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『デート・ア・ライブ』概論⑥

1.はじめに

本稿は『デート・ア・ライブ』概論の第6回目となる。

今回は第5巻の『八舞テンペスト』について見ていく。

今回もネタバレを含む内容になるため、未読者は十分に注意されたい。

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2.『八舞テンペスト』あらすじ

主人公 五河士道の通う来禅高校は修学旅行で或美島(あるびとう)を訪れていた。

そこで二人の精霊 八舞耶具矢八舞夕弦に出会う。

二人は双子の精霊であり、いずれか一方しか生き残ることができないという過酷な運命を背負っていた。

生き残れなかったもう一方は、そのまま消滅してしまうという。

二人のどちらが生き残るべきかをかけた99戦にわたる勝負の結果は引き分け。

この100戦目で勝敗が決まるというときに、士道が現れ、最後の勝負は「どちらが先に士道をデレさせることができるか」という内容に決まった。

二人の猛烈なアプローチをなんとか切り抜ける士道だったが、二日後にはどちらがより魅力的であったかの最終判断を下すことを令音に約束させられてしまう。

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その最終局面、二人はそれぞれ士道を呼び出して、耶具矢は夕弦を、夕弦は耶具矢を選ぶように言う。

つまり、競っていながらも互いに互いのことを実は想っており、自分よりももう片方に生き残ってほしいという気持ちを双方が持っていたという事実に士道は愕然とする。

士道はどうするべきか分からず、十香にそのことを打ち明けて相談するが、その相談を偶然耶具矢と夕弦が耳にしてしまう。

互いに激高した二人は、天使を顕現させて決闘に入ってしまった。

勝負の内容は――「倒れた方が勝ち」。

一方裏で暗躍していたDEM社とその艦隊<アルバテル>が<ラタトスク>の艦隊である<フラクシナス>と交戦に入る。

地上では、DEM社の誇る最高のウィザード エレン・ミラ・メイザースと十香が交戦する。

十香は霊力を封印されている状態であり、窮地に陥るが、士道が十香の天使であるはずの<鏖殺公(サンダルフォン)>を顕現させ、反撃に出る。

<ラタトスク>の副司令である神無月恭平によって空中戦で<フラクシナス>が<アルバテル>に勝利をおさめたため、エレンは分が悪いと判断し、撤退した。

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士道は顕現させた<鏖殺公(サンダルフォン)>によって八舞姉妹の戦闘に割って入り、二人を同時に救う方法があると懸命に説得する。

二人と同時にキスをすることによって、士道は片方を消滅させずに二人とも救うことに成功した。

士道の活躍があった後、<ラタトスク>機関の議長であるウッドマンに呼び出された司令官の琴里。

士道がなぜ精霊の天使を顕現させることができたのか、第5巻は以下のセリフで幕を閉じる。

「今後もし、最悪の事態に陥ったなら、」

(琴里)「――士道は、私が殺します」。

3.第5巻における伏線

第5巻はDEM社の本格的な登場もあり、随所に物語の伏線が散りばめられている。

DEM社については本稿の6項を参照のこと。

その他、折紙が「もっと自分に力があれば――」と悔やむシーンや最後の琴里のセリフも今後の伏線である。

4.天使・霊装/識別名

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セフィロトの樹において、「舞姉妹」は八番目のセフィラである「ホド」を象徴する。

ホドは橙色のセフィラであり、髪色に反映されているとともに、水銀を象徴するため八舞姉妹の瞳の色は水銀色になっている。

神名は<エロヒム・ツァバオト>、守護天使は<ラファエル>である。

また、八舞姉妹の霊装は<神威霊装・八番(エロヒム・ツァバオト)>、天使は<颶風騎士(ラファエル)>である。

<颶風騎士>は二人に共通だが、さらに耶具矢は【穿つ者(エル・レエム)】、夕弦は【縛める者(エル・ナハシュ)】に細分化される。

<AST>による識別名は<ベルセルク>である。

<ベルセルク>は北欧神話に登場する狂戦士のことで、英語名のバーサーカーがよく知られている。

5.精霊について

たびたび登場するパラケルススによる四大精霊において、八舞姉妹は風の元素を象徴する。

別枠の狂三を除いて、ここまでで四大元素の精霊が出そろったことになる。

もともとは同一の存在であった八舞姉妹がなぜ双子として分裂しているのかについては第21-22巻で明かされる。

パラケルススの言うシルフ的なエレメンタルな精霊としての風と見なすことが可能だが、なぜ双子という設定になっているのかは要検討。

個人的解釈では、占星術において風と対応する黄道十二星座が双児宮(3番目のふたご座)であることに起因していると考える。

タロットカードおよび占星術の関係については今後で述べる。

6.DEM社

DEM社はデウス・エクス・マキナ・インダストリーが正式名称。

デウス・エクス・マキナは聞いたことがある人も多いだろうが、元来の意味は演劇における演出技法の一つで解決困難な事態に陥ったときに、絶対的で神的な力によって突如物語が解決に向かうことである。

現代風に言えば”夢落ち”や”ご都合主義”がこれに当たる。

現代でも夢落ちやご都合主義はあまり好ましくないとされるが、古代ギリシャ演劇においてもすでにこれは批判されており、アリストテレスはあくまでも緻密な因果関係のもとで物語を組み立てるべきだと主張している。

なぜDEM社がデウス・エクス・マキナの名前を冠するかについては不明。

おそらく物語の展開をひっくり返すような絶対的な権力を誇示していることを示したものだと思われる。

このDEM社の主要なメンバーとして、業務執行取締役のアイザック・ウェストコット、世界最強の魔術師(ウィザード)であるエレン・ミラ・メイザース、そして元はメンバーであったと後に判明する<ラタトスク>機関の議長エリオット・ウッドマンが挙げられる。

この三人はDEM社の創業メンバーとされているが、これにおいてもセフィロトの樹が関連している。

セフィロトの樹は、神秘主義思想であるカバラによって西洋魔術の礎としてさまざまな解釈がなされたが、その中でもとりわけ有名な集団に「黄金の夜明け団」がある。

「黄金の夜明け団」は、イギリスで結社された西洋魔術の研究組織で、セフィロトの樹をタロットカードと結びつける研究などで有名である。

その創設者がウッドマン、ウェストコット、メイザースの3人ということになっている。

▼マグレガー・メイザース

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この3人はフリーメイソンであったことでも有名だが、DEM社の着想はここから得たものであると推測できる。

7.まとめ

今回は第5巻『八舞テンペスト』について見た。

敵対しているように見えた二人だったが、実は互いに互いを想い合っていたという展開は面白い。

八舞姉妹もかなり魅力的なキャラクターである。

今回はDEM社についての詳細を見たが、DEM社は今後のストーリーにも深く関わってくる組織である。

→第6巻へ続く

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