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昔流行ったコンテンツを再び盛り上げるのは難しいんじゃないか

※タイトルの「難しい」は「無理」「不可能」を意味しません。

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昔流行ったコンテンツの「掘り返し」がブームである、と言われて久しい。
ここでの「昔流行った」とは、ひとまず現在三十代~四十代序盤の人たちが思春期に触れた九〇、ゼロ年代半ばくらいまで発のコンテンツを指すことにする。筆者がその世代だから。

そういう時に理由としてよく挙げられるのが、ユーザーが大人になって購買力があるから財布を狙われている、というやつだ。
しかし政治や社会の話だと「俺達の世代は非正規が多い/実質賃金が上がらないので金が無い/生きるので精一杯」という主張が多数を占めるのに、趣味のこととなると「俺たちには金がある」みたいなことを言い出すのがよく分からない。結局、金があるのかないのか。金がある人は結婚からの子育てコンボキメてて逆に趣味をやる金銭的時間的余裕なかったりするんじゃないか。
ナントカ総研とかが趣味嗜好に対する消費動向うんぬんでちゃんとしたデータ出してるんだろうなとは思うけど、それを噛み砕く読解力が私にない。

私らの世代は数が多いので非正規が多くとも総体として金を持ってる内に入る、結婚や子育て、老後への不安は残るものの独身貴族だから遊びに回すくらいの余裕はある、そうでなきゃやってられない、などといった理由から「趣味に回す金はある」としよう。

次に問題となるのは、昔ファンだった人たちにどうやって再始動を伝えるのか、という話だ。
原作がなんだかんだ続いてたり、周辺展開は時々あったりなかったり。コンテンツによって辿った筋道は異なるのだから、なんでもかんでも一緒くたに「今になって甦ってきた」と表現するのはよろしくない、という話は以前書いた。


とはいえ二十年間ずーっと何らかの展開が続いてて且つずーっと変わらない人気があって、という例は極めて稀だろう。
ならば新規以前に一度離れて以降は展開を追ってない人たちをどうやって呼び戻すのか、というのが課題になってくる。

「ブギーポップ」の2019年版アニメなんかも放送終了してからやってたのを知った、という声をいまだに耳にする。悲しいのはそういう人たちのbioやTLを辿ってみるとFGOやデレステをプレイしてたり最新のアニメを観てたり、オタカツ! をやめたわけではないということだ。
にも関わらず、アニメ化までしてそうした人たちに情報が行き届いていない。タコツボ化した業界における周知の難しさよ。

「公式」サイドの中心的人物がtwitterで広告塔になるというのは一つの手段だ。
「スレイヤーズ」は原作イラストレーターのあらいずみるい先生が日夜タイトルでエゴサして積極的にファンの発言を拾ったりすることでネットワークを拡げ、彼をフォローしていれば情報が瞬時に伝達される仕組みが完全に確立している。2019年現在の盛り上がりは、10年前のTVアニメ四期以上のものがあるように感じるが、それもあらいずみ先生の常日頃からの活動によるところは大きいと思う。
あとあらいずみ先生は同時代何かと絡みが多かった「オーフェン」の情報とかまでRTしてくれるので、「オーフェン」ユーザーは足を向けて寝られない。「オーフェン」の再アニメ化(以前のアニメの続きやリメイクではない)は2020年1月からですよろしくおねがいします。

一方で「十二国記」は新刊を出すに当たり、奇をてらう広報は行っていない。新潮社という大出版社の惜しみない広報活動と、長編新作が出ない間もファンタジー小説の新古典としての地位を踏み固めていったことにより、発売即大ヒット。「別格」感をまざまざと見せつけられた。

他にもジャンプ作品とかはやっぱり強いですよね。「アウターゾーン」とか、当時看板クラスでなかった漫画でもコアな読者を抱えてれば全然話題性あるし。

最後に、そうした情報を得たユーザーが実際にどれだけコンテンツに触れ、お金を落としてくれるのか。
twitterで懐かしいとトレンドに入ったからといってみんながユーザーになってくれるわけではない。「懐かしい」という反応には「原作全部読んだ」「アニメをちらっと観てた」「友達がハマってた」「スレイヤーズ? 懐かしいよね! 大好きだった! あれでしょ、CLAMPが原作で椎名へきるが主人公の……」といったグラデーションが存在しているからだ。
今この時に商品展開されること自体にマジ感謝して、本編やグッズの出来如何によらずお金を落とすという人も中にはいる。
しかしやっぱり基本的にはものの出来に左右されるといっていい。私だってそうする。ところが公式は事前に発売された新装版などでよほど手応えを掴んでなければ、恐る恐る予算を注ぎ込まざるをえないので、最盛期と比べると、う、うーんとならざるをえないものが出てきたりする。だから2クール3クールが取れるあの頃に原作準拠でやっておけと……(ゆってない

これまで書いてきたようなことは、製作サイドも当然理解しているだろう。
昔の人気作品は新しい作品をヒットさせるのに比べて鉄板? そんなわけがない。エンタメは水商売である。またWeb漫画・Web小説全盛で新しい才能が続々出てきてる昨今、「昔はよかった」派の人が言うほど昔のコンテンツに頼らなきゃいけないような状況とも思えない。
単に私たちの世代が「懐かしコンテンツ」の対象になってて今がそのピークでしばらくしたら落ち着くけど、以降も大ヒット作品は供給が続いてくのじゃないか。
それでも、願わくば私のずっと執着する作品が悲惨なことにならないように、少なくとも実現のために尽力し、いいものを作ってくれた人たちがいい目を見てくれますようにと、そう願ってやまない。

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