中根すあまの脳みその258

なにか、大規模なコンサートの演出のようだ。
西武新宿駅に沿って歩く道、おあつらえ向きにつくられたちょっとのひさしで雨を凌ぐ。
差している傘が、まるで意味をなさない。
道が途切れたとき、どしどし降り注ぐ雨はまるで壁のように、目の前に立ち塞がっていた。
ここを超える勇気など、ない。
幸いなことに、帰り道。
急いで進む必要はない。
私は観念して、静かに白旗を上げ、その場に留まることにした。

ついさっき別れた友人が、この豪雨の被害を受けなかったことを若干恨みつつもわたしはその雨に魅入る。
パチンコ屋の巨大なネオンの看板の赤の光が空に反射して、まるで終末の空だ。
雨から逃れようと逃げ惑う人々も含めて、異様な雰囲気が漂っている。
私は思わず、この場所で命を終えることに思いを馳せてしまう。
困る。
非常に。
せめて、もう一度、家族の顔が見たい。
そう願った瞬間、まるでビーム攻撃のように降りしきる雨が少し、その勢いを弱めたように感じた。
その隙を見て走りだす。
まるで、己が世界を救ったかのように、颯爽と。

阿呆みたいに平和な京王線のホームに立って、習慣のように眺める、”今”の羅列。
みな口を揃えて「ゲリラ豪雨」について言及している。
もっとまともな名前に変えてほしい。
どうにも間抜けでかなわないのだ。
「ゲリラ豪雨」に変わる、説得力のある名前を考えながら、特急列車を待った。

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