「過去未来報知社」第1話・第34回
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そこにあったのは、巨大なクリスマスツリー……いや、
盛大に飾り付けられた門松(?)だった。
キラキラと輝いているのは、よく見れば紙垂(しで)で、
枝の先にやたらとひっかかっているのは、
さっきまでサンタが投げまくっていた餅。
とんでもなく高い木の頂上で燦然と光っているのは……、
「神社でガラガラ鳴ってる、あのでっかい鈴じゃないですかー!」
「正確には本坪鈴と言います」
指差して叫ぶ笑美の横で、根津がけろっとした顔で言う。
「何を平然と……って、わっ!」
見下ろし、笑美はぎょっとする。
何か白い、もこもこしたものがうごめいている。
「……雪だるま?」
「僕です! 根津ですよ!」
白いボアの帽子を跳ね上げ、根津は眦を吊り上げた。
「根津さん……?」
しげしげと見る笑美。ボアの帽子に、ダウンジャケットに、スキーパンツ。
全部が白くもこもことしている。
「いくらなんでも、着すぎだろう」
「僕の一族は寒さに弱いんですよ!」
「あたしもそうだよ~」
「ぎゃっ!」
「うわっ! 三宅さん、戻ってきたんですか!」
根津を歯がいじめにして顔を擦り付けている三宅も、ニット製品に包まれている。
「そんな寒いなら、出てこなきゃいいのに……」
呆れてつぶやく笑美に、三宅と根津は口を尖らせる。
「だって、これを見なくちゃ年は越せないよ」
「これ?」
シャラン、と涼やかな音が丘に響く。
賑やかだった丘が、静寂に包まれた。
笑美と慶太が音のほうを見上げると、そこには……。
「大家さん?」
神主のような衣装に身を包んだ大家が、玉串に似た枝を持って立っている。
「今年は大家さんの当番なんだよね」
「当番?」
「昔から六合の街にいる一族の代表が、順番で一年の納めをするんだよ」
「……普通そういうの、大晦日にやるのでは?」
「うーん、クリスマスと大晦日と期日が近いから、
一緒にやっちゃうことにしたんじゃないの?」
「そんな、いい加減な……」
「しっ! 祝詞が始りますよ!」
大家が荘厳な雰囲気で(しかし嫌そうに)玉串を降り始める。
笑美は固唾を呑んでその姿を見守った。
>>第35回
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