中根すあまの脳みその253

ひとつのプライドと言っていいだろう。
以前働いていた摩訶不思議な古着屋で手に入れた紫色のワンピースは、私にはサイズが小さい。いや、ぴったりすぎると言った方が良いかもしれない。あくまでも、着ることはできる。しかし、余裕がないのだ。
連なった、レトロなボタン。辛うじて留めることはできるのだが、どうにもこうにも無理やりだ。大きく息を吸うとパチンと微かな音を立てて、腹の最も膨らんだ部分に位置するボタンが外れる。
息をつくことも出来ない、スリルに溢れたワンピースなのだ。
それでも着続けるのは、
ボタンが外れる度に留め直し続けるのは、
きっとなにかのプライドなのだ。
太いベルトでそれを隠す。
ボタン自体も小さいため、人からはほぼ見えないだろう(よっぽど注視しない限り)。
それでもボタンはつけ直す。
外れる度に、馬鹿の一つ覚えのように、つけ直す。
その姿を見た人がひとこと。
もう、諦めれば?

諦めたく、ない!!!!!!!!!!
私はこのワンピースを諦めたくない。
諦めることで、何かが終わる。
そんな、気がする。
たかが小さなボタンでも、私の人生においてのにか大きな意味を持つ、そんな予感がしているのだ。

力強くそう語るうちに、またパチン。
ボタンが弾ける音がした。

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