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「過去未来報知社」第1話・第14回

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 昼なお暗い六合荘。
 三宅と笑美に案内され、笑美は六合荘の大家の部屋の前に立っていた。
「……なんで、南向きの廊下なのに、こんなに暗いんですか」
「それが、あたしたちにも不思議なのよ」
「きっと時空が歪んでいるんですよ」
「……それになんで、お二人とも私の後ろに隠れているんですか」
 笑美の背後の両側から顔を除かせ、三宅と根津は頭を掻く。
「いやぁ、大家さんの部屋に来たのって、初めてなもんだから」
「畏れ多いというか、何か起きたら嫌だな、というか」
「どんな大家なのよ」
「だから、ネコさんなんですよ」
「そうよね、ネコさんよ」
「だから、そのネコさんはどこに行っちゃったんですか」
『それは、こっちも知りたい』
 三宅と根津は声を合わせた。
「いなくなってから、随分経ちますよね」
「ネコさんいないと、あたしたちの食事、どうなっちゃうのよ」
 ちらり、と根津を見る三宅。根津は縮み上がり笑美の後に隠れる。
「そうですよ。死活問題です!」
「……ここ、アパートですよね。下宿じゃないですよね」
「大家さんのご飯のついでに、あたしたちにも作ってくれるのよ」
「女神様です」
 根津が空中を拝む。
「大家とのこの評価の違い……。
 とりあえず、大家の入江さんはこの部屋にいるんですね」
「滅多に部屋から出ること、ないから」
「きっと、この部屋に憑りついているんですよ」
「馬鹿なこと言わないで下さい。
 ちゃんと役場に登録されている市民なんですから!」
「市民登録されてたって、普通の人とは限らないよ~」
「そうそう、役場の登録なんて、いい加減なもんだから」
「あの、私、その役場の人間なんですが」
「そろそろ、いいか」
 ずっとドアに手をかけて待っていた男が声をかける。
 三宅と根津、さっと隠れる。
「大家さんにネコさんのことを聞いてね」
「それから、はじめまして店子の根津です、よろしくって言って下さい」
「自分で言ってよ……」
 笑美が目配せすると、男はドアノブをまわした。

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