中根すあまの脳みその68
コンビニのおにぎりが好きだ。
てづくりのおにぎりももちろん好きだけれど(母のつくった「塩むすび」は一体なぜあんなにもおいしいのだろうか。正真正銘、米と塩だけであのおいしさはおかしい。もはやミステリーである)、それとはまた別の、特別なワクワクが、コンビニおにぎりには詰まっている。
私の祖父母は、愛知県と岐阜県に住んでいる。そのため長期休みになると、祖父母の家まで家族で長距離ドライブをすることが、中根家の恒例行事だった。
夜なのか朝なのか分からないような時間に起き、半分寝ぼけたまま車に乗り込む。しんとした、特別な空気と早朝のにおいが、幼い頃から大好きだ。本格的に出発する前に、まずは最寄りのコンビニに寄って、朝ご飯を調達する。これははずせない。徐々に明るくなっていく空を横目に、朝ご飯をほおばるのが、たまらないのだ。
幼い私にとって、コンビニのご飯とは、とんでもなくおいしく、とんでもなく罪深い存在だった。「こんなにおいしいのは何かがおかしい」と、コンビニのおにぎりやパン、お惣菜たちに、疑いの目を向けていた。おいしすぎてもはや怖いとすら思っていた。そんな私がすっかり虜になっていたのが、いくらおにぎりだった。
ぱりっぱりののりとごはんの時点で、まずおいしい。当時の私は、具が出てくる前の状態のおにぎりが好きで、具なんて一生出てこなくてもいいと思っていた節があったのだが、そんな愚かな考えは一瞬で捨て去ってしまう程に、いくらはおいしかった。たまらなかった。口の周りをぺたぺたにしながら、夢中で食べた。濃紺から薄水色に変わっていく空を見ながら、必死で食べたいくらおにぎりの味は、おそらく一生忘れないだろう。
1個食べきるだけで達成感を感じていた幼くてかわいい私も成長して、1個あたりおよそ5口、その気になれば3個でも4個でも食べられるようになってしまった現在の私は、JR東日本の駅構内にあるコンビニ、「NEWDAYS」のおにぎりにご執心である。
「NEWDAYS」のおにぎり考えている人、天才か?毎回、そのラインナップに感心せざるを得ない。海鮮系も、お肉系も、混ぜご飯系も呆れるくらいに充実していて、選ぶのが本当に辛い。どう頑張っても絞れなくて、2個のつもりで4個買ってしまうことなど日常茶飯事だ。
「え、なにそれおいしそう、食べたい」と思わせる才能がある。「NEWDAYS」のおにぎり開発担当の方はくいしんぼうセンスがずば抜けている。
まず、「手巻き海老醤油海苔 海老マヨおにぎり」。
なんと、海苔に味がついている。海老の香ばしい香りと、甘辛い醤油の風味が、海苔にしっかりとついているのだ。具に到達する前から、他のおにぎりとは一線を画している。そして、海老マヨもしっかりとうまい。少し甘めの味付けが、塩気のある海苔とよく合う。おにぎり一個でここまで満足できるとは。
次に、「手巻き黒胡椒海苔 塩だれ焼き鳥おにぎり」。
名前を見ただけで、もううまい。くいしんぼうのツボをよく心得たそのネーミングセンスに舌を巻く。そして、これも味付け海苔シリーズだ。「NEWDAYS」のおにぎりの強みはうまいものにうまいものをぶつけてくるストロングスタイル。私レベルのくいしんぼうは、簡単にノックアウトされてしまう。
そしてなんといっても、「鳥五目おこわおにぎり」。
私にとって、これは運命のおにぎりである。ある日何気なく食べたこのおにぎりの味が、どうにもこうにも忘れられない。ふとした時によぎるのはいつだって彼の存在だった。こんなに好きだったなんて知らなかった、鳥五目もおこわも。おなかがすいているから、とかではなく、純粋に彼を求めてしまう。危険な魅力の持ち主だ。
ああ、足りない。まだ語り足りない。
だけどこのままでは、糖質制限中にもかかわらず、帰りに「NEWDAYS」のおにぎりを爆買いしてしまうぞ。
夢と希望がこれでもかという程詰まったコンビニおにぎりの魅力、ぜひとも皆さんにも堪能していただきたい、ダイエット中の私の代わりに。
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