中根すあまの脳みその14

わたしは、「図々しい」が苦手だ。
人見知りではない、コミュ障でもない。だって人の目見てちゃんとしゃべれるもん。
友達はいる、でもその友達と親しいかと聞かれるとそうでもない。人に嫌われない、でも激しく好かれることもない。長年感じ続けていたこの違和感に、なぜだ?という疑問に、最近になってやっと答えが出た。
わたしには、「図々しさ」が皆無なのだ。

例えばライブで先輩芸人さんと話すとき、ある程度失礼なことを言ったり、うぬぼれたような発言をしてみたりしたほうがその場が盛り上がることはわかっているのだが、脳内のやたら硬派なわたしによる「おいすあま!先輩だぞ!失礼のないように!」がなによりも勝ってしまい、結局当たり障りのない言葉を選んでしまう。初対面の人と話すときなどもそうだ。人間(特に若いと)、少し失礼で危なっかしいくらいのほうがかわいがられやすかったりする。いじりがいがあり、話題性に富んだ人物として扱われるのだ。
相手に遠慮して、同意と賛辞の言葉しか口にしなかったら、きっとわたしという人間は「感じがいい」という印象だけの、超絶つまらなピープルになってしまう。
分かっている。分かっているのだ。でもその少しのことが、わたしにはすごく難しい。
なぜかって?
だいたいわたしは、一般的に「図々しい」と評される人間なんて嫌いなのだ。目上の人相手に最初からため口で話しかける奴とか、自分のことを棚に上げて急なディスりから会話をスタートさせる奴とか、いるじゃん。会話が盛り上がるか、相手に気に入られるかどうこうの前に、人間としてどうなのかと首をひねってしまう。わたしはそういう「図々しい」人間になりたくないと思いすぎるあまり、当たり障りのない話しかできなくなってしまったのだ。
これはわたしの悪い習性で、「こうはなりたくない」という気持ちが強すぎて、自分の行動や言動の幅を大いに狭めてしまっているのだ。
だが、本当はわかっている。芸人をやっていく中で、将来につながる人脈を広げていく中で、適度な「図々しさ」がとても大切だということを。

最近YouTubeの番組にレギュラーで出演させていただいている。わたしが事務所を通してもらった初めてのお仕事と言っても過言ではない、わたしにとって初めての試みだったのだが、初めての撮影ではかなり落ち込んだ。全くと言っていいほどしゃべれなかったからだ。
初対面の出演者さんに対してわたしは、同意の言葉しか発することができなかった。
見栄っ張りでプライドの高い自分が、超絶つまらなピープルを脱出して、いい感じに程よく「図々しい」人間になるには相当なリハビリが必要だろう。


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