春を待つ
囁かれるばかりの
誰かの泣いている声を
そっとてのひらでつつみ
雪の下に埋めた
戸惑いを隠すように
深く
目を覚ました部屋で
ゆるくまるみを帯びた肩に
ひんやりとした名残
夢を見ていた
渇いた喉に種がある
さりさり
削れてしまう前に
手紙にしなくてはならない
掠れたインクであることに
少しだけ安堵しながら
名も知らぬ背中に声をかける
芽吹いた頃のひと呼吸が
いつか雪を溶かして
花になるのを期待した
もう泣かないですめばいいのに
と
てのひらをまた すりあわせ
空へはなつ動きで
耳をすませる
遠くへ行くための朝を整え
真白の道に足跡を残していく
ここまでお読みくださり、ありがとうございました