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角野隼斗「新しい音楽と出会えるきっかけになれたら」BBC Proms JAPAN Game & Cinema Prom


BBC Proms とは
英国で120年以上続くクラシック音楽祭
毎年夏、約2か月に及んで開催される

日本での開催は2019年が初
今回が2回目
日本版2022オフィシャル・ナビゲーターに小菅 優、小曽根 真、角野隼斗が就任


11/4 Prom 4 Game & Cinema Prom
会場:Bunkamuraオーチャードホール
出演:角野隼斗(ピアノ)
   NAOTO(ヴァイオリン)
   米田覚士(指揮)
   東京21世紀管弦楽団
(プログラム記載順)


雑談(読み飛ばし推奨)

予定外のコンサート参加
平日だし、回数的にも金銭的にも年内はもう厳しいだろうと、今回のチケットは取っていませんでした。
しかしです、ここで奇跡が! なんとダメモト(当たらないだろうけどもし当たったら大義名分で行ける、くらいの)でRTしたプレゼントキャンペーンに当選! チケットが届くまで、実はなりすまし詐欺だったんじゃと少しビクビクしながらでしたが、月末近くになって本当に届き、ホッとしたのと同時に嬉しさも湧いてきました。

オリジナルプリントの招待チケット。綺麗。

当日のJR線トラブル
上記の通り、金銭的に少しでも節約したかったので、行きは新幹線を使わずローカルで行くことにしました。帰りは時間的に新幹線以外の選択肢がないので、節約といっても3000円くらいなんですけどね。

駅に着くと、なんだか人が多い……観光が上向いてきたかな? とか思いつつも平日だしなぁ、と、ここでアナウンスが。
ローカルが車両トラブルで運休とのこと。
ホームには、停電した先発電車が乗客を乗せたまま待機していました。電車は屋根上のパンタグラフを上下させていて、電線に届くと車内の電気が一瞬だけつくのですが、どうやらパンタグラフがすぐ下がってしまうようでした。

時間的にはまだ余裕があったので、しばらく待つことにしましたが、だんだんと人も増え、駅員にずっと怒鳴りつけているオジサンがいたりで、稀にみるカオス。
1時間ほど待っていましたが、曇天で気温も低く寒くなってきたので、節約は諦めて新幹線に乗ることにしました。

と、ここでまた小さな奇跡が。一駅分だけですが新幹線での振替輸送が決定されたんです。私は面倒なことになって思考が弱っていたのか、一駅だけ新幹線を使うということが浮かばずにいたのですが、おかげで無事、渋谷に辿り着くことができました。

なかなかのレアなチケット

コンサート全体

ライティングについて
今回、ライティングもとても凝っていて素敵でした。
壁が白いので、淡い照明も映えて本当に綺麗。全部は覚えてないのですが、特にアニメ、ゲーム音楽の際にそれらを象徴するような画像を映し出し、「らしさ」を高めていました。かといって直接アニメチックな絵を貼り付けたわけではなく、ゲームを知らなくても綺麗だなと感じられる粋な演出にセンスの良さを感じ、クラシックコンサートとして聴けるような、観た人、聴いた人が自由に受け入れられるさりげなさでした。

アニメ映画、ゲーム音楽の演出方法
さりげなさは音楽的な面からも感じました。ゲームや映画音楽のコンサートというものは既に多くの公演機会がありますが、私の知る限り、大規模でガチオケであればあるほど、ゲームや映画「ありき」の性質が高めになるような気がしていました。バックに名シーンを流しながらというのが基本形としてあるんですよね。それはそれで本当に大好きなんですが、それはあくまでも原作コミコミの大好きなんです。今回、それがないことによって音楽だけのチカラを感じることができたのが大収穫だったと思います。そうだよ、これだよ、こういうゲーム音楽が聴きたかった! という喜び、誰か共感してください!

トークタイム
どのタイミングでだったか(休憩のあとかも?)、少し長めのMCが入り、ナビゲーターとして観に行った本場の感想や、企画意図などをお話してくれました。だいたいはプロモーション動画(下記)にあるようなものだったと思います。
その中で「誤解のないようにお伝えしたいこと」として「タイトルは「Game & Cinema」になっているけれど吉松さんや挾間さんの曲はゲームでも映画でもないんです」のようなことを話してました。
そして「新しい音楽と出会う場、きっかけになれたら」というようなことを熱意を込めて話していました。伝えたい気持ちが溢れたのか、このあたりはたどたどしく語尾が曖昧になっていて「日本語ヘタでしたね」と照れ笑いして会場の空気が柔らかく和む場面も。

「新しい音楽との出会い」
私が出会えた新しい音楽は
・メモ・フローラ
・Vector to the Heavens

この2曲でした。
というわけで、2曲だけ妙に感想が長いです。
感想が薄い曲もありますが、いずれの曲も本当にすごかったんです。単純に刺さるものの違いで、きっと2000人いて2000通りの「新しい音楽との出会い」があったのではないかなと思います。


プレリュード ファイナルファンタジー 植松伸夫

『FINAL FANTASY』(以下FF)は、世界各国でプレイされギネス記録も持っているゲームです。1987年から現在まで続くシリーズ中、私も10作目くらいまでハマってました。

このプレリュードという曲は、メインシリーズにほぼ共通のタイトル画面曲です。戦闘に敗れた(タイトル画面に戻る)ときにも流れたりするため、プレイヤーにとってはある意味で悪夢のような曲だったりもします(笑)

今回のオーケストラ版はハープの前に厳かな前奏がありました。コントラバスが大地の唸りのように低い声をあげ、続いてヴァイオリンの細かい刻み、鐘の音も聴こえ、そこからハープが聴きなれた旋律を奏でる……。丁寧なハーモニーの中から人のコーラスが聴こえてくるような感覚がありました。

フレーズが繰り返されるごとに音の厚みが増して、短い曲ながら壮大なオーケストラアレンジに気分が高まり、プレリュードでありながらコンサートの幕開けを告げるファンファーレでもある感じ。
※戦闘に勝った時に流れる『ファンファーレ』という曲もあります。

ちなみに今回のコンサートで唯一、ピアノが入っていなかった曲です。つまり次の曲から、かてぃんさんずっとステージにいました。

ライティングは青ベースの照明の中に、幾筋もの光の帯が走る画像が映されました。FFのイメージにぴったりで、例えばシリーズ7作目のライフストリームや、10作目の異界送りのようにも見えました。

リメイク版のオープニングムービーのサムネイルにも青白く光る魔晄炉が。きっとこういうイメージ。でもはじめに書いた通り、あからさまなものでなく、どう受け取るかは音楽を聴いた人のイマジネーションに委ねられていると感じました。

メモ・フローラ 吉松隆

この曲こそが、個人的ハイライトでした。帰ってから数日間、朝も夜もこの曲のことばかり考えてしまっていました。音源はあるけれど、あの日の演奏はあっという間に滲んできていて、でもその滲んで掴めない幻想感が妙に曲と合っていて余計に恋しくなるんです。
吉松×角野、美しすぎました。性別を持たない花の精に会ったような謎めいた夢心地で、うっとりふわふわしたままです。

吉松さんは以前からお名前は(大河の平清盛の人、くらいのざっくりした認識)知っていたという感じで、かてぃんさんが藤岡サッチーマエストロと共演するというときに繋がりで興味を持って、少し聴いたことがある、くらい。
そしてこの曲はピアニストの田部京子さんのために書かれた曲ということなのですが、田部さんと私にも何の接点もありません。
なので、思い出もない曲に、まさかこんなに感銘を受けることになるとは……という気持ちです。

もう何と言ったらいいか……水彩とちぎり絵と金彩で雅やかに描かれる花鳥風月が、入れ代わり立ち代わり、サンドアートとかCGみたいに刻々と変わっていくんです。和とも洋ともつかないような色彩とタッチで。
水鳥が魚を獲って水の波紋が広がったかと思ったら、波紋から枯山水の庭園がぱぁっと広がって、そうかと思うと今度は庭園に鞠が飛んで来て、鳥が囀って、高く蹴り上げられた鞠がほどけてはらはらと花びらになって風に乗って行く……景色がひとつのところに留まっていなくて、目まぐるしい。だけど忙しなくはない。あちらこちらへと心地よく翻弄されて、かてぃんさんに手を引かれながら万華鏡の中を走り回る、そんな時間でした。ええと、行ったことはないけど、チームラボ感あるかも。変拍子の魔法であることはひとつ明らかなのですが、変拍子なだけでこうはならないのではないかと。

直接関係ありませんが、チームラボ感、の参考として、かてぃんさんの好きなマックス・リヒターとヴィキングル・オラフソンの動画を置いておきます。

音楽を見ました。聴くじゃなく、見たという感覚。要はトランス状態ですね。私はもともと音楽から景色を浮かべるほうではあるのですが、こんなに音の中に連れていかれることは滅多にないんです。一度だけあったのは、ショパンコンクールの直前、浜離宮でかてぃんさんのショパンソナタを聴いたときでした。第三楽章の中間部で、美しい、だけど音のしない、百合が狂い咲く世界に引き込まれました。そこから真っ暗闇になって困惑しているうちに第四楽章、自分が袋に閉じ込められた蝿になったと思いました。音が止むまで音楽の中に閉じ込められて、かなり怖い思いをしました。

でもそれは、おそらく、私が『角野隼斗のショパンに強い思い入れを持って臨んだから』というのが結構大きかったと思うんです。でも今回は違います。かてぃんさんが弾いているから、これは確かにそうなのですが、それほど特別な思い出も思い入れもない曲でこんな音楽体験をしたのは、驚くべき奇跡のような出会いでした。

あと、少しこんなことも考えていました。

演奏が終わったあと、私からは見えなかったのですが客席にいらした吉松さんに拍手が送られる時間がありました。素晴らしい曲への敬意や感謝を込めて精一杯の拍手をしながら、この演奏をどう思っただろうかと、ぜひきいてみたいと思わずにはいられませんでした。
藤岡さんと三人で集まったりもしている間柄なので、何か記事などになるといいな、と。

そうしたら、以前から時々訪れている吉松さんのサイトに、さっそく当日のことが書かれていました。麒麟の風格ですって……。嬉しすぎませんか。

美しい弱音から、ジャズっぽいリズムの切れ、ロマンティックなメロディ、そして激しく熱いタッチまで見事にコントロールされた(どこか理系の)精緻なピアニズムが全開。選曲のセンスも含めて新しい時代のピアノそしてクラシックの世界を切り拓く麒麟の風格。

引用:隠響堂日記

12月に共演する原田慶太楼マエストロとのお話も。かてぃんさんをきっかけにして知ることとなった音楽家がどんどん増えていて、関連を調べていると知ったお顔がこうして出てくる、これがとても楽しいです。
足を運んで生で聴ける機会はまだまだ先になりそうですが、いつかいろいろな方の音楽を聴きに出掛けたい、というのも楽しみのひとつになりました。

おまけ(ラボで田部京子さんのお誕生日が拍子になってるって言っていたお話のつながりで)
かてぃんさんがラボで「僕はそれを……どういう気持ちで弾けばいいんだろうなと」って話してるところで何かを察して、藤岡マエストロの「ふざけんなよ」の意味がようやく分かったような気がしました。
田部さんのお誕生日で形作られた、蝶の水飲みみたいな第二楽章、優しくて優雅で甘くて、とろけそうでしたから……。コンマス大宮さんのVn.も素晴らしかったのです。


ピアノ協奏曲 第一番 より 第一楽章 挾間美帆

この曲についての記憶は、とにかくかっこよかった! もうそれに尽きます! いわゆる変態曲(褒めてる)と変態ピアニスト(褒めてる)の宴でした! かてぃんさん一番イキイキしてたかもしれません。
※音源が公開されていないようで、予備知識ゼロで聴いてきました。

アデスみたいな、バルトークとかの流れを汲むど変態な曲だったことだけは確かです。途中、ラプソのカデンツァで見せるみたいなソロがあったんだけど、あれはカデンツァだったのかな?(11/12のかてぃんラボでアドリブの場所があったと言ってました!)でも残念な頭のせいで曲を記憶に留めておくことができなかったので、聴けなかった方にお伝えできることが全然ないのが悔やまれます……。

代わりと言ってはなんですが、音楽ライター:小室敬幸さんのnoteに面白い記事がありました。なんと初演のリハ動画もあって、ちょっとだけですが曲を聴けますのでこちらで雰囲気感じてください!(吉松さんのブログにいらした原田さんがこっちにもいらして、この記事が隠れ原田Mo.を探せみたいになってる笑)

Dearly Beloved/Vector to the Heavens キングダム ハーツ 下村陽子

こちらも有名なゲーム『KINGDOM HEARTS』(以下KH)から。
KHはディズニーとスクウェア・エニックスのコラボ作品で、其々のキャラクターも登場するアクションRPG。現在までにシリーズ13作を世に送り出し続けて、なんと今年で20周年というロングコンテンツ。
そんな人気コンテンツでありながらも私は未プレイで、宇多田ヒカルが歌ってるとか、そんなことを思い出すくらいで、フォロワーさんが事前に作ってくれたプレイリストも聴けず(のだめのアーカイブのせい笑)挾間さんの曲と同じく予備知識ゼロでした。

FFやエヴァより圧倒的に予備知識ないまま聴きに行ったので、帰ってきてからできる範囲で調べてみた基本情報を先に書いておきます。
1曲目の『Dearly Beloved』はKHのタイトル画面で流れる曲だそう。そして2曲目は『Vector to the Heavens』シオンというキャラとの戦闘曲。

実は、この2曲は繋がっていて、コンサートでも雰囲気を保ったまま続けて演奏されていました。2曲目の中には『Dearly Beloved』のフレーズが入っていて、その場面でキーとなるキャラクターのテーマ曲のフレーズもちりばめられているとのこと。ゲーム音楽はテーマ曲を他の場面の曲に織り交ぜると伏線回収的なエモい効果があるので、割とこういう形式になっているものも多い気がします。

『Dearly Beloved』arr.和田薫
森の妖精みたいなピアノの主旋律が本当に綺麗で、澄み渡ってて、愛おしい音色でした。生の演奏は音源で聴くよりランドスケープ感が緻密かつ広大で、オーケストラと一緒にどんどん膨れ上がっていきました。
様々な鳥たちが囀るような管楽器隊と、風に揺れる木々や川のような弦楽器隊が壮大で、音量が大きくなるにつれて、動きのある鳥瞰で視野が広がっていく感じがしました。はじめは案内役の妖精がアップで映っていたのが引きの画面になって、森! 大地! みたいなカメラワークを感じました。

妖精が見えなくなって森になり大地になるっていうのは、要するに最大音量のところでピアノが聴こえなくなるってことなんですけど、曲の意図としてむしろ合ってると思いました。コントラストが曲のスケールをより大きく見せているというか。
以前かてぃんさんが「オケがクレッシェンドして自分の音なんか聴こえなくなるけどどうでもよくてすごいそれがいい(意訳)」みたいな感じで、オーケストラの迫力を興奮気味に話していたこともあったなぁと思い出したりもしました。(ラボだったと思います。いつの回だったか忘れてしまったので誰か教えてクダサイ)

そしてすごいなと思ったのはタイトル。帰って音源を確認したら『Dearly Beloved (Forest Memory)』ってなっているじゃないですか。Forest、森ですよ森。
曲を知らなくても、聴いたらちゃんと森ってわかるんです。音楽ってすごい、作曲家すごい。

『Vector to the Heavens』arr.宮野幸子
作曲家、編曲家のすごさは2曲目で更に発揮されていました。
戦闘曲と知らずに聴いても紛れもない戦闘曲で、かてぃんさんの低弦も勇ましくビリビリと鳴って、めっちゃくちゃカッコよかった!! 1曲目で森に紛れて見えなくなった妖精と違って、こっちの勇ましいピアノは大音量のオーケストラの中からもしっかり聴こえてきました。どんなに傷ついても自分の足で立ち続ける主人公の心臓の音みたいに。すごく苦しそうな、悲劇的な運命を感じさせる曲でした。

ゲームなので戦闘曲といったら基本は主人公と敵のバトルなわけなんですけど、曲から、敵は負ける覚悟で戦ってる、負けなければいけない、とはいえ手加減はできない、対する主人公は絶対に負けてはいけない、勝つことでしか敵を救えないみたいな、憎しみとは違う、別れとか、思い出とか、かつての友か恋人同士が闘わなくてはならない状況が見え、深い心の痛みを伴う様子を感じました。音楽を聴いているだけで感情移入して、かてぃんさんに討たれました。

帰宅してからこの曲について調べると、やっぱりそういうストーリーであったらしきことがわかり、すごい。第一言語が音楽! って思いました。音楽で全部語れる人なんですね。
※ストーリーについては長くなるので割愛します。ご興味ある方はキングダムハーツ、シオン、などで検索してみてください。ちなみにシオン(紫苑)の花言葉は「追憶」「君を忘れない」なんだとか……。

あとこれは超余談ですが、『Dearly Beloved』を後でゆっくり音源聴いていたら、主旋律の音のアップダウンが宇多田ヒカル節なんですよ、これは意図してなのか偶然か分かりませんが、「おー!」っとなりました笑。

主よ、人の望みよ歓びよ J・Sバッハ

この曲は、もちろんバッハの有名な曲なのですが、実は、この後に続くエヴァンゲリオンとセットになっている曲だったりもします。エヴァはリアルタイムで見ていたのですが、ちょっとツライ時期だったりもして、ちょっとしたトラウマ曲でもありました。今はそんなこと全く思わないで聴けるので、かてぃんさんが何度か弾いているのも、ただただ気持ちよく聴いていました。

会場でこれを聴いた人の中で、エヴァと関係あると知っていた人はどれくらいいたかな? と思ったりもします。プログラムにはバッハとだけしか書かれていませんでした。なので曲紹介の動画もエヴァと関係のない教会オルガンにしています。

そんな曲ですが、暗く照明を落とした中に、下のほうからスーッと青白い光の柱が立ち、それが十字架になるという演出がなされました。ピンスポの光源が満月みたいで、月と十字架、それだけでエヴァだよ、とエモさの極み。
ということでエヴァと深く関わりのある演出だと思うのですが、カンタータは教会音楽なので、その意味での十字架と捉えることもできます。
この、どっちにも受け取れる演出が本当にセンス高……。

Tour est Perplexe/THANATOS_E13_NAOTO エヴァンゲリオン 鷺巣詩郎

この2曲は『エヴァンゲリオン』より選ばれました。こちらはゲーム音楽ではなく、アニメ、またはアニメ映画、の音楽で、エヴァといえば90年代に社会現象ともいえるブームを起こした作品。ストーリーやテーマについては私も詳しくはないし長くなる(というか人の数だけ考察があるらしい)ので語るのはやめておきます。

バッハの曲に続けて『Tour est Perplexe』。YouTubeにある公式はYouTubeMusicなのでプレミア会員のみのため、Spotifyです。

音源を聴くだけでも充分すぎる素敵曲なのですが……大変な問題作でした。
前のアデスnoteで少し触れた、艶めかしい角野隼斗の一面がですね。オケのせいも大きいはずなんです、弦パートの妖艶さすごかったし。でもやっぱり角野隼斗のせいですよ、纏わりつくような、ものすごい粘質なピアノの音がしてました。

レクイエム的な耽美さとか、とにかく死の匂い、死に誘惑する香りがむせ返るほどで、さっきまで神聖にカンタータ歌ってたピアノと同じなのが信じられませんでした。
エヴァQは未修なので帰宅後に調べた限りなのですが、どうやら「カヲル君の死」のシーンで使われた曲とのこと。(エヴァは死ぬとか壮絶なシーンばっかりなのでこの曲に限ったことではないのですが)かてぃんさん×渚カヲル……オソロシイ破壊力でした。

今に始まったことじゃないけど、かてぃんさんのピアノは元が映像と音楽の場合、映像から視聴者が得るはずの成分を音楽に含めて弾くんですよね。
なので音楽だけの音源より濃度が増すということですね。
(しかもタイトル、フランス語ですね。ぜひ声に出して読んでほしいものです)

ちなみに編曲は挾間美帆さん。きっと死の誘惑に加担していますね。

そしてNAOTOさんが登場しての『THANATOS_E13_NAOTO』。こちらもSpotifyです。

Tour est Perplexeそのままの纏わりつく妖艶なピアノに、低く高く絡みつくNAOTOさんのヴァイオリン、オーケストラは弦だけ。
これ、アニメのほうでもNAOTOさんが演奏を担当していて、そのご縁での出演だったそうです。すごい。本物だ。
私はNAOTOさんをすごく狭く認識していて、ポップスぽいメロのヴァイオリンを弾くジャンルの人、だと思っていたんです。公演の前の週あたりには関ジャムで面白いこと言ってたり、なので彼のクラシックな演奏を目の当たりにして、かなりビビり散らかしました。

貼ってある音源は2010年とクレジットされてますが、これより全然上手いです。低い音の落ち着きも、細かいフレーズも、高音の透明感も、あと弦を返すときの音が特徴あって、ピチカート? 弦をはじく音もすごく響いて。
かてぃんさんがポップス方面するときとクラシックで音や弾き方がガラリと変わるのと同じで、ヴァイオリニストも変えられるんだなというのを見せつけられました。

後半の、忍びよる足音みたいなピアノのところのかてぃんさんも、激ヤバでした。大好きな、振動しまくる弦の音に大歓喜でした。

この時の照明が紫と黄緑の『初号機』カラーだったのもアツかったです。あれ、2曲ともだったかな? 曲との兼ね合いでいったらこの曲のほうだけじゃないかと思いますが、ゴメンナサイ曖昧です! 

ちなみにこの曲には歌詞もあって『THANATOS -IF I CAN'T BE YOURS-』というタイトルで発表されています。こっちもカッコイイ。

闘う者達/更に闘う者達 ファイナルファンタジー 植松伸夫

1曲目のプレリュード同じFFの曲です。最初と最後をFFで、って、かっこいい構成だなと思いました。

NAOTOさんとの妖艶なバトルのあと、こっちはガッチガチでバッチバチの漢のバトル。ピアノの弦がこれまた強靭に轟いて、オケはハチャトゥリアンの『剣の舞』みたいになってました。ゲームの原曲はロックテイストなのですが、剣の舞とか火星(惑星)とか、クラシック音楽のほうこそ戦闘音楽大得意ですよね。戦争は嫌だけど、クラシックの歴史は戦争と共にあるという一面も持ち合せていたりしますし。

はじめのほうスネアとか、何人かのパーティーメンバーが逃げ腰になってましたが、『にげる』コマンドは無効なので逃げられません! 食い気味の正確なリズムを叩き出す主人公かてぃんのリズム感と体力が化け物なんだと改めて気付かされたような気がしました。『更に』のほうになってオケもリズムが整って、本当に胸アツのバトルでした。かっこよかった!!!!!

かてぃんさんの音がコントラバスより唸ってて、若干ラスボス側だった気もするけど(笑)唸るピアノは私の大好物なので最高でした! ガードスコーピオン戦との境目のグリッサンドも冴えまくっていました。

この2曲には様々なバージョンが存在するのですが、かてぃんさんが動画を上げた動機が『リメイク版かっこよすぎたから』だったので、かてぃんさんのピアノ版や今回のオケアレンジ版に近めのこちらを貼っておきます。

作曲家の植松さんがプレステ初参入のFF7で「(使える音が増えるから)やっとロックができる!」とノリノリで作ったというロックなサウンドもお楽しみください! プレリュードと同じくバッハな香りもして、尚プログレ感あるなと思いませんか。プレリュードのフレーズにも似てて。KHで出てきた伏線回収のエモい手法に加えて、バッハ繋がり。音楽がジャンルを超える面白さがここにもあるんですね。

それから、編曲の石田公代さんがFacebookで、こんなコメントをされていました。

見た目はイマドキ、才能あふれて、お人柄も素晴らしい方でした。新しい音楽の扉を開いていく宝だと感じました

引用:コメント欄より

宝だったり麒麟だったり……大変なことに。(わかりますよ、素晴らしいとか凄いとかじゃ言い表せた気がしないんですよ、未来を感じずにいられないんですよね)

それにそれに。楽譜の画像がチラっとあるのですが、10.30差し替え版、10.31改訂、とあって、ギリギリまで妥協を許さない仕事熱が伝わります。客席の私たちに音楽が届くまでには、たくさんの人たちが携わっているのだというのが可視化されて、感謝の気持ちが一層大きくなりました。

『BBC Proms JAPAN 2022』Prom4「Game & Cinema...

Posted by Kimiyo Ishida on Tuesday, November 1, 2022

EN: ザナルカンドにて ファイナルファンタジー 植松伸夫

この日にアンコールがあるとしたら、コレしかないでしょうという選曲。

濃い青の照明の中、かてぃんさんだけを薄暗く照らすピンスポの光源が、ステージの左上で満月のように浮かんでいたのがとても印象的だったのを覚えています。

開幕とラストをFFで飾り、アンコールもFF。だけど、かてぃんさんのピアノはゲーム音楽をグイっとクラシック側に引き寄せている感じがしました。はじめのほうでも書きましたが、ゲームやアニメの音楽を、クラシックコンサートとして弾く、それを聴く。この感覚が、私にとっては本当に嬉しいことでした。

私はクラシック全然詳しくないし、10代はバンド追いかけてた人だけど、ピアノやオーケストラの楽器が一番チカラを発揮できるのはクラシックなんじゃないかとは小さい頃から変わらず思い続けているので、素晴らしい曲と演奏家たちがガチクラ編曲で向かってきてくれるというコンサートを経験できたのは、大変すぎる幸運だと思います。

最後に、貴重なインタビューなどBBC Promsのお話が盛りだくさんの動画を貼っておきます。

本当はもう少し見直して付け足したり削ったりしたいところですが、時間が経過すればするほど記憶も薄れるし、今日はもう別の公演があるので、感想の賞味期限的にこんな感じで一旦公開します。

いつにもましてのボリュームでしたが、最後まで読んでくださって、ありがとうございます!

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