弱さは、早急に解決しようとしなかったという1点において、必ず「悪意」として受け取られてしまうでしょう。


正直に行動や判断を振り返る

謝罪をすると決断したら、自分のどんな行動に対して謝罪が必要なのかを考えましょう。

まずは自分自身の行動や判断を正直に振り返って分析します。
このときには、新人教育等でも「報告」の中で説明していますように、心がけや感情ではなく『事実』を伝えるという習慣が役に立つはずです。深く決断し降伏状態になると、自分を正当化しよう、ごまかそうという気持ちは少なくなるはずです。

そうした気持ちが残っている間は、まだ決心がついていない証拠です。

決心をして、冷静に、そして正直になって自分の行ったことの事実を考えましょう。「正直になる」というのは、自分自身の心ときちんと向き合い、自分自身を欺かないことです。それを邪魔するプライド(=驕り)などと言うものは自分にとっても、社会にとっても、害悪以外のなにものでもありません。

これには、多少の恐怖感があるかもしれません。

自分が間違ったことをしたと認めることは、怖いことです。
しかし、完壁な人などいません。誰でも間違いを犯すのです。
ですから事実と正直に向き合ったら、まず誤った行動をした自分を許しましょう。そして、その償いが必要だということを認めましょう。

そうしないと、目が曇った状態のままだと「何を」「どのように」改めれば解決できるのか相手に説明できません。トラブル等の問題を起こしたとき、これは非常に致命的です。

トラブルである以上、大抵の場合は赤字化が勃発することになりますが、この致命傷はさらにその傷口を大きく抉ることになります。しかし人はこの「正直」というやつがなかなかできないのです。


この先の行動を改める

どんな行動が問題を引き起こしたのかがわかったら、あなたが問題に対して誠実に対応すること示す必要があります。

誠実に対応するというのは、

 二度とそれを起こさない対策を考え、それを実行する

ことです。

その対策が実施されることが確実だと思えれば、相手はあなたの誠意を認めてくれるでしょう。二度とそれを起こさない方法を考えるためには、論理的問題解決のステップが役立つはずです。

 Where
 What
 How

の3つのステップを使って考えましょう。
1分間マネージャの著者として知られるケン・ブランチャードは、
『あなたを危機から救う1分間謝罪法』の中で次のように言っています。

「1分間謝罪法は、降伏することから始まり、誠実であることで終わる」
───── ケン・ブランチャード


決意を伝える

考えがまとまったら、少しでも早く謝罪をしましょう。

謝罪のときには、自分が2度と起こさないという決意を持っていることを、より確実に伝えることが必要です。私は長く品質保証をおこなっていくうえでトラブルプロジェクトの解決に努めてきたためか、そのために「相手の予想を上回る誠実な対応」が必要と考えます。

一例として挙げるならば、次のようなことです。

・(相手の予想を上回って)極めて迅速に行動する
・(相手の予想を上回って)自分自身に厳しい処罰を下す
・(相手の予想を上回って)謝罪のための努力を示す
・(相手の予想を上回って)大きな償いをする

たとえば、直接会って謝罪するのと、電話で謝罪するのと、メールで謝罪するのとではどれが一番誠意が伝わるでしょうか?

本当に申し訳ないと思ったら、必ず会いに行って謝罪をするべきです。仕事では、距離が遠くに離れている場合もありますが、できるだけ迅速に行動するべきだと思います。遠方の人が、迅速に目の前に現れて謝罪すれば、それだけで決意が伝わってきます。

これが「相手の予想を上回る」ということです。

そして謝罪をするときには、これまでに考えた次の3つのことを伝えましょう。

①自分の行動が「こうありたい」と思っているものと違ったことを認める
②相手に不利益を与えたり、相手を傷つけたことを認め、償いをする
③同じ行動を繰り返さない方法を考え、具体的な改善行動を伝える


結果を求めない

謝罪をするときには、決して「相手が許してくれる」という結果を求めないことです。相手の被害が大きい場合や心が大きく傷ついた場合には、相手は謝罪を受け入れても許してくれないかもしれません。

それでも自分自身が過ちを認めていることを伝え、二度と起こさないということを約束するということは非常に価値があることです。

なぜなら、自らのなかで同じ過ちを他の相手に対して再発しないということに大きくつながるからです。

そして正直な気持ちを相手に伝えることは、相手を尊重しているという気持ちを表すことでもあります。それがお互いを信頼し、尊重しあえる関係に戻るためのスタートラインにもなります。

ちなみに、プロジェクトチームが起こしたトラブルを解決するにあたり、私はこれまで開口一番お客さまに謝ったことはありません。今後も基本的にないでしょう。

それは、先に述べたように速やかな解決が求められているからですし、なによりも自身に厳しい罰を下す誠意を見せる必要があるからです。決して謝りたくないからではありません(たとえば、徹夜で解決に勤しむ姿を見せるのも、その1つです。仮に自身や自部門が起こした問題でなかったとしても、実施します。それが誠意となるからです。 だからこそ問題を起こさない限り、そういった勤務状況になる必要がないのです)。

すべてが解決し終えた最後に、会社を代表して謝罪すればいいのです。

 謝らない方法を考えるのではなく
 誠意ある謝り方を身につけましょう

自分の非も認められず「謝りたくない」なんて思っている間はビジネスマン以前に、大人としても成熟していない証拠でもあるのです。

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