「過去未来報知社」第1話・第13回
<<第12回
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「えーと、あなたが根津さんで……」
笑美は男・根津を見ながら確認する。
「あなたが三宅さん、お二人はここ、六合荘の店子さん、なんですね」
「そうそう」
根津と三宅はこくこく、と頷いた。
「私は~、タウン誌の記者やってんの」
三宅は胸を張ってキャップを押し上げた。
「六合町のことで知りたいことがあったら、あたしに聞きなよ、新人さん」
「で、僕は風土記研究をしています」
ツン、と上を向く根津氏、眼鏡がずれるのを慌てて直す。
「よく外出していますので、六合荘にいる事は稀です」
「もっと一緒にいたいのに~」
指を咥える三宅に、根津はこそこそと男の後に隠れる。
「六合荘ルールその2! 店子同士の恋愛はご法度!」
「アイドルグループじゃあるまいし~」
「文句があるなら、大家さんとネコさんに言って下さいよ」
「ネコさんに意見なんて、言えるわけないじゃん」
「ネコさん?」
首を傾げる笑美に根津が答える。
「峯子さん、というのが本名なんですが、誰もその名前では呼んでいませんね」
「大家さん……は男性か。奥さんですか?」
根津と三宅、顔を見合わせる。
「どうなんだろう」
「誰か知ってる?」
「え、ちょっと、ちょっと……」
焦る笑美に二人は声を合わせる。
「まあ、六合荘に用があるなら、ネコさんに会わないと」
「ネコさんが全部取り仕切ってるからね」
「あの……大家さんは……」
「あたし、店子になる時に一回会ったきり」
「僕はまだお会いしたことがありませんね」
「……もしかして、大家の音信不通って普通の状態なんじゃないの?」
笑美は資料写真をにらみ付けた。
もっともそこには、持ち上げた猫で顔を隠した男の写真しか写っていないのだが。
>>第14回
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