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「過去未来報知社」第1話・第48回

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>>第47回
(はじめから読む)<<第1回
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 ぶるっと寒気がして、アカシは身を震わせた。
「どうしたの、アカシ。風邪?」
 横で記事チェックをしていたマネージャーが顔を上げる。
「やめてよ~。大事な時期に。
 病気とかなったら、洒落すまないスケジュールだからね」
「そういうとこ、調整するのがマネージャーの仕事じゃないのかよ」
「スケジュールに体調を合わせるのが、タレントのお仕事でしょ」
 すぐに記事チェックに戻ったマネージャーに、アカシは首をすくめた。
 マスクにネックウォーマーに、厚手の生地のカーディガン。
 これで外を歩く時にはもこもこダウンに帽子にサングラス。
 極め付けにマスクで、これじゃあ素顔より目立つよ、とは
 他のメンバーにからかい半分に言われた言葉。
 そのメンバーとも、月に数回しか会っていないという状況だ。
 いったい今、自分が何の仕事で移動しているのかもわからない。
 そんな日常がいったいいつから続いているのだろう。
 笑って、答えて、演技して。歌って、踊って、寝ながら移動。
 最初の頃こそ充実感を持っていたが、今はどうか。
 あれから、いったいどれぐらいが経ったのか。
 時間の流れすら、よく分からなくなっている。
「やだなぁ、この間のぶらり旅、あれが良くなかったんじゃないの」
 鼻をすするアカシに、マネージャーは眉をしかめる。
「映画の仕事も入ってくるようになってきたし、
 そろそろ、下ろしてもらう?」
「……いや、いいよ。折角続いているんだから」
 こうやって、すぐに小さめの仕事から切ろうとする。
 決してアカシの体調を考えてのことではなく、
 自分の面倒ごとを減らしたいだけだ、とアカシは確信している。
「あの町さ、妙に寒かったって話じゃない。
 風通しがいいっていうか。そんなに北の町でもないのにねぇ。
 田舎だからかねぇ」
「そんな田舎じゃないよ。 
 電車でちょっと行けば、シネコンとかあるでかい街に出るし」
「そういう、狭間の町っていうのが、一番はやんないんだってば。
 中途半端に人が集まってさ」
「そういうもんかね」
「変なスポット、あいちゃうんじゃないの。
 だってさ、今頃ゴーグル地図アプリで写真撮影されてないなんて
 超田舎の証拠だってば」
「……撮影されないって言えば、この間撮った映像。
 一部が使えなかったって言ってたな」
「ああ、なんか古くさいアパートの映像ね。
 田中ちゃんが興奮して言ってたけど、単なるミス隠しじゃないの。
 それをさ、心霊現象とか言われてもね」
「心霊現象、か」
 丘の上に佇む、古い建物を思い出すアカシ。
 まるで時の流れが止まったような空気を感じ、
 一瞬失った「時間」を取り戻したような感覚があった。
 そして……。
「あの人の目……」
 確か役場の人間だといっていた女性。
 あのどこか遠くを見ているような目が、アカシは印象に残っていた。
「あーあ、これからあそこで映画の撮影するの、いやになっちゃうなぁ」
「え、映画ってあそこだっけ」
「そうだよ、ちゃんと覚えておいてよ」
「あそこか……」
 マネージャーに生返事を返しながら、
 アカシはどこかワクワクした気持ちが心の底に沸いて来るのを感じていた。

>>第49回
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「過去未来報知社」第1話・第48回

涼廣

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