中根すあまの脳みその47

眠たかった。
時刻は午前0時。普段ならいちにちの中でもっとも機嫌が良いくらいの時間帯だが、おかしなことに昨晩は、特別に眠たかったのだ。
寝てしまおうか。
悲しいかな私は首を振る。なぜなら、手をつけてない課題(×2、しかも締切は明日の正午)、まだ完璧とは言えない事務所ライブでやるネタ、その他絶対にやらねばならない諸々、がにたにたと笑顔でわたしを見つめていたからだ。
目をぐしぐしと擦り(本当は良くない)、私はパソコンの画面に集中する。
重力に逆らえず落ちてくる瞼、遠い昔のよくわからん絵画について書かれたパワーポイントの内容がまったく頭に入ってこない。

かっくん!!!!!

ああ、終わり終わり。船を漕いだらもう終わり。そこから復活したことなんて、未だかつて無いのだから。今、奇跡の復活を信じるのはあまりにもリスキーだ。
ここは潔く諦めよう。まだ0時だ。今から寝れば、早起きしたとしても十分な睡眠時間が確保出来る。寝よう、ああ寝よう。この猛烈な睡魔を持ってすれば、死体にだってなれる。
死体、死体。まあ、つまり、死んだように深い眠りにつけるという意味だ。

比喩の説明を自分ですると、とてもださくなることを覚えておこうと思う。

ともかく私は、光の速さで就寝準備をすませ、滑り込むように布団に入った。やっぱりふとんはいい。例え夏でも布団はやめられない。マクドナルドのポテトに匹敵するほどの危険な中毒性だ。ふわふわもふもふに包まれた私は、一瞬で眠りに落ち…

なかった。
先程までの、もう人生全てを投げ出したくなるような(それはかつて友人との命を懸けた約束を果たすために疾走したあの男も体験したような)、睡魔はどこへやら。頼んでもいないのに頭の中はぐるぐると働きはじめ、今晩の遅れを取り返すべく、明日のスケジュールを組みだしている。

7時 起床
そのまま情報の課題
8時 文芸A課題
9時 歯磨き、着替え、化粧
10時半 ネタ練習、
12時 SNS用の動画、写真撮る
1時半 授業聞きながらゼミの資料完成
2時半 ネタ練習
3時半 メイク直し、出発準備
3時45分 出発
電車 脳みそを書く

いかにしてこの任務たちを効率よく遂行するか。もし空き時間が出来たらなにをするか。
脳みそはひたすら活性化を続け、その影響でおめめはばっちばち。目を閉じている方が疲れてしまうくらいだ。
だったら起きて課題を再開すればいい?
考えてみてほしい。こんなにもおふとんLove♡な人間が、一度ガッツリふわふわもふもふに包まれておいて抜け出せると思うか。
答えは1+1より簡単、それは不可能だ。
ふ、か、の、う、だ。
そして私はこのあと数時間、この世で最も意味の無い、"空白"の時間を過ごすこととなる。
それは長い長い、虚無の世界だった。

そして時は無情にも過ぎてゆき、本日7時。
そこには、短すぎ、浅すぎの睡眠時間を経た、だるおも状態の私がいた。
悲しいかな私は首を振る。なぜなら、手をつけてない課題(×2、しかも締切は本日の正午)、まだ完璧とは言えない事務所ライブでやるネタ、その他絶対にやらねばならない諸々、がにたにたと笑顔でわたしを見つめていたからだ。

やるせなさが喉元をせり上がり、ため息となって排出される。
生きてゆくのは難しい。
人生とは悲劇だ。


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