中根すあまの脳みその112

私は、傘をさしても雨に濡れる。

自分が人より傘の扱いが下手であると悟ったのはつい最近のことである。それは、午後から急に激しい雨が降り出したある日。ばしばしと叩きつけるように降る雨を電車の窓から確認し、リュックの中の錆びた安い折りたたみ傘では全く意味をなさないことを確信した私は、駅構内の300円均一店でビニール傘を買う。大抵の雨であれば、湿気と雨で髪の毛が崩れて嘆くことが分かっていても、そのまま浴びてしまう私が、わざわざ傘を買うほどの雨である。
駅から目的地まで、新品の傘をさして歩く。
迷うことなく髪の毛第一の私は、傘を若干前かがみにした状態で固定し、雨粒が風によって正面から攻撃してくるのをガードする。背中に少し冷たいものを感じたが、仕方がない。
髪型を守るためだ。髪型が崩れると私の持てる気力のすべてを失ってしまう。それは避けたい。しかし、思っていた以上に雨足は強く、大きな雫が傘の間をぬって突撃してくる。
もう、仕方がない。今日はこの後いろいろと上手くいかないだろうが、それもこれも雨のせいだ。仕方がない。

雨に負けを宣言した私が目的地につく頃には、なんだかもう、全体的よれよれである。
とはいってもこの大雨だし、みんな同じようなものだろう。なんとなくそう思いながら周りの人々の様子をうかがうと、なんということだろう、そこにいる人々はみな、雨など降っていなかったかのようにシャンとしているではないか。その中のひとりが私の全身をゆっくりと眺めてから言う。
「傘、もってなかったの?」
その時の私の絶望といったら、もう。
もってたよ!!!さしてたよ!!!ていうかわざわざ買ったよ新しいの!!!
ふわふわの巻き髪を揺らしながらその人は、
傘をさしていたらそんなに濡れないと、私を指さして、さんざん笑った。私の心は大洪水であった。

傘の扱いが下手ということが一体どういう事なのか、私には分からない。なにしろ、私だって普通に傘をさして歩いていたからだ。それも懸命に。傘を正しく使いこなすことができる日が、いつか私にもくるだろうか。
そんなことを考える、雨の降る今日である。

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