中根すあまの脳みその262

信じられないほど大きなぬいぐるみを抱えたサラリーマンに頭を抱える。
愛おしさの許容量を超えているのだ。
ゲームセンターのUFOキャッチャーで手に入れただろうそれは、殺伐としたホームの中でぽわんとそれだけが浮かんでいるようだ。
あたかも、抱えているのが巨大なぬいぐるみではないような顔をして平然と進んでいくその足取りに、ほんの少しだけ、高鳴る心を滲ませて。
女房子どもに託すのか、それとも己が癒されるために抱きしめるのか、どちらにしても幸せの予感しか感じさせない。

類似の愛おしさとして、
ケーキやドーナツなどの甘い食べ物をぶら下げて歩く人が挙げられる。
それらを口に運ぶ時、人々には一定量以上の幸せが保証される。
コンビニのお弁当やファストフードでは得られない。
寿司やピザには、あるにはあるが、量で負ける。

甘いものとぬいぐるみ。
そのどちらも、同じような幸せの香りを纏っている。
柔らかい。優しい。特別。
そんな気配。
それを勝手に肺に取り込んでは、自身の歩く糧にするのだ。

己の身はそんな幸せが纏えているだろうか。
ふとすれ違った私が、歩けなくなった誰かの頬を緩ます、なにかの力になればいい。
思い描けど、今日もぐうたらな自分が嫌になったり。
そんな日々。

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