中根すあまの脳みその249

嫌いな映画を止めなければと思っていた。
前にも観たことのあるそれは、とてつもなく恐ろしく、私の日常を著しく乱すものであると、夢の中の私は知っている。
気ばかりが急くが、なにかもやのようなものを掴むだけで、どうにもうまくいかない。
そうしているうちに、映画は始まった。
やはり、夢の中では自分の意志など無力だ。
力無く項垂れるうちに、映画はその空間を支配し、私はその中にいた。

巨大なカタツムリの化け物の、
長いにょろにょろの先についた離れたふたつの目が、しっかりと私を捉える。
私は逃げる。
ご存知の通り、カタツムリの進むスピードは遅いので、早く走る必要はない。
しかし、あまりの恐ろしさに自然と左右の足が忙しなく動く。
そう、現実ではありえないスピードで。
映画だ。
これは所詮映画。
それも、家のテレビから流れる、ちゃちな映画。
私は、あたかも、銃を構えるようにテレビのリモコンを握り、映画を止めようとする。
然し、空を切るようで何もかもが上手くいかない。
恐い恐い恐い恐い、全てが。
何が恐い?
カタツムリが?
そうではない。
私が恐いのは。

目覚めた私に、Google検索は語る。
巨大なカタツムリに追いかけられる夢、それすなわち凶夢。
きょうむ。
へえ。
おみくじみたいだ。
しかし、ただのまやかしだと決めつけるには、心当たりがありすぎた。
ちょうど、歯を食いしばり唇を噛む日々に、幸せを感じていた頃だった。

ラジオ代わりに聞く、ゲーム配信者の声。
ゲーム配信者などという突飛な存在で、私が知っているのは彼ひとりだ。
静まり返った部屋の中では上手く眠れなくて、垂れ流しにする彼の実況動画で扱っているのは流行りのホラーゲーム。
もちろん、内容など知らない。
ビビった彼が発したべりーらうどぼいすに、瞑った目を流石に開くと、画面のなかに映っていたのは、
今朝の凶夢の主人公、
巨大なカタツムリであった。

朝ごはんはなんだろう。
そんなもの、私にはない。
怯える心を宥めるように、心の中で無駄口を叩いて、ふたたび目を瞑っ た。

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