中根すあまの脳みその148

Amazonプライムで『名探偵コナン』をみていた。2011年に放送された「世界一受けたい授業事件」である。なんとなく選んだのだが、小五郎のおっちゃんが日売テレビの看板番組である『世界一受けたい授業』に講師として出演するという、リアルとファンタジーが混じり合う、なんとも夢のある設定の回だった。堺正章やくりぃむしちゅーのふたりが本人役として登場するなど、制作側の意欲も感じられる。私も、どのように展開していくのか、期待しながらみていたのだが。

その日収録するのは、小五郎が担当する授業の他に、古美術鑑定士による授業、ポン菓子機会社の社長による授業の3つだった。

ポン菓子機会社の社長?
いや、ポン菓子機会社の、社長?
ポン菓子て。急にポン菓子て。
ポン菓子だけで尺持つんか、授業の。
世界一受けたいんか、その授業。

私はもう、話に集中ができない。
実際に放送されている番組を取り上げることによって生まれるリアル、そこへアニメのキャラクターたちが関わっていくことによって生まれるファンタジー。そんな、誰もが胸を高鳴らせる設定を、突如として加わったポン菓子という違和感がぶち壊す。リアルでもないし、ファンタジーでもない、ポン菓子はただひたすらに、違和感であった。もはや、違和感という概念は、ポン菓子という存在を分類するためにつくられたものなのかもしれない。そう思えてくるほどに、ポン菓子は強烈な印象を残した。
そこで、私の脳裏にひとつの懸念が生まれる。

ポン菓子が、事件の謎に大きく関わってきたら、どうしよう。

どうしよう。そんなことになってしまったら。私はもう、ポン菓子のことを忘れることなんてできない。今後、物語の中にポン菓子の存在が少しでも登場すれば、私はそれを鮮明に記憶するだろう。もし、それが事件の謎を解く重要な鍵だったら。私はなんのために2話分の時間をそこに費やしたのか、後悔することになるだろう。

いやまさか。
まさか、そんなはずはない。ツッコミどころこそ多いけれど、『名探偵コナン』は日本が誇る長寿アニメのひとつだ。ポン菓子ごときでそのような失敗はしないはず。

しかし。
ポン菓子がなんの手がかりにもならなかった場合、それはそれでちょっとどうかと思う。
わざと違和感を与えることによって強烈なインパクトを残し、事件の真相をミスリードさせるという魂胆か。もしそうだとしたら、なぜポン菓子なのか。長期間に渡って壮大なストーリー展開をみせるこのアニメだから、今後なにかのタイミングでポン菓子の存在が大きな爪痕を残すことになるのか。このポン菓子機会社の社長が安室さんのなんか、親戚とかなんか、わからんけど。

人生において、ここまでポン菓子に思いを馳せたのは初めてだった。ポン菓子がここまで人を惹きつける存在だったとは。恐るべし、ポン菓子。そんなことを考えているうちに、物語はもう、クライマックスである。
その証拠にもう、小五郎が眠っている。

ポン菓子がこの物語にどのような影響をもたらしたのか、はたまた、なにもなかったのか。その結果はぜひ、アニメをみてほしい。
ひとつ言えるのは、私はこの物語を作った人に少しばかりの意見を述べたい。ポン菓子は、人間の日常には馴染まない、ということを。

今のこの気持ち。
この気持ちは他の作品では味わえない。癖になるのだ。

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