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同時同卓提供できないお店は嫌われます

宇宙一外食産業が好きな須田です。


飲食業を行っている方ならばほぼ間違いなくご存知の同時同卓提供ですが、知っているのにこれが何故か中々実現できていないお店が沢山あります。


原因はいくつかありますが、本にはその中でも最も多い原因と思われる厨房が原因の場合を取り上げております。

実は、私が経営していた中華レストランでも同じことが発生して、料理長と議論をしました。
たまたま彼とは同い年だったこともあり、わだかまりもなく変な上下関係もなくスムーズに話し合うことが出来ましたが、多くは料理人の方の考え方を変えるのは大変な作業だと思います。

実際に大変かどうかというよりも、そのことを議論すること自体に抵抗を感じている方もいらっしゃると思います。

実際に私も料理長と話し始めた時は、

「社長の言っていることはわかりますよ、でも、厨房の俺らからしたら、いっぺんに同じ料理を作った方が効率が良いわけですよ。何で何回も同じ料理を作らなきゃいけないのって思いますよ!」

今でもハッキリと覚えています、彼が発した言葉を。
彼が言う通り厨房スタッフの立場からしたら同じ料理を何回も何回も作るなんて、非効率で面倒だと感じて当然です。

まとめていっぺんに何皿分も調理した方が早くすむでしょうと考えるのは当然です。

実際にこの方が早い場合があります。
それは、料理人が数名揃っている場合です。

一斉に複数の料理を作れる場合には、同じ料理をまとめて作った方がいっぺんに複数のテーブルに料理を提供出来ます。

複数のテーブルから同じ料理を注文された場合は、一人がAを作り、もう一人がBを作り、もう一人がCを作りと、すると3テーブル分がいっぺんに提供されます。

但しこれにはいくつかの前提条件があります。

複数の料理人がいること、テーブルが違ったとしても同じ注文が入ること、同じタイミングで注文が入ることです。

実際には、複数の料理人を雇用しているお店は多くは無いです。
我社は一番鍋二番鍋の2人と若い衆がおりましたが、若い衆は麺担当でしたからまだ鍋は振れませんでした、二番鍋は麺の頭とあおりものの補助にしていましたので、実質あおり物は料理長が全て担当していました。

違うテーブルから同じ注文が入ることは稀です、同じタイミングで注文が入ることも稀です。
通常は入店され注文が決まったお客様から順番にオーダーが入ります。

ですから、料理長の言う「俺らからしたら」の論拠は実際の営業ではほぼ成立しない考え方であり、状況なんです。

その考え方は誰に教わったのか確認したところ、親方に教わったと言っておりました。
ある時調理人の方々が集まる会がありご招待されました。
我社の料理長の親方がその会の会長でしたが、良い機会だと思い同時同卓に対するお考え方を聞いたところ、やはり料理長と同じ論理を話してくれました。

料理長は“我が意を得たり”という面持ちでおりましたが、ホールでは何が発生していてお客様はどのような心理になっているのかを会長に説明したところ、
「そうなんですか、知りませんでした。ホールではそんなことが起きていて、ホールスタッフがそんな風に対応していたとは」

会長はもう30年以上料理長をなさっています、会長歴も20年、自分のお店を持っていて普段は誰も会長に指示を出来ません。

会長にも、その考えはどなたからの教えですかと聞いたところ、同じ答えが返ってきました。


親方に教わった!


会長が仕事を教わった昭和40年~50年代はまだ料理人も多くいました、賃金も今ほどの水準ではなく多くのスタッフを雇用していても経営は成り立ちました。

今は大きく状況が違ってきています。

会長が同時同卓を教わった時代のオペレーションでは、今の時代には活用できなくなってきています。

変化と進化が起きています、お客様の心理も大きく変化しております。

ですから、従来の考え方から脱却して新たなノウハウとテクニックを導入しないと生き残れません。

「俺らからしたら」は、通用しない時代です。

我社の料理長の素晴らしいところは、さんざん抵抗して悪態ついてふてくされて文句ばかり言いますが、最後にはニコニコして、

「わかりました! これからはその方法でやります おい、お前らも分かったか やり方変わったからな!」

と、シッカリと理解してすぐに行動を変化してくれるところでした。

あたかも自分で率先して気付いたかのように、自分自身に落し込んで行動を変えてくれるところが「この人は凄いなぁ」と、いつも感心していました。

そんな経験をしたことを元にこの記事を書きました。
同様の経験はクライアントのお店でも、街でも経験しておりますので、料理業界では恐らく一般化されている考え方だと想像できるので、あえて記事にしました。

以下が本文です。


法則12
グループでいらしたお客さまに同時に料理を提供できないお店は嫌われますよ!

・「同時同卓(同じテーブルのグループ客には料理を同時に提供する)」ができないと、
お客さまの印象だけでなく、経営効率も悪化します。
・「効率のよい調理法」は、事前の仕込み(下準備)がきちんとできていることで初めて実現します。
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「同時同卓」の可否が回転率と満席率を決める

 皆さんも次と同じ経験をしたことがあるではないでしょうか。
 仮に、取引先の方、同僚、あなたの3人でランチに行ったとします。あなたはAランチ、同僚はBランチ、取引先の方はCランチをオーダーしました。まず、Aランチが届き、そのあとすぐにBランチがきました。ところが、そのあと2分経っても、3分経っても取引先の方が頼んだCランチが出てきません……。
 取引先の方は気をつかって「どうぞお先に」と言ってくれるのですが、あなたも同僚も気が引けて、とりあえず間を埋めるためにとってつけたような雑談をはじめますが、ぎこちない雰囲気が漂います。
 近くを通ったホールスタッフを呼び止めて「Cランチはまだですか?」と聞くと、スタッフは「少々お待ちください」と言って厨房に向かいます……。
 最後のCランチが1つこないだけで、いい大人3人がそわそわした気持ちになったり、イラついたりします。
 Cランチが届くころには、先に来た料理は冷めているでしょう。仮に取引先の方のすすめにしたがって先に食べはじめていたとしたら、取引先の方は料理が届いたら先に食べはじめた2人に追いつくために大急ぎで食べるでしょう。
 こんな不快な経験をさせられたお店をあなたはひいきにするでしょうか?
 そう考えると、グループで来店されたお客さまの料理は「同時同卓」、つまり同じテーブルからオーダーされた料理は種類が違っても同時に提供されなければならないことがおわかりいただけると思います。私は、同時同卓は飲食店の基本だと断言します。

 実は、同時同卓はお客さまへのサービスというだけなく、お店の売り上げと利益の増大につながる重要なオペレーションです。
 たとえば、先にオーダーした1番テーブルのお客さま3人の料理を同時に出し、次にオーダーした2番テーブルのお客さま4人の料理を同時に出し、その次にオーダーした3番テーブルのお客さま3人の料理を同時に出し……とすると、食事を終えたテーブルのお客さまから順にお会計に進むので、各テーブルには次にいらしたお客さまをご案内できます。
 つまり、同時同卓で提供することで回転率を上げることができるのです。
 ところが多くのお店で、同時同卓ができていません。
 
料理が出てくるタイミングがバラバラだから、お客さまたちが食べ終わるタイミングもバラバラになってしまいます。なかなかテーブルが空きません。最初に商品が出てきたお客様たちはなかなか料理が揃わないから食べ終わらない。商品が出終わり食事がすむとこんどはいっぺんにお客様は会計に向かうために、今度はレジが渋滞する。
 レジ前の渋滞の対応にホールスタッフが追われると、新規に来店されたお客さまをまともにアテンドできず、バッシングもできていないから、ついつい「空いているお席にどうぞ」ということになり、結果的に満席率が悪くなります。満席率が悪くなるということはすなわち売り上げが悪くなるということです。


「同じ料理」ではなく「同じテーブルの料理」を同時に作る

 同時同卓を実現できない理由は、料理人(キッチン)側の事情です。
 たとえば、4人テーブルが10卓あるお店で、各テーブルにお客さまが3人ずつ座っていて、30食を提供するとします。そして、その30食が仮に料理A、料理B、料理Cと3種類だったとします。
 厨房には10卓分の伝票が並んでいます。
 すると、たいていの料理人は、1卓の料理A、3卓の料理A、7卓の料理Aといった具合に、料理Aから作りはじめます。そして、料理Aをすべて作り終えたら、次は料理B、料理Cに取りかかります。1種類の料理をまとめて作るほうが効率的だからです。
 ただ、これは料理人にとって効率的なだけで、お店全体にとってはどうでしょうか? 多くの経営者は、「まとめて作ったほう効率的」という料理人の言葉をうのみにして、料理を提供する順番をまかせてしまっています。
 ところがそうすることで、同時同卓ができなくなります。たとえば、あるテーブルのお客さまが料理A、B、Cをオーダーしたとして、最初に料理Aが届き、数分後に料理Bが、さらにその数分後に料理Cが届くとなったらどうでしょうか――先ほどの話と同じですよね。
 自分の料理だけ届いていないお客さまがどういう表情を浮かべて待っているかを見れば、料理人とって効率的であっても、お店にとってはよいことではないとわかるはずです。ですから、お客さまに支持されて繁盛したいのであれば、あなたのお店では、料理人がなんと言おうと、同時同卓提供のルールを徹底してください。


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