中根すあまの脳みその165

幼い頃はよく、週末に市立博物館でプラネタリウムをみた。
そこではいつも、その季節に見られる星座の解説してくれるのだが、どれだけ懸命に形や方角を記憶しても、実際に夜空でそれがみられることはなかった。従って当時の私にとって、夜空に浮かぶ星座とはどこか作り話めいていて、例えば、旅行で山奥に行き、澄んだ夜空を見上げた時にかろうじてみられるような、日常生活とは引き離されたものであると、認識していた。
その感覚はついこの間まで継続されていたのだが。

数日前、夜10時頃、帰り道にふと空を見上げると、やたらギラギラしたものが、そこにはある。いや、星ってなあ、こんなに自己主張激しかったっけなあ。飛行機、ヘリコプター、はたまたUFO、考えられる選択肢がひととおり頭を巡ったあと、結局それは星だと、ひとり頷く。しかし、それにしてもなあ。納得のいかない気持ちで、視線を逸らすとそこには、ギラギラこそしていないが、しっかりと輪郭の感じられるいくつもの星が散らばっていた。いや、星空ってこんなに気軽に楽しめちゃうものだっけなあ。などと思いつつ、ちゃんと楽しむ。星空を。やがて私の目が捉えたのは、3つの星。等間隔に並んだ、星。
その形には見覚えがあった。
オリオン座だ。

私はたまげた。
あの頃、いくら目を凝らしても見つけられなかったオリオン座が、こんな、気の抜けた帰り道の私に見つかってしまうとは。
しかし私は、それの正しい形も方角も、はっきりとは覚えていない。それらしいだけで、本当はオリオン座に1ミリもかすっていない、名もなき星なのかもしれない。
しかし、私にはなんだか、絶対にオリオン座であるような気がしてしまった。君はオリオン座だよ、と思った。事実はこの際どうでもよかった。

私がよく乗る電車は、ある駅を出てからしばらく、あるいはその駅につく直前のしばらく、窓から地上の景色が全く見えず、空のみを映し出し続ける。
夜の時間帯で人が少なく、正面にだれも人が座っていない時などは、まるで電車が空を走っているような感覚を覚え、人知れずわくわくしてしまう。そんなわけはないのだが、そんなわけがないとも言いきれないのかもしれない。
そこにある星たちをオリオン座であると決めつけてしまうのと、案外、変わらないのかもしれない。
知らんけどな。

私にとって夜空は、ずっと胡散臭いし、ずっと素敵だ。

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