中根すあまの脳みその49

私は今、サラダ柄のショートパンツを履いている。
文字通り、サラダ柄のショートパンツ。いかにもみずみずしそうな輪切りのトマト、きれいな黄緑色のレタス、味はおいしいがデザイン性は低いクルトン、ぱっと見ただけで「サラダだ!」と分かってしまうような食材たちが、スペースの許す限り散りばめられたデザインのショートパンツ、そう、サラダ柄のショートパンツだ。中野にある雑貨屋さんでひとめぼれして買ったものだが、丈がものすごく短く、スーパーモデルではない私にはこれを履いて外に出ることはさすがに難易度が高すぎるので、私の夏の部屋着になっている代物だ。余談だが、これを購入したのは私が高校2年生の時。当時今より15キロは太っていた私には、家で履くことさえも躊躇してしまうような丈の短さだった。太ももの、見るだけで胸やけのしそうな脂肪が嫌でも目に入るのだ。それでも無理やり履いていたことから、私の愛情を感じてほしい。とにかくこの、サラダ柄のショートパンツには、どう見てもサイズに現実感がないにもかかわらず、思わず購入してしまうような“これだ!感”があったのだ。ビビッと来たってやつだ。
これは奇跡である。
まず、このふざけたサラダの柄を、「これはいいぞ!」と思いながらデザインした人がいて、それを「布にしてみよう!」と思い立った人がいて、さらに「ショートパンツ(それもとびっきりに短いやつ)にしたらいいんじゃない?」と提案した人がいて、その後完成したものを「これは売れる!」と仕入れた雑貨屋さんの店長さんがいて、そして最後に「これだ!」と運命を感じ、購入した私がいる。この極端に能天気なサラダ柄のショートパンツに、大きな愛を捧げた人が何人もいる。
そう考えると世界はすごい。私と同じような感性を持った誰かが、この世界にはたくさんいる。そのことになんだか心強さを感じる。それと同時に、同じ感性を持った誰かに出会うということがとても壮大なことのようにも思えてくる。
私が今まで出会ってきた人たちに、「このサラダ柄のショートパンツについてどう思いますか?」というアンケートをとったとして、「最高にいい!ビビッと来た!」と答える人が何人いるだろうか。
私が生きている世界は小さい。豆粒くらいだ。いや、米粒かもしれない。だから、その小さい世界の中で本物の“同志”を見つけることは至難の業だろう。
でも、宇宙は広い。サラダ柄のショートパンツに運命を感じる人々が、きっとぞろぞろいる。

一枚のおかしなズボンから、宇宙にまで話が飛躍してしまったが、深夜なのでそんなもんである。ちなみに私は、このサラダ柄のショートパンツにチーズ柄のTシャツを合わせるのが好きだ。もし、同じ格好をしている人がいたら、親友になろうと思う。

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