中根すあまの脳みその70



先日、友人と出かけた。
私はその日、緑のコートに赤のスカートという色と色をばっちばちに喧嘩させた出で立ちだったのだが、その友人は私とは真逆、水色とグレーのみの、色素という色素を抜ききったコーディネートだった。これはなかなか興味深い。
そもそも私はコーディネートにおいて、上と下の色合いが喧嘩しないか、とか、柄物はひとつにするとか、そういう「秩序」を神経質なくらいに重要視するタイプの人間であった。

今日は上が赤だから下は落ち着いた色じゃなきゃなー。
今日はチェック柄のズボンを履きたいから、上は無地にしよう。
靴や鞄やアウターはよく使うから、主張しすぎないようなものを選ぼう。

コーディネートをするときの固定概念が私を支配し、それを死守するのに必死だった。
考え考え服を着て、いざ外に出てみると、どうだろう、今日の私の格好はなんだか常識外れな気がしてならない。一度そんな気がしてしまうともう、一日中気になる。
こだわりは一丁前にある。こんな服が着たい!というビジョンは明確に存在する。
難しいのは、こだわりと常識を両立すること。そんな苦悩を抱えながら私は服を着ていたのだ。

しかし困ったことに、私は「色」が好きだった。
私が「色」に対して感じるときめきはもはや変態的なくらいで、自分の好きな色を目にすると、なんともいえない、たまらない気持ちになる。従って、色が鮮やかなものばかりほしくなってしまう。
ある日、それまでの私なら、洋服に合わせにくいからと言って手に入れるのを諦めたであろう、真っ赤なスニーカーが、定価の半額で売っていた。
なんとも鮮やかな赤。とんでもなく惹かれる。私は、安いからと自分に言い聞かせると、思い切ってそのスニーカーを買った。

赤いスニーカーと水色の靴下を合わせたとき、私の中の何かがぶっ壊れるのが分かった。彩度の高い水色と赤なんて、絶対に一緒にしてはならないと思っていたのに、その異常なほどの素敵さといったら…!
その瞬間から私の常識は完全に覆ってしまった。
赤ってなんでも合うじゃん!
緑も青も黄色も紫も、色と色ってなんでも合うじゃん!
今では、本気でそう考えている。本気でそう信じている。
好きな色を選んでいるだけなのに、派手で尖った人だと思われてしまうのは、また違う悩みなのだが。

そんな私にとって唯一のタブーが、同系色を合わせることだった。
緑色のシャツを着ているのに、緑色のリュックを背負ってきてしまったときなどは、一日中落ち着かない。そのため、同じような色調のものを合わせないようにだけ気をつけていた。
だが、私の友人は、かろうじて残っていた、たったひとつの固定概念までもをぶっ壊してきた。
全然ありじゃん!グレーにグレー、ありじゃん!

またひとつ私を取り巻くルールが消え失せてしまった。
生き方というのは本当にしょっちゅう更新される。
年老いた私のコーディネートを想像して、少しにやけている今日この頃である。


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