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【須田亜香里さんの軌跡】◆M33「会いに行けるアイドル」が会えなくなるとき

tanuki


　２０１９（令和元）年末に中国・武漢で発生した新型コロナウイルスは，瞬く間に全世界で感染を引き起こしました。

　このウイルスは，飛沫感染，すなわち，感染者が会話する際につばと一緒にウイルスを放出するという経路でも感染します。また，接触感染，すなわち，感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後，その手に触れた人や物にウイルスが付着するという経路でも感染します。

  しかも，症状が発症しない感染者でも他人に感染させることが可能なウイルスです。


　このようなウイルスの特性からすれば，「アイドルと握手し，会話する」というＡＫＢグループの握手会は，感染のリスクを持つイベントのひとつと言わざるを得ないでしょう。

　そのため，ＳＫＥ運営は，２０２０（令和２）年１月３１日，「ソーユートコあるよね？」の個別握手会の延期を発表し，その後，他の握手会も次々と延期となりました。

　この発表を受けて，須田さんは，翌２月１日，こんなツイートをしています。

「土日の握手会が延期になりました。
　もし私がウイルスを持っていて大切なファンの皆に…と想像すると凄く怖い。
　ファンの皆もそれは同じで、会いたくてもどう会うのがベストか分からないよね。日程は気になるけどよりいい形で会えると信じよう！
　今夜ショウルーム配信するね
　ウイルス関係ないもんね」【１】

　しかし，須田さんは，「握手会の女王」とも呼ばれ，神対応の握手で地道にファンを増やしてきたアイドルですから，須田さんは，最大の武器のひとつを封じられたことになってしまいました。でも，須田さんは，転んでもただでは起きませんでした。

　上のツイートにあるように，まずはSHOWROOMを使ってファンに呼びかけます。その後もツイッター上で「須田亜香里エアー握手会」を行い，参加したファン一人一人に丁寧なリプライを返していきました。もっとも，須田さんのリプライと「いいね！」が多すぎて，須田さんのアカウントが一時停止されるというオチもついてしまいましたが（笑）。

　その後，緊急事態宣言が発令され，外出の自粛が要請され，劇場公演すらも中止となりましたが，須田さんは，家の中で楽しむというテーマの動画・写真を次々と発信しました。例えば，名古屋市教育委員会の企画で，後輩の小学生に須田さんが語りかける動画が配信されましたが，その中で，須田さんは，「自粛」と言うと，すぐに「我慢しなければいけない時期」と言い換えて，小学生にも伝わりやすい言い方を工夫しました。【２】
　
　さらに，ＡＫＢグループ全体の企画「＃おうちで握手会」では，メンバーの握手会という設定の動画がツィッターで配信されました。この企画で，須田さんの動画（１分１７秒）は，最初，握手会でファンと向き合って握手している，という設定で始まります。しかし，５６秒ほど経過後，須田さんが「今日は特別に」と言うと，カメラの位置が変わって「お隣どうぞ」と言われ，あたかも，須田さんの部屋のソファーで須田さんの隣に座ったようなアングルで続きが始まります。【３】

　「オンライン」の握手会ということを最大限に利用したこのサプライズ付き動画は、ファンに好評で，広く拡散されました。また，ファンの中には，聴覚障害者のためにこの動画に字幕を付ける人【４】や，須田さんの言葉を英訳した字幕を付ける人【５】まで現れました。

　さらに，この動画を見た日刊スポーツの記者は，「「おうちで握手会」の須田亜香里（２８）動画には，「さすが釣り師！」と改めて感心した。」，（初めて須田さんと握手したとき）「実は，不覚にもドキドキしてしまったのだが，動画を見てその記憶がよみがえってきた。今振り返ると，記者も釣られていたということかもしれない（笑い）」と記事に書いてくれました。【６】

  他方で、須田さんは、新聞連載でも、ファンや一般の方々にアピールし続けました。中日新聞の連載「てくてく歩いてく」は、この時期に、1人のアイドルの活字メディア連載としては、異例の、連載100回を超えました。

　でも，アイドルはファンからの応援を力に変えて活躍します。ファンの応援を直接見ることができない須田さんは，こんな言葉も洩らしました。

　「皆に会いたい□」【７】

　（注，□の部分は抜かれたコンセントの絵。ファンの応援を充電できていないというメッセージでしょうか？）

　「好きでいてくれる人がいることがいかに力になるか、自分の存在や頑張りを力に変えてくれる人がいることの喜び、その尊さを噛み締めてる。
でも、離れてるからこそより一層感じ取りたい！と思って頑張れてるけどね」【８】

　このツイートには，ファンからの「私も会いたい」というリプライが多数付けられました。
　須田さんとそのファンは，ソーシャルディスタンスを守っていても，心のディスタンスは近いままだったようです。

  ところが、この時期、ファンには極秘で、須田さんに関するあるプロジェクトが進行していました。それは、この年の6月1日、明らかにされます。

（◆Ｍ３４に続く）

＜ソースノート＞
【１】https://twitter.com/dasuwaikaa/status/1223447920277540865
【２】https://www.youtube.com/watch?v=FlZFWzHoN3s&feature=youtu.be
【３】https://twitter.com/ske48official/status/1258618882274865156
【４】https://twitter.com/naruch8/status/1258880105708834816
【５】https://twitter.com/crew_ske48/status/1259303009726521344
【６】「おうち時間で再確認した須田亜香里の「釣り師」ぶり」
https://www.nikkansports.com/entertainment/akb48/news/202005140000592.html
【７】https://twitter.com/dasuwaikaa/status/1264114490984984576
【８】https://twitter.com/dasuwaikaa/status/1264115449635061760

なお、この年の11月に握手会の代わりに開催されたAKB48オンラインお話し会では、須田さんは、空いた両手を使ってファンのニックネームや会話の内容を全員分メモする、という新しい試みを行いました。


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