中根すあまの脳みその257


名古屋から東京に帰る。
たった2日間の雲隠れであった。
しかし、頭の中はつねに、向き合うべき課題に向き合えていないことへの罪悪感。
これでは、たとえ、車で片道5時間の場所に移動したとしてもきっと、隠れていない。
雲隠れられていない。

選んだ手段は高速バス。
一文無しに新幹線なぞ贅沢すぎる。
炎天下の中待つ名古屋駅の裏側。
汗をふきふき、やっとの思いで乗り込んだバスは大変快適なものだった。

まず、涼しい。
そして、隣の席との自分の席とを隔てる頼もしい仕切り。座席の頭の部分についている、顔を隠すためのひさしのような、画期的なフード(カノピーと呼ぶらしい)。全席に充電用のソケットがついている。
快適すぎるだろ。
なんだか、新幹線の半分の値段しか払っていないことに、申し訳なくなってくる。
私は安心して座席に身をあずけ安眠…
と、思いきや、そうはいかなかった。

静かすぎる。
女性専用座席である私の席の周りにはもちろん女性しかおらず、その上品な立ち振る舞いに私は緊張していた。
咳払いひとつで、誰かしらの安らかなバスの旅を邪魔してしまいそうな雰囲気に身が強ばる。
緊張すればするほど、なんか、咳が出る気がする、喉が痛い気がする、
叫び出したい気がする!!!!!!!!!!
社会不適合なその欲求に抗いながら、渋滞込みで7時間。

バスタ新宿。
見慣れた景色を眺める頃には私の心身は限界に達していた。
悔しい。
これからもこういった機会はある。
それなのに、こんなことで音をあげていてはいけないのに。

誰のせいでもない渋滞に、申し訳ありませんでしたと真摯に頭を下げる新人(っぽい)添乗員。
あなたのせいではないのですよ、という意味合いの笑みを向けながら、大きな荷物を抱え行く新宿の街並みは、
2日ぶりにしてはひどく懐かしく、湿っぽいものであった。

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