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『デート・ア・ライブ』概論③
1.はじめに
本稿は『デート・ア・ライブ』概論の第三回目になる。
今回は第二巻の『四糸乃パペット』について見ていく。
今回も一部ネタバレを含む内容になっているため、未読者は十分に注意されたい。
2.『四糸乃パペット』あらすじ
主人公 五河士道は学校からの帰り道の第二の精霊 四糸乃と出会う。
四糸乃は降りしきる雨のなか、ひどく怯えた様子で士道を拒絶する。
四糸乃の左手には「よしのん」と呼ばれているうさぎ型のパペットがついていた。
「よしのん」は四糸乃とは対照的におしゃべりで陽気な性格で、四糸乃が操っているようであった。
四糸乃はパペットである「よしのん」が左手から外れてしまうと、途端にもとの臆病な性格に戻ってしまう。
四糸乃に拒絶されたあと、士道は再び彼女と出会うが、その左手には「よしのん」がついておらず、四糸乃によると前回に現世に引き込まれたときになくしてしまったらしい。
士道はパペット探しを手伝い、クラスメイトの鳶一折紙の家にそれがあることを突き止めた。
鳶一家で士道はなぜ彼女が対精霊殲滅組織である<AST>に所属しているのかを聞く。
空間震警報の鳴るなか、「よしのん」をなんとか奪取した士道はパペットを四糸乃のもとに届けるため、再び彼女と相対する。
四糸乃の激しい抵抗に遭うものの士道は全身傷だらけで「よしのん」を四糸乃のもとへと届けたことで四糸乃は士道に心を開き、最後は霊力封印に成功する。
3.第2巻における伏線
・<ラタトスク>解析官である村雨令音が何度も士道のことを「シン」と呼ぶ→第18-19巻
・鳶一折紙が<AST>に所属することになった過去→第10巻
・四糸乃の氷の刃を受けても傷が勝手に治癒した→第4巻
・<AST>に新たな隊員、崇宮真那が着任→第3巻
4.「精霊」について
前回に触れた「精霊」の定義について、四糸乃は非常に顕著である。
四糸乃が登場するシーンは必ず雨が降っていることに加えて氷の攻撃を行う描写から、四糸乃は「精霊=エレメンタル」の存在で捉えるべきキャラクターである。
パラケルスス『妖精の書』による四大元素は「火・水・風・地」の4類型であった。
パラケルススによれば、四大精霊とは、これら四大元素に住まう目に見えない自然の生き物あるいはエーテルのみで構成された身体を有する擬似的な自然霊である。
エーテルとはプラトンのイデア界に象徴される現世には存在しない、四大元素を超克した汚れのない不滅のエレメントのことである。
ここでは、四糸乃は(当然ではあるが)目に見える姿として描写されるためパラケルススのいう「精霊」の定義のうちの後者を援用するべきであろう。
ただし、自然霊とは幽霊でも人間でもなくそのどちらにも似た中間的な存在とされる。
『デート・ア・ライブ』においては精霊はもともと人間であったと最終巻あたりで語られるが、それはセフィラが影響していると考えられる。(この点はその巻で詳述する)
四大元素はそれぞれ「火=サラマンダー」「水=ニンフ/ウンディーネ」「風=シルフ」「地=グノーム」の姿に代表される。
5.水=ウンディーネ
四糸乃は水あるいは氷を明らかに操っており、その意味でエレメンタルとしての精霊とみるとウンディーネ的である。
語源はラテン語のUnda(波)に女性形の形容詞語尾-ineがついたもので、基本的に女性の姿で描かれる。
『妖精の書』によれば、基本的に形は人間とほぼ同じであるが、魂がなく人間の愛を得てようやく人間と同じく不滅の魂を得るとされる。
これを『デート・ア・ライブ』の四糸乃に適応すると、彼女の左手にパペットが装着されていることの意味が分かるであろう。
ウンディーネ的なものには基本「魂」が欠けているため四糸乃ひとりでは情緒は不安定になる。
この論理は「よしのん」にも同じく人形(=パペット)という魂のない存在として投影することができる。
陽気と臆病の両極端に性格が振り切れているのは魂がないゆえの不安定さを表象しているともいえる。
また、人間の愛を得ると不滅の魂を得るという点も『四糸乃パペット』のプロットと親和性が高い。
最後に士道とキスするシーンによって「人間の愛を得た」と解釈できる。
6.天使・霊装/識別名
「四糸乃」はセフィロトの樹の4番目に相当する。
4番目のセフィラは「ケセド(慈悲)」であり、これは<AST>からの攻撃を受けつつも決して反撃しなかった四糸乃の性格を如実に反映している。
また、「ケセド」の色は青であり、こちらは髪色に反映されている。
神名は<エル>、守護天使は<ザドキエル>である。
四糸乃の霊装は<神威霊装・四番(エル)>、天使は<氷結傀儡(ザドキエル)>となっている。
<AST>による識別名は<ハーミット>である。
これは隠れてばかりいる様子から「隠者」を表すことばであるが、同時にタロットカード(大アルカナ)の9番目のカード名でもある。
タロットカードでは、隠者は逆位置で「悲観的で陰気」といった意味を持ち、こちらも四糸乃の性格を表している。
また、タロットカードの「隠者」のイラストはフード付きローブを目深にかぶった老人の姿で描かれるが、四糸乃の服装もまたそうである。
7.まとめ
第二巻では精霊「四糸乃」が新たに登場する。
エレメンタルとしての精霊やセフィロトの樹、タロットカードなどさまざまなアレゴリーのあるキャラクターである。
→第3巻へ続く
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