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他の劇団紹介コーナー【劇団うつろろ】5月の新作公演『ブラックムーン』を取材しました!

「不器用な生き方しかできない人たちを描きたい」

そう語ってくれたのは越智良知さん。SUBUTA!にも旗揚げ公演から関わってくれて、今では劇団「うつろろ」の脚本・演出として活躍されている方です!

今回は5月末に行われる、新作『ブラックムーン』について取材させていただきました!
彼の言う「不器用な人」とは?何故それを描きたいのか、普段なかなか聞けない作品に対しての思いを赤裸々に語ってくれました。

P…取材者(豚P)
おち…越智さん

創作秘話:タイトルが「ブラックムーン」になった意外な理由

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P
今回は取材の時間をもらってありがとう!

おち
いや、こちらこそありがたいよ!よろしくね。

P
早速だけど、今回の新作は『ブラックムーン』ということで、これってどんな意味が込められてるの?今までのうつろろさんのタイトルとは違う印象があるんだけど。
(『生きてたり、死んでたり』とか『ハイ、バイバイ』とか)

おち
実はこのタイトル自体は1年以上前からあって。前回公演の当日パンフレットに載せるために、次回公演のタイトルとして「(仮)」としてつけたもので(笑)。
だからすごく正直に話をすると、なにかの意味があってこのタイトルを付けたわけじゃないんだよね。

もともとおれは台本を考えるとき、最初にタイトルから考えるんだけど。これもただ、自分のなかで引っかかる言葉をタイトルに置いてみたって感じで。
ただ公演がコロナで何回か流れて、改めてどんな話をつくろうかって考えたとき、頭のなかにまだこの言葉があったんだよね。

だったら、この言葉から話をつくってみようかってことで。この言葉の響きからイメージを膨らませていって書いたっていう。
だから明確な意味を持っているっていうよりは、月の出ない夜、光に照らされない影に覆われた人たち、という芝居全体の空気感を表しているって言った方が近いかもしれない。

※ちなみにブラックムーンとは「1ヶ月の間に新月(月が夜空に現れない日)が2回ある月」という意味だそうです(諸説あり)

「殺人」が人の人生に与えるものとは…?

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P
へぇーそうなんだ!ちなみにどんな内容なの?

おち
一言で言うのは難しいんだけど、「殺人という出来事から、影をまとった人生を歩まされることになった人たちの物語」…かな。

設定を簡単に話すと、3兄弟の兄が12年前に殺人を犯してしまうんだよね。母親の交際相手からひどい暴力を受けていて、兄弟を守るために。

で、兄は少年刑務所に服役するんだけど、出所した後に家に帰らず、行方をくらますんだよね。その兄の帰りを待ち続けた12年後から、物語ははじまる。

P
なんかすごい設定だね…。

おち
ちょっと複雑な設定かもね。あとそれに加えて、その兄が殺した妹と、主人公である3兄弟の妹が一緒に住んでいて、兄の帰りを待っているという(笑)。そこに兄が帰ってきて、さあどうなるみたいな。

殺人を犯した人、加害者遺族、被害者遺族と、いろいろなバックグラウンドを持った人たちが出てくるんだけど、社会的なメッセージ性のあるものを描きたいわけではなくて。
断ち切ることができない影を過去に背負った人たちが、自分たちの人生をどう生きていくか。それぞれの姿を描きたいんだよね。

普通に生きれない「不器用な人」とは?

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P
なるほど…。中々重い内容だけど、面白そうだね!
ちなみに、その中でどんなテーマを描いてるの?

おち
これはおれの作品すべてに共通することでもあるんだけど、「生きることに不器用な人がどう生きるか」というのがテーマかなと思う。

P
不器用な人…?具体的には?

おち
一般的に"普通"とされている生き方ってあると思うんだよね。普通に会社に勤めて働いて、結婚して、家族を持って、とか。

これはおれ個人の考えだけど、そういう生き方って間違いが少ないし、ある意味幸せになれる、一番シンプルな近道じゃないかなって思っていて。
ただなかには、そういう"普通"ではいられない、器用には生きられない人もいる。

だからこそ、自分の存在を肯定するために、なにかにすがって、固執してしまったり。
いまの状況から抜け出すことを必死に拒んでしまっている人もいるんじゃないかなと思っていて。そんな人たちを不器用だなと思うんだよね。

P
抜け出すことを選ばないっていうのは、自分が良くない状況だとわかってるけど、その悪い状況に依存している?みたいなこと?

おち
そうだね、そういうのも近いかも。

まあ、おれが書く物語に出てくる人たちは、極端な人たちが多いんだけど(笑)。おれは不器用な人たちが必死に生きる姿が、どこか愛おしいと感じてしまう。そういう人たちを描いてみたいんだよね。

ただきっと、"普通"に生きられている人たちも、息苦しさや自分自身の不器用さを感じていることもあるはずで。そういう人たちがどこか一つでも共感して、少し心が軽くなるような、背中を押されるようなものになればいいなと思ってる。

P
ありがとう。どんな作品になってるのか観るのが楽しみだね。

おち
特に劇団としても、今回の作品は一つの代表作になるんじゃないかなと思っていて。ぜひ多くの人に観てもらえるとうれしいな。

コロナ禍だから気づけた、大切なこと

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P
ちょっと話変わってもいい?今コロナで稽古を進めるのも大変だと思うんだけど、やっぱりきつい?

おち
まあいろいろ大変なことはあるよね。もちろん感染対策は徹底してやってるんだけど。
稽古場として使えるところが限られたり、マスクしながらの稽古だから表情が見えづらかったり。いつもと同じようにはできないよね。

大変なのはやる前からわかってたし、実施するかしないか迷ったりもしたんだけど、ただやっぱりやると決めてよかったなと感じられてるんだよね。

P
そうなんだ、どんなところ?

おち
すごくシンプルなんだけど、やっぱり演劇っていいなって、改めて感じられたんだよね。

同じような人も多いと思うんだけど、おれもここ1年くらいあんまり人と会わないって生活を送ってて。
久しぶりに誰かと集まって、リアルでものをつくるということをやったんだよね。

特に今回は、というかいつもなんだけど(笑)、稽古がはじまるときに台本は途中までしかなくて。
稽古を進めながら、出てくれる役者のみんなにセリフについてどう思うかだったり、演じる役についてどんな人だと思うかだったり、いろんな意見をもらいながら書き進めていったんだよね。

その結果としておれ自身、すごく良いものができたなと思ってて。これは自分ひとりの世界ではつくれなかったものだなぁと。

さらにその台本もただの言葉で、平面でしかないんだけど、それをみんなが一人ひとりの人間として息を吹き込んでいって、現実の世界に、立体的に世界が広がっていく。

ひとりじゃない、みんなで同じ空間を共有して一つの物語をつくっている。この時間がすごく幸せだなと感じられたんだよね。

P
コロナだからこそ、皆んなの力を借りて創作することにすごい意味があったんだなと思えたよ。

おち
そうだね、今もみんなで作品を磨いていってるから、お客さんにも良い話を届けられると思う!


最後に劇団うつろろからお知らせ!

P
ここまで色々話してくれてありがとう!最後に、読者の方々に宣伝をどうぞ!!

おち
番宣の俳優じゃないんだから(笑)

でもそうだね…『ブラックムーン』を見た人たちには、あーこういう考えや思いを持ってる人がいるんだなとか、自分と似てるなとか、こう考えてもいいんだとか、少しでも何か感じるところがあるとうれしいな。

もちろんコロナ対策もしっかりしています。普段の稽古の時はもちろんですし、本番でもできる限りの対策をしているので、ぜひ観に来て欲しいです!

P
いい締めだね!(笑)ありがとうございました!!

【公演情報】

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劇団うつろろ
第4回公演「ブラックムーン」

【脚本・演出】
越智良知

【出演者】
シゲキマナミ
村上美緒
鹿島涼
佐藤和(劇団SUBUTA!)
知久貴大(劇団AIR)

【予約ページ】
公演予約:https://www.quartet-online.net/ticket/black_moon
配信(アーカイブ)予約:https://teket.jp/1169/4277
※配信期間:6月5日(土) ~ 7月1日(木)

【日程】
5/27(木) 19:30
5/28(金) 19:30
5/29(土) 14:00/18:00
5/30(日) 13:00/17:00
※受付開始・開場は開演の30分前

【チケット料金】
前売:2,800円
当日:3,000円
配信チケット:2,000円

【あらすじ】
田舎街、川沿いに建つ一軒家。川の向かいには次々に高いビルが建ち、空はどんどん小さくなっていく。この場所も再開発地域に指定され、不動産会社の営業マンが立ち退きの説得に訪れる。

どうやら立ち退きに応じていないのは、私たちだけらしい。幼なじみの洋平は、立ち退きで得られる、空に近い、あの部屋に住むのがなにより誇らしいようで、ご機嫌だ。

この家に彼女が暮らしはじめたのは、1年半くらい前。彼女は私より年下なのにしっかりしていて、とにかく頼りになる。節々に私は自分の至らなさを感じ、少し恥ずかしくなるくらいだ。

12年前、兄が彼女の兄を殺した。私を守って。出所後に消えた兄の帰りを、私は彼女と待ち続ける。今日の三日月は明日には消えてなくなっているだろう。影に覆われた世界に、いまもどこかで生きる兄は、なにを思うだろうか。

罪と償い、光と影。許されることのない人生の先に、人はなにを夢に見るのか。長い長い人生のなかの、何日間のお話。

【会場】
阿佐ヶ谷アートスペースプロット
http://artspace-plot.jp/

※公演については東京都のガイドラインを遵守し、感染症対策を徹底して行います。

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