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頑張り屋さん


母を見ていると色んな感情が湧き上がる。

それはいつもなら言葉にできる感情とは違う。とっても複雑に絡み合っていて説明することはとっても困難だ。

母が大好きで、母の笑う顔が好きで、ずっと笑っていてほしい。
けど、ひとりの人間にずっと笑顔でいなさいというのは酷すぎる。私はずっと笑顔でなんかいられない。「私があなたに視線を向けたら笑いなさい」といえるのはエリザベス女王くらいだ。

不安になるのだ。母が笑っていないと。これは完全なる自己中心的な考えだ。自分の不安を解消させるために母に笑っていてほしいという何とも身勝手甚だしい話である。

母は頑張り屋さんだ。何でも自分ひとりで沢山のことをやる。仕事も家事掃除も子育ても犬のことも。本当に何もかも全部やる。私も手伝えることはやるけど、それを超えて沢山のことをやってのける。それを見ていて辛くなることがある。
今すぐやりなさいと言われたわけでもないのに、何かに追われるかのように色々なことをこなしていく。ひとりで駅伝をやっているのを見ているような気分になる。
「自分の時間がなくて平気なのかな?」「体調悪くならないかな?」「機嫌悪くならないかな?」「キャパオーバーにならないかな?」心配ばかりが募る。

母は笑顔で「大丈夫だよ」と言う。ほっとしてしまう。その一瞬ほっとしてしまった自分を殴りたくなる。「大丈夫なわけないよ、お前は母親がやってること全部自分でできるのかよ、できねーだろ。」そう頭では言うものの、やはり母の言葉に甘えてしまう。

小さい頃から母を見てきてわかるのは、母は自分の気持ちを言葉を使ってうまく表現できないことだ。そして自己流のストレス発散方法も見つけていないのではないかという心配がずっとある。
何より、自分の気持ちを蔑ろにしているという自己理解がないように思う。
それにどっぷり甘えてきた自分も最低だが、母には自分自身をもっと可愛がってあげてほしいと思う。

母の生い立ちを知っているから、今のような人格形成になったのも理解はできるが、今は過去ではないから、もっと自由に生きてほしいと思う。何にも囚われず、リミットをつけず、自分を好きなもので満たしてあげてほしい。

私という存在は母にとって、自由の足枷になっている気がしてたまらなく怖くなる時がある。
母は私といて楽しいと言うが、果たして本当だろうかと懐疑的になる。
そのループにはまると、結局のところ私も束縛されることが嫌いなので、「もう考えるの嫌!ひとりで生きるのが一番良いの?!」とまるで破滅へ向かうかのような思考に陥る。これは危険なパターンだ。

私はひとりでは何もできないくせに「ひとりが好きだ」と言い続けてきた。
その言葉が言えるのは、確実的に自分を愛してくれている誰かが居るから言える言葉なのだと大人になって気付いた。家族が自分を愛しているとわかるから、甘ったれた言葉が平気で言えるのだ。

ひとりの時間が必要なだけで、ずっとひとりでいたいわけではない。
何か興味深いことや発見があれば、やっぱり好きな人とシェアしたいと思うし、それは根底に愛があるからだ。

愛はいちばん大切なもので、時に人を狂わせてしまう。
友人も愛欲しさゆえに、ずっと葛藤し続け、若くして逝ってしまった。
誰からも愛されれば良いのか。それは個々人によって違う解釈があるのは百も承知だが、『特定の”この人”から愛されなければ世界が崩壊してしまうこと』が世の中にはある。

それは実に悲しいことで、周りの人が介入できる隙間もないのだ。
もしくはもう少しだけ時間があれば、経験を積み重ねることができれば、友人は今もここにいただろうか。

これだけは未だに答えは無いし、ある必要性もない。友人の気持ちを尊重したい。

だけどやっぱり会いたいよ。身勝手でわがままだから言える言葉だよね。
だけど好きだから。あなたを見つめる時、他の友人には無い特別な感情があったことをフェードアウトさせたくないと、身勝手な自分が叫び続ける。

愛しているから心配する。

それが前提にあるなら、私は目の前の現実を愛しているってことなのか、なぁ?と思った。

泣き叫ぶ子供、飼い主に叩かれた犬、歩きづらそうな人、忙しそうな店員、無理して自分を演出していそうなテレビの人、挙げればキリがない。
見ると、心配になってしまう。

これは愛?

みんなが幸せならいいなぁと思う。これ本当に。

私はたくさん持っていて、満たされているはずなのに、なにか満たされない。
何が手に入れば満たされるのだろう。まだ生きていかないとわからない。その満たされない歯痒さを、母に笑ってもらうことで満たそうとしている。

それはあってはいけないことのように思う。だから、頑張るね、私も。
お母さんはもう頑張り屋さんを卒業していいんだよ。もう十分だよ。

と言っても、動き続けるんだろうな〜。これからも。
母の性質と割り切って捉えたほうが私も楽になるのかな。
なんでも楽に楽にって。たまには苦労しなさい、自分。

でも人生、楽しいって大事なんだよな〜。

着地点はいつも通り無いです。ひとりごと。

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