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【ピティナ特級公式レポート・番外編『物語るピアニスト2』】

こんにちは、特級公式レポーターの寿すばるです。もうすぐセミファイナル!セミファイナルで演奏される『新曲課題曲』も発表され、いよいよという雰囲気がしてきましたね!

新曲課題曲については、分かりやすく読み応えのある記事を公式レポーターの『飯島帆風』さんが投稿しています。こちらも併せてお楽しみください♪

さて、先日は井上珠里亜さんの『「ランメルモールのルチア」の回想』をご紹介しましたが、今回も素敵な演奏と共に、『あまり知らなかった曲』かつ『映画や演劇のように物語が見える演奏』としてもうひとつの作品を見ていきたいと思います。

笠井 萌さん
シマノフスキ:「マスク」 Op.34 より「シェヘラザード」「道化のタントリス」「ドンファンのセレナード」

この作品は3曲からなる組曲になっていて、笠井さんは一次予選で1曲目の『シェヘラザード』を披露しました。曲の雰囲気も相まって、神秘の夜が香り立つような、上品で艶のある表現力に魅了されました!『マスク』が全部で3曲あるということを知り、二次予選の演奏予定曲目にある2曲が聴けることを楽しみにしていました。

さてこの組曲『マスク』。曲自体を知らなくても、3つのタイトルを見て関連のありそうな物語を思い浮かべた方はいるかもしれません。『シェヘラザード』は「千夜一夜物語」、『道化のタントリス』は「トリスタンとイゾルデ」などのトリスタン伝説、『ドンファンのセレナード』はプレイボーイの代名詞ともいえるドン・ファンの登場する数々の物語、といった具合ですね。私もそれらの物語を思い浮かべながら演奏を聴きました。

笠井さんの演奏は、他の曲でも各曲ごとに音色のパレットを使い分けていて、全く異なる演出がとても魅力的。この組曲の3つの曲も、どれも違う色調を用いているのがわかります。映画や演劇のように物語る演奏、と一口に言っても、笠井さんからは影絵師のようなアーティスティックでミステリアスな描写を感じ、シマノフスキの独特な曲世界へと誘われる深い没入感がありました。

二次予選当日の感想はこんな感じ。

穏やかに祈るようなバッハから、色彩溢れるショパン、翳りあるラフマニノフ、演じるようなシマノフスキ。なんて多彩!しかもシマノフスキは道化とドンファンでも違っているから尚すごい。

【ピティナ特級公式レポート・その4『二次予選1日目・後編』】
https://note.com/subano/n/n8befd555e48b#f018ab01-31a4-4ba0-be30-a60b3a093027

遅ればせながら、ここで備忘録を兼ねて作曲家シマノフスキを少しご紹介。

カロル・シマノフスキ(1882-1937)
ポーランド貴族の家庭に生まれ、交響曲やヴァイオリン協奏曲、ピアノソナタ、オペラなどを作曲した近代の作曲家で、ポーランドではショパンやパデレフスキと並び称され、生誕125周年を記念し貨幣にも採用された。(ポーランド国立銀行(Narodowy Bank Polski)参照
ピアニストのルービンシュタインとの親交が深く、同時代の作曲家はラヴェルやラフマニノフ、ストラヴィンスキー、バルトーク、プロコフィエフなど。

『マスク』が作曲されたのは1915年から16年のあたり、シマノフスキが33歳の頃です。私は大枠でいえば1900年代生まれなので、なんだ、自分が生まれる少し前じゃないか、という感覚にもなり、親近感も湧いてきました(笑)

俄然シマノフスキに興味が湧いたので、他の曲も聴いてみようとSpotifyへ。交響曲のアルバムを置いておきますのでぜひ聴いてみてください。管楽器や打楽器の大迫力とオペラ歌手のように歌うヴァイオリンの混ざり合いは、交響曲でありながら歌劇を彷彿とさせます。このスケールの大きさと緻密で豊かなオーケストレーションのセンスが、『マスク』各曲の物語を生み出しているのかもしれないと感じました。キャッチーといえるメロディーではないけれど絶妙に聴きやすいのすごい。

そしておまけ。シマノフスキが『マスク』作曲の約3年後から着手したオペラ『ロゲル王(またはロジェ王)』からの1曲がピティナのYouTubeチャンネルにあるのを見つけましたのでこちらもぜひ♪

なおシマノフスキは今年生誕140年だそうです。この記事を投稿しようとした今日、ショパンコンクールの覇者としても有名なクリスチャン・ツィメルマンが28年(!)研究をして音源を発表するという知らせも舞い込んできました。ツィメルマンもシマノフスキと同じポーランド出身者なので、特別な想いが込められていることと思います。

生誕140年という節目の機会に笠井さんの『マスク』からシマノフスキに興味を持てたことは私にとってとても幸運なことで、ぜひ皆さんもシマノフスキに触れてみてほしいなと思います。
笠井さん、本当に素敵な演奏をありがとうございます!

主な出典:ピティナ・ピアノ曲辞典
カロル・シマノフスキ(https://enc.piano.or.jp/persons/115
シマノフスキ:マスクOp.34(https://enc.piano.or.jp/musics/50


ここでは笠井さんの演奏に絞ってご紹介しましたが、まだ二次予選をご覧になっていない方は、ぜひ最初から聴いてみてくださいね。
きっと、素敵なピアニスト、素敵な曲に出会えると思います!

そして!
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では、次のレポートでお会いしましょう!
読んでくださり、ありがとうございました!
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※写真提供・画像利用許可済:ピティナ

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